【インタビュー】「連続ドラマW そして、生きる」有村架純 過酷な現場で女優人生初の弱音を吐露…、坂口健太郎も未知の体験を

2019年8月5日 / 18:30

 連続テレビ小説「ひよっこ」をはじめとする人間ドラマの名手・岡田惠和が紡ぐ究極のオリジナルヒューマンラブストーリー「連続ドラマW そして、生きる」で主演を務める有村架純と坂口健太郎。「恩師」と仰ぐ岡田と5度目のタッグとなる有村だが、その撮影は過酷を極め、女優人生で初めて弱音を吐露。坂口も未知の体験をしたという。そんな現場での様子や、本作に懸ける思いなどを聞いた。2011年に起きた東日本大震災のボランティアメンバーとして、東北の被災地で出会った瞳子と清隆。過酷な運命のもとで強く美しく生きる2人の姿を、周囲の人々の人生も交えて感動的に描いた本作は、大ヒット映画『君の膵臓をたべたい』(17)などの月川翔が監督を務める。

有村架純(ヘアメイク:尾曲いずみ、スタイリスト:瀬川結美子)と坂口健太郎(ヘアメイク:廣瀬瑠美、スタイリング:檜垣健太郎(little friends))

-“ゴールデンコンビ”とも呼べる岡田さんと有村さんですが、今回、岡田さんが脚本を担当すると知ったときの率直な感想は?

有村 3月に放送された「ひよっこ2」の撮影が昨年12月だったので、こんなに短い間にまたご一緒できるのは特別だなと感じました。岡田さんは、このドラマを「命を込めて描いた渾身(こんしん)作」とおっしゃっていたので、その“ただ事ではない”思いに応えたいし、前作を超えるものを岡田さんにお返ししなければいけないという気持ちで臨みました。

-岡田さんは有村さんのことを「同志」とおっしゃっていますが、有村さんにとって岡田さんの存在とは?

有村 「はい、同志です」なんて言えません(笑)。映画デビュー作の『阪急電車 片道15分の奇跡』(11)でご一緒させていただいてからずっと見守ってくださり、「ひよっこ」では1年間一緒に戦わせていただき、いつも自分を超えなければいけない作品をプレゼントしてくださる方です。一言では言えませんが「恩師」のような存在です。

-「ひよっこ」の谷田部みね子役は当て書きでしたが、今回はいかがでしたか。瞳子の心優しく明るい性格や、女優を夢見て奮闘する姿は有村さんと重なりましたが…。

有村 みね子を演じているときは「これは私のことを言っているな」と思うことはありましたが、瞳子にはあまりなかったです。私をイメージしたというより、「次のあなたを見せてくださいね」と言われている感じがしました。

-一歩前に進んだ自分を見せられましたか。

有村 そうですね。瞳子はこれまで演じたことのない女性で、男前な性格で、どんな状況下でも客観的な判断を潔くできる人です。自分だったら選べないような苦肉の選択もできるところは尊敬できます。そんな自分とは全く違う瞳子を生きた実感があり、それが達成感につながったので、そういう意味では成長したと言ってもいいのかなと思います。

-坂口さんは岡田さんとは初めてですよね。穏やかなほほ笑みの裏につらい過去を秘めた清隆役ですが、演じてみていかがでしたか。

坂口 清隆は自分の生理に合っているので、脚本を読んでいても、彼の言動や感情は心にスッと落ちてきました。悲しみや弱さを糧に生きていますが、世の中に完全無欠な人間はいないので、弱くてもいい、情けなくてもいい、痛みを理解したい、と彼に寄り添う気持ちで演じました。

-実は、清隆役は坂口さんがオファーを受ける前から、岡田さんが当て書きで作り上げた役だそうです。

坂口 そうなんですか!? 知らなかったです。もちろん清隆と僕はまったく違う人物ですが、確かに彼の感情はとても理解できたし、愛しい存在でした。

-月川監督からは「何回も繰り返せる芝居ではなく、二度とできない本気の生の芝居」を求められ、テストなしの本番もあったそうですが、現場の様子はいかがでしたか。

坂口 自分の中から湧き出るものや、相手の言動に敏感に反応して、現場で生まれるものを大事にしようと心掛けました。テストを何度もやって固めるより、自由に、その瞬間にしかできないものを表現していたので、今、同じシーンの再現を求められてもできません。

有村 瞳子を生きるには自分のキャパを超えなければいけませんでした。テストなしで本番にいかせてもらった感情的になるシーンがあるのですが、監督から「もう一回」と言われたときには、初めて現場で「もうできないかもしれない…」って言っちゃいました。もちろん最後までやりましたが、まさか自分の口からそんな言葉が出るとは思いませんでした。普通は思っていても口に出さないですよね(笑)。女優人生で初めての体験でした。

坂口 僕も初めてのことでいえば、フィリピンロケの最中、感情が止まらなくなった自分に驚いたことがありました。悲しいシーンとはいえ、泣きの演技が要求されてはいなかったのに涙があふれてきて、カットの声が掛かっても20分ぐらいは涙が止まりませんでした。今までにない感覚に襲われたのは、現場の空気や清隆の人生を生き切ることができたからかもしれません。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

Willfriends

page top