【インタビュー】『青の帰り道』清水くるみ「台本を読んで、母親とぶつかった反抗期の自分を思い出しました」

2018年12月10日 / 12:41

 夢への挑戦、挫折、葛藤…。誰もが経験する青春の痛みと成長を、真野恵里菜、横浜流星ら注目の若手俳優総出演で描いた群像劇『青の帰り道』が、12月7日に全国公開された。母親との関係に悩みながら、さまざまな経験を経て成長していく少女キリを演じたのは、『桐島、部活やめるってよ』(12)、『orange』(15)、『南瓜とマヨネーズ』(17)などにも出演した清水くるみ。自らの経験とも重なったという本作の舞台裏を語ってくれた。

キリを演じた清水くるみ

-台本を読んだときの感想は?

 登場人物の一人一人がきちんと描かれていて、胸に突き刺さるものがありました。例えば、冨田佳輔くんが演じたのは就活生の役でしたが、この映画を撮影していた頃、ちょうど私も大学で就活の時期だったんです。私自身はこういう仕事をしているので、就活には縁がありませんでしたが、同じように「つらい」と言っている人が周りにたくさんいたので、すごく親近感が湧きました。

-キリという役についてはいかがでしょうか。

 「この役を頂けるなんて光栄。絶対にやりたい」と思いました。友だちとの場面はもちろんですが、母親とのシーンにものすごく心を動かされました。しかも、母親役は工藤夕貴さん。工藤さんとお芝居ができることがうれしかったです。

-母親との場面のどんなところに引かれたのでしょうか。

 あんなに激しくはありませんが、私も反抗期の頃、母親とぶつかったことがあったんです。台本を読んで、そのときのことを思い出しました。母親がなぜそんなことをするのか分からなくて、当時はいら立っていましたが、実は私のことを考えてくれていたことに後から気付いて感謝する、みたいな…。人から聞いたり、いろいろな本や映画で学んだりして、知ってはいたつもりだけど、実際に自分の身に降りかかると気付かないものだなと。この作品は、そんなことを考えるいい機会になりました。

-役作りという意味では、そういう体験が糸口になった感じでしょうか。

 そうですね。ただ、私は役作りに限らず、普段から映画館に行って映画を見ているときでも、全部自分と結び付けてしまうんです。だから、今回のキリの役作りをするときも、台本を読んで、「これは高校生のときの自分だ」とか「これは今の自分だ」とか、そういう部分を見つけていった感じです。やっぱり、監督から「あなたにやってほしい」と言われたら、私なりのキリを演じたいですから。そういうところで自分の経験を生かせるように、普段からいろいろな経験をするように心掛けています。

-そういう普段の努力が役に立った部分はありますか。

 キリは、自分の感情を内に秘めるタイプですが、演じる上では1回感情を出しておかないと「秘める」というお芝居ができません。私も昔は感情を出すことが苦手でしたが、役者の仕事をするようになって、感情を出す役がきたときに、きちんと演じられないと嫌だと思ったんです。それから、先輩に相談するなど、努力して出せるようになりました。そういう経験が、今回は役に立っています。そういう意味では、キリは昔の私ですね(笑)。

-誰もが傷つきながら成長していく物語で、シビアな場面も多いですが、撮影現場の雰囲気は?

 高校時代の仲間が一緒にワイワイやっている最初の場面は楽しい雰囲気でしたが、お葬式のシーンは真逆でした。みんなのこの作品に懸ける思いが強くて、その熱量が集中力に変わると、こんなに張りつめた空気になるんだ…というぐらい緊迫感があって。あんなに張りつめた空気は、今まであまり経験したことがありません。

-劇中では、個人個人のエピソードが並行して進みながら、それぞれの成長が描かれます。同級生全員が集まる場面はそれほど多くありませんが、友だちらしい雰囲気はどんなふうに作っていきましたか。

 撮影期間が長かったので、他の映画に比べて、友情を育む時間は十分にありました。みんなでご飯を食べに行くこともありましたし、それぞれが他の作品で共演する機会もあったので、自然と仲良くなっていった感じです。

-皆さんのお芝居が素晴らしく、互いに刺激し合っているような雰囲気も感じましたが…。

 自分が出ていない場面の撮影を見る機会はありませんでしたが、藤井(道人)監督が他の人の様子を伝えてくれました。例えば「昨日のリョウ(横浜流星)のシーン、すごく良かったよ」みたいな感じで。そういう話を聞くと、私も「あー、悔しい!」という気持ちになって(笑)。それがすごく刺激になりました。監督はそういうことを狙って言ってくださったんだと思います。

 
  • 1
  • 2

関連ニュースRELATED NEWS

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

高杉真宙「見どころは、何よりも坂口健太郎さんと渡辺謙さんの演技だと思います」『盤上の向日葵』【インタビュー】

映画2025年10月30日

 『孤狼の血』で知られる柚月裕子の同名小説を映画化。昭和から平成へと続く激動の時代を背景に、謎に包まれた天才棋士・上条桂介(坂口健太郎)の光と闇を描いたヒューマンミステリー『盤上の向日葵』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松 … 続きを読む

Willfriends

page top