「学芸員の先生が『桂久武は井戸田さんにピッタリ』と言ってくれたおかげで、気持ちよく演じることができました」井戸田潤(桂久武)【「西郷どん」インタビュー】

2018年12月9日 / 21:00

 名門・島津家の血筋に生まれ、家老を務めるなど、幕末から明治初期にかけて活躍した元薩摩藩士・桂久武。西郷隆盛(鈴木亮平)とは若い頃から深い親交を結び、西南戦争にも同行することとなった。演じたのは、人気お笑いコンビ、スピードワゴンの井戸田潤。初の時代劇出演ながら、バラエティー番組のときとは異なるその落ち着いたたたずまいは、多くの視聴者から好意を持って迎えられた。物語が大詰めを迎えた今、1年以上にわたる撮影を振り返ってくれた。

桂久武役の井戸田潤

-出演が決まったときの感想は?

 最初はドッキリじゃないかと思ったんです。時代劇どころか、今までレギュラーでドラマに出演したこともなかったのに、いきなり大河の話がきたので。(相方の)小沢(一敬)さんもびっくりしていました。喜んでくれましたが、「西郷さんが連れている犬の役?」とか、だいぶいじられました(笑)。

-その他の反響などは?

 久武さんの子孫の方から「一族そろって応援しています」という手紙を頂きました。その後、鹿児島で行われたトークイベントにも皆さんそろって来ていただいたので、終了後に改めてごあいさつして、一人一人と握手させていただきました。ただ、そのときは小松帯刀役の町田啓太くんと一緒で、久武さんの子孫の中にも町田くんのファンがたくさんいたんです。そうしたら、町田くんが出てきた瞬間に、僕の手を振りほどいて「町田くーん!」と(笑)。

-事前に予習などはしましたか。

 撮影で鹿児島に行ったとき、学芸員の先生からお話を伺いました。歴史の表舞台で活躍した人ではありませんが、地元ではかなり人気があるそうです。西郷さんとは手紙のやりとりも多かったらしく、島流しに遭ったときは家族のことを任されていたとか、山奥の土地を開拓したとか、いろいろなことを教えてもらいました。すごいイケメンだったそうですが、その先生によると「井戸田さんにピッタリ」だと。おかげで、気持ちよく演じることができました(笑)。

-演じる上で心掛けたことは?

 薩摩の武士には血気盛んなイメージがありますが、監督と話をしていたら、久武さんは少し違った印象を受けました。演出でも、戦に出るときに雄たけびを上げたりせず、落ち着いた様子だったので、「穏やかな人」というイメージで演じました。

-久武は、薩摩藩の家老を務めた人物なので、重要な場面に立ち会う機会も多かったと思います。中でも印象深いのが薩長同盟の場面ですが、撮影時の思い出は?

 実は最初の予定では、あのシーンの口火を切るのは僕のはずだったんです。薩摩と長州の武士が互いに意地を張って沈黙が続く中、久武が茶菓子をつまんで、開口一番「うまい。皆さんもどうぞ召し上がってください」と。リハーサルまでやったんですけど、本番で急に「あそこ、ナシで」と言われてしまいました(笑)。あとはもう、緊迫感を壊さないように、背筋を伸ばして座っていただけです。とはいえ、あの場にいさせてもらっただけでもありがたかったです。

-他に思い出に残ったことは?

 まだ渡辺謙さん(島津斉彬役)がいた頃、本読みがあったんです。机を囲んで、亮平くんや北川景子さん(篤姫役)、青木崇高くん(島津久光役)たちが座る中、ちょうど僕の向かいが謙さん。しかも、本読みなのに、僕以外の人はほぼ台本を見ない。それにまず緊張しました。僕は謙さんに「久武!」と呼ばれて「はっ!」と答えるだけでしたが、失敗したら皆さんに申し訳ないので、自分の番が来るまで、心の中で「はっ!」を繰り返し練習していたんです。「もうすぐ来る、もうすぐ来る…」と思いながら。で、いよいよ自分の番になったら、謙さんの「久武!」がものすごい迫力で…。圧倒されて、「はっ!」が少しおかしくなりました(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

森山直太朗、「なぜ人間は歌を奏でるのか。人間の根源的なものに迫る旅になった」 ニュージーランドの先住民マオリとの出会いで得た“新たな気付き”【インタビュー】

ドラマ2024年3月16日

 「ドラマ 地球の歩き方」がテレビ大阪・BSテレ東で放送中だ。創刊45周年を迎えた“海外旅行のバイブル”「地球の歩き方」をドラマ化し、旅好き芸能人が世界各国へ記者として旅に出る姿を描く本作。三吉彩花の韓国編、森山未來のタイ編、松本まりかのサ … 続きを読む

「光る君へ」第十回「月夜の陰謀」まひろと道長が一つの結論を出した序盤のクライマックス【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年3月16日

 「一緒に遠くの国には行かない。でも私は、都であなたのことを見つめ続けます。片時も目を離さず、誰よりも愛しい道長さまが、政によってこの国を変えていく様を。死ぬまで見つめ続けます」  NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。3月10日に放 … 続きを読む

丸山隆平、赦すことは「人が成長する1つの方法」 三浦大輔の新作で“ろくでなし”の芸能記者役に【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年3月16日

 SUPER EIGHT(旧関ジャニ∞)の丸山隆平が主演する舞台、Bunkamura Production 2024「ハザカイキ」が3月31日から上演される。本作は、鋭い感性とリアルを追求した演出で、現代の若者の生態と人間の本質を描く、異才 … 続きを読む

アカデミー賞授賞式を象徴した『オッペンハイマー』キリアン・マーフィーのスピーチ【コラム】

映画2024年3月15日

 前評判の高かった『オッペンハイマー』が順当に作品賞をはじめとする7冠に輝いた今年の第96回アカデミー賞授賞式。その『オッペンハイマー』で“原爆の父”J・ロバート・オッペンハイマーを演じ、主演男優賞に輝いたキリアン・マーフィーは、受賞スピー … 続きを読む

【週末映画コラム】音と映像の迫力に圧倒されて疲れを覚えるほど『DUNE/デューン 砂の惑星PART2』/劇場未公開の3作品を公開『私ときどきレッサーパンダ』ほか

映画2024年3月15日

『DUNE/デューン 砂の惑星PART2』(3月15日公開)  その惑星を制する者が全宇宙を制するまでといわれる「砂の惑星デューン」で繰り広げられたアトレイデス家とハルコンネン家の戦い。ハルコンネン家の陰謀により、一族を滅ぼされたアトレイデ … 続きを読む

Willfriends

page top