【インタビュー】「美しく青く」向井理「僕にとって舞台は『やりたい』というより『やらなきゃいけない』」

2019年5月15日 / 12:00

 俳優・向井理が、劇作家・演出家、赤堀雅秋と初タッグを組む舞台「美しく青く」の上演が決定した。映画やドラマで活躍するほか、劇団☆新感線『髑髏城の七人 Season風』など舞台作品にも積極的に出演している向井が熱望した赤堀とのタッグで見せるのは、懸命に生きる市井の人々。仮設住宅を舞台に繰り広げられる人間ドラマを、繊細に、そして深みを持って描く。主人公となる、どこにでもいる普通の青年を演じる向井に、本作への意気込み、そして舞台作品に出演することへの思いを聞いた。

向井理

-念願の赤堀作品出演とお聞きしています。出演が決まった気持ちを改めてお聞かせください。

 赤堀さんの作品は、ずっと拝見していました。きっと、こういったコミュニティーの中で生きている人がいっぱいいるんだろうなと感じさせる生々しさと、それが崩壊したときに出てくる本性、抑えていた感情が爆発する瞬間を描いていて、そういった作風に魅力を感じていました。とても繊細に、人間関係や会話を描いていらっしゃるんです。見ていると単純に面白いんですよ。でも、これは赤堀さんの作品に限らずですが、演じる側が傷ついて、つらい思いをしているからこそ、面白い作品になっている。傷ついて奔走している人というのは滑稽な面白さもあるし、共感できるところもあって、日常の延長線上にある非日常が見ていて面白いんです。見る側としては。
 役者としては、そういった作品に出るというのは、すごく大変で、夜もうなされるぐらいすごくきつい。動物園のおりの中に入るような気持ちなんです(笑)。だから、今回の出演も、単純に楽しみなだけというわけではなく…今は考えないようにしています(笑)。簡単にできるお芝居ではないですし、だからこそやりがいもあるんですが、うれしい、楽しいという言葉だけではない。ただ、ハードルが高い分、それを乗り越えて、千秋楽を迎えたときに、どういう景色が見えるのかなという期待はあります。

-赤堀さんの作品に出演したいという気持ちは、赤堀作品を見る中で、早い段階からあったのですか。

 気持ちはありましたが、見ていて大変そうだなと思っていました(笑)。ただ、僕は舞台俳優ではないですし、年に何本もできない分、1本に懸ける思いは自分の中で大きいんです。(その機会を)大事にしないといけないという思いもありますし、舞台でしか分からないものや見えないものがたくさんあるとも思っています。だから、僕にとって舞台は、「やりたい」というよりは「やらなきゃいけない」。やるからには、今は、大変な作品の方がいいと思っていますし、毎回、修行をする気持ちで稽古場に行っています。単純に「やりたい」という思いよりも、それを乗り越えたときに成長しているんじゃないかという期待があるという感じです。

-映像の場合は、舞台のようなきつさはあまり感じませんか。

 過程も結果も全然違いますし、演目にもよると思いますが…。でも、舞台の場合は、幕が開いている間中、集中し続けて、舞台の上に居続けないといけないので、人前に立つという緊張感があります。舞台に立っている間はずっと見られているという前提で演じるので、気も抜けない。映像の場合は、撮影で2時間本番を回すことはないので、一瞬の集中力や瞬発力が必要で、それは舞台とはまた使っている回路が違う気がします。

-向井さんにとって、舞台に出演する一番の魅力は?

 お客さんが目の前にいるということですね。ドラマの場合には、撮影が終わったそのときに、見ている人の拍手はもらえない。でも、舞台では幕が開いて、閉じるまでの時間をお客さんと共有できるので、一体感をすごく感じますし、反応も分かります。同じ空気を吸っていることを感じるのは、舞台ならではです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

 ドラマ・映画・舞台と数多くの作品で活躍する生駒里奈が、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで作り上げるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 19th GIFT「クリス、いってきマス!!!」に出演する。生駒に … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

 毎週月曜夜10時からカンテレ・フジテレビ系で放送している、ドラマ「モンスター」。趣里演じる主人公・神波亮子は、“高校3年生で司法試験に合格した”人物で、膨大な知識と弁護士として類いまれなる資質を持つ“モンスター弁護士”という設定。しかし今 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

 韓国発の大ヒットWEBコミックを日本で映画化したサスペンスホラー『他人は地獄だ』が、11月15日から公開された。  地方から上京した青年ユウが暮らし始めたシェアハウス「方舟」。そこで出会ったのは、言葉遣いは丁寧だが、得体のしれない青年キリ … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

「ローマの共和制の問題点は、今の世界が直面している数々の問題と重なる部分が多い」『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』コニー・ニールセン【インタビュー】

映画2024年11月15日

 古代ローマを舞台に、皇帝の後継者争いの陰謀に巻き込まれ、剣闘士(グラディエーター)として壮絶な戦いに身を投じる男の姿を描いたスペクタクルアクション『グラディエーター』。巨匠リドリー・スコットが監督し、アカデミー賞で作品賞や主演男優賞など5 … 続きを読む

Willfriends

page top