【インタビュー】『泣くな赤鬼』柳楽優弥「十代の頃を思い出し、ものすごく共感しました」川栄李奈「柳楽さんとようやく、きちんとした夫婦を演じることができました」

2019年6月12日 / 12:00

 ベストセラー作家・重松清の短編集『せんせい。』所収の同名小説を映画化した『泣くな赤鬼』が、6月14日から全国公開となる。本作は、1人の高校教師とその教え子の再会を描いたヒューマンドラマだ。かつて甲子園出場を目指し、その熱血指導から“赤鬼先生”と呼ばれながらも、今は情熱を失いかけた高校教師・小渕隆(堤真一)は、ある日、一人の教え子と再会する。それは、野球の素質に恵まれながらも、挫折して高校を中退した“ゴルゴ”こと斎藤智之だった。立派に成長し、家族を持ったゴルゴの姿に安堵(あんど)する赤鬼。だが、ゴルゴの体は不治の病に侵されていた…。ゴルゴ役の柳楽優弥、その妻・雪乃を演じた川栄李奈に、撮影の舞台裏、作品を通じて感じたことなどを聞いた。

柳楽優弥(左)と川栄李奈

-夫婦役で共演が決まったときの感想は?

柳楽 うれしかったです。以前、テレビドラマで夫婦役をやったことがあり、今回が2回目。川栄さんは親しみやすい方ですし、ワンクール一緒にやって、気心も知れていたので。とてもやりやすかったです。

川栄 私は人見知りなので、初対面の方と距離を詰めることが苦手なんです。だから、共演したことがある柳楽さんとの夫婦役は、うれしかったです。しかも、前回は最後に夫婦になったので、その後は描かれていません。今回ようやく、きちんとした夫婦を演じることができました。

-共演する中で、お互いに助けられた部分は?

柳楽 川栄さんは、赤ちゃんの扱い方がものすごく上手。赤ちゃんがずっと泣いていたら、普通は心が折れそうになるんですが、まったく折れない(笑)。「大丈夫だよ」と言いながら、ずっとあやしている。撮影ではつらい気持ちになることも多かったのですが、そういう川栄さんの姿を見ていたら、僕も落ち着くことができました。

川栄 今回は堤真一さんやキムラ緑子(ゴルゴの母・智美役)さんなど、そうそうたる先輩方に囲まれてお芝居をするので、緊張していました。でも、柳楽さんがお芝居だけでなく、空気感的にも引っ張ってくださったおかげで、とても居心地がよかったです。

-赤鬼先生役の堤真一さんと共演した感想は?

柳楽 最高です(笑)。堤さんはみんなが緊張し過ぎない空気を作ってくださって、堤さん自身もそれを楽しんでいる雰囲気がありました。たくさんいる高校球児役の人たちを食事に誘うなど、とてもいい現場にしてくれました。

川栄 堤さんのサバサバした感じがすごく良かったです。病院で撮影する場面もあり、緊張するシーンも多かったのですが、たわいない話でみんなを和ませてくれたり…。

-堤さんとの共演で得たものはありますか。

柳楽 僕も最近、主演の機会が増える中で、先輩方がどういうモチベーションで挑んでいるのか気になっていたので、「主演は緊張しませんか」と聞いたことがあります。そうしたら、「主演だと思って主演したことがない」と。その言葉がとても印象的でした。「俺は主演だから、頑張るぞ」というモチベーションでないからこそ、いい空気感になる。僕もそういう意識で挑めるようになりたいな、と。勉強になりました。

川栄 柳楽さんがおっしゃる通り、堤さんには「自分が主演だから」という圧がないんです。お芝居には真剣に向き合いながらも、近寄りがたい空気が一切なく、とても話しかけやすい。そういう空気感がすてきだなと。おかげで、すごくいい雰囲気で撮影に臨めました。

-物語について伺います。本作では、赤鬼先生と教え子のゴルゴが、お互いに影響を与え合っていくのが見どころですね。

柳楽 先生と生徒という関係は一見、生徒の方が一方的に教わっているように見えますが、実は先生も生徒から学んでいるんだなと。僕にも子どもがいるので、お互いを成長させるそういう関係性には、グッとくるものがありました。

川栄 赤鬼先生には、厳しくて怖い一面もありますが、病気になった教え子の見舞いに来て号泣するなど、ものすごく人間味がある。そういうところはすてきですよね。

-ゴルゴは「努力は報われる」と言う赤鬼先生に対して、「みんな努力したら、みんなレギュラーになれるのか」と反論し、野球に挫折した過去があります。そのあたり、どんなことを感じましたか。

柳楽 ゴルゴの気持ちはよく分かります。先生が言っていることは正しい。少なくとも、努力はしないと報われないわけですから。でも、それに対して「分かっているけど、できないんですよ」と。結果が形として見えると、やりがいを感じて努力の大切さに気付けるのでしょうが、結果が見えないと「努力と言われても、どうすればいいの?」となる。そうすると、すぐに満足感を得られる目の前のものに飛びついてしまう。僕も十代の頃、そういう時期がありました。今振り返ると、「知らないことが多かったな」と思いますが…。そういう意味でも、ゴルゴにはものすごく共感しました。

川栄 みんなその人なりに努力はしているんですよね。その中で、拾い上げてもらえるのは、運があるかないかの差だけなのかな…と。だから、諦めてしまう気持ちも分からなくはないので、難しいですね。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「べらぼう」ついに完結!蔦重、治済の最期はいかに生まれたか?「横浜流星さんは、肉体的にも作り込んで」演出家が明かす最終回の舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月14日

 NHKの大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、12月14日放送の最終回「蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」を持ってついに完結し … 続きを読む

稲垣吾郎「想像がつかないことだらけだった」ハリー・ポッターの次は大人気ない俳優役で傑作ラブコメディーに挑む【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月13日

 稲垣吾郎が、2026年2月7日から開幕するPARCO PRODUCE 2026「プレゼント・ラフター」で傑作ラブコメディーに挑む。本作は、劇作、俳優、作詞、作曲、映画監督と多彩な才能を発揮したマルチアーティスト、ノエル・カワードによるラブ … 続きを読む

DAIGO「クリスマス気分を盛り上げてくれる作品なので、『パーシーのクリスマス急行』にぜひ乗車してください」『映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ!パーシーのクリスマス急行』【インタビュー】

映画2025年12月12日

 イギリスで最初の原作絵本が誕生してから80周年を迎えた人気児童向けアニメ「きかんしゃトーマス」の劇場版『映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ!パーシーのクリスマス急行』が12月12日から全国公開された。シリーズ初のクリスマスムービーと … 続きを読む

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

 元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む

Willfriends

page top