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それまで伸び伸びと過ごしてきた西郷さんが、斉彬の死によって一気に核となる部分ができたのではないかと思わせる瞬間がありました。それは、斉彬の死を知ったとき、「弔い合戦じゃ」と血気にはやる仲間を、「そんなことはどうでもいい」と押さえる場面(第16回)です。殿のことよりも、今はとにかく政治のことを何とかしなければならないと訴える。その姿を見たら、泣いていた西郷さんが一気に変化したような気がしました。
鈴木さんは、作品に対する熱い思いが西郷さんに通じる部分があって、そこがとても魅力的です。現場では形や見え方よりも、とにかく心情が第一。2人の関係がどうしたらより強固なものになるかということをディスカッションしながら演じさせていただきました。だから、動きでもせりふでも、リハーサルで変化することが非常に多くて。おかげで毎回、現場に行くのが楽しかったです。
すごく刺激的でした。鈴木さんをはじめ、皆さんが本当に熱い思いで作品に取り組んでいるので、一場面、一場面、監督を交えて「これはこうした方がいいのでは?」と意見交換が盛んでした。そういう思いが作品にも投影されているので、放送を毎週楽しみにしています。
舞台の場合は大きな空間で表現しなければなりませんが、映像は相手が近くにいる上にカメラやマイクもある。だから、声の出し方、表情なども気を使います。ただ、今回は鈴木さん、共演者の方と深い信頼関係を築くことができたからこそ余計なことをあまり考えず、役に没頭できたと感じています。
歌舞伎でも映像でも、役を生きるということは私にとって永遠のテーマです。今回、役に成り切ることの大切さや面白さを、歌舞伎の舞台ではなく映像の現場で色濃く体感させていただいたことは、これからの自分にとってとてもいい経験になりました。
(取材・文/井上健一)
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