【インタビュー】『ナラタージュ』行定勲監督「松本潤くんはこの映画の立役者。有村架純さんは改めてうまい役者だと思いました」

2018年5月8日 / 12:00

 松本潤と有村架純の共演で、「この恋愛小説がすごい!」第1位(2006年)に輝いた島本理生氏の小説を映画化した『ナラタージュ』のBlu-ray&DVDが5月9日に発売される。この作品は、高校教師・葉山貴司とその元教え子の女子大生・工藤泉の切ない恋の行方を描いたラブストーリー。行定勲監督が『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)の直後から企画を温めていたという本作に込めた思い、共演した2人の印象について語ってくれた。

行定勲監督

-この映画はもともと『世界の中心で、愛をさけぶ』の直後から企画がスタートしたそうですね。

 『世界の中心で、愛をさけぶ』が、純愛映画として世の中に認められたので、同じスタッフでやろうということでスタートしたのが『ナラタージュ』です。ただ、この映画は『世界の中心で、愛をさけぶ』よりも登場人物の年齢を上げています。大人の階段を上りかけた主人公が、どうにもならない恋愛のもどかしさを体感する。そういうものを狙っていました。

-その理由は?

 僕は『ナラタージュ』を、原田知世さんの『早春物語』(85)に重ね合わせているのですが、僕らが中学生や高校生の頃、原田さんや薬師丸ひろ子さんの主演で、少女がいろいろな経験をして傷つきながら大人に成長していく映画がたくさんありました。『早春物語』でも、主人公が中年男性に恋をする。当時はその感情が分からなかったけど、大人になると分かってくる。恋愛の苦しさやわずらわしさ。『ナラタージュ』には、そういうものが全て詰まっています。

-なるほど。

 その上、ある意味で『ナラタージュ』は社会の縮図です。2人の男女が出会ってしまったことから、互いに依存したり、期待したりした揚げ句、苦い思いだけが残っていく。さらにそこにもう1人、自分が他人を変えられると信じている小野くん(坂口健太郎)という男の子が加わりますが、その期待が裏切られた時、彼にも暴力的な感情が芽生える。そこにあるのは、人間の弱さや愚かさ、身勝手さ、無自覚さ。恋愛映画は、そういうものを全部描くことができる。だから、僕はこの映画をやろうと思ったんです。

-恋愛という部分にこだわった訳ではないと?

 『ナラタージュ』の登場人物の感情を、会社や仕事の人間関係に置き換えてみると、全て同じような形になっているはずです。僕はそれが面白いと思っているけど、お客さんには恋愛映画と思ってもらっていい。その中に「恋愛と言っているけど、これは恋愛だけのことじゃないよね」と気付いてくれる人がいれば、話が広がって面白くなるだろうと。

-主演の松本潤さんの印象は?

 松本くん本人は面白い人で、気配りもできるし、この映画で演じた葉山とは全く違います。でも、そう見えているだけで、内面は分からない。どこかに葉山のような部分もあるかもしれない。それが何なのか、こちらで取捨選択するよりは、自分で選んでもらった方がいいだろうと。本人は「役者ではないから」と謙遜していたけれど、「俳優として来てくれと言われているなら、面白い試みなのでやりたい」と言って、そこにちゃんと乗ってくれた。まさにプロ意識です。

-その結果はいかがでしたか。

 普通の人としてそこにいるんだけど、「なぜ泉はこんな人に振り回されているの?」という不可解さもある。お客さんには「なぜあんな男がいいの? そんなに悩んでいるなら、別れればいいじゃない」と思いながら映画を見てほしかった。そういうリアルな部分がないと、映画が駄目になる可能性がありますから。その期待に応えてくれた松本くんはある意味、この映画の立役者です。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【インタビュー】映画『記憶屋 あなたを忘れない』佐々木蔵之介「山田くんとの共演では、絶妙なバディ感を目指しました」

映画2020年1月17日

 刊行以降の累計が50万部を超える織守きょうやの小説を原作に、豪華キャストが集結した映画『記憶屋 あなたを忘れない』が、1月17日(金)から全国ロードショーとなる。本作では、「人の記憶を消すことができる」とうわさされる都市伝説“記憶屋”の存 … 続きを読む

「今までの明智光秀のイメージを白紙に戻して」池端俊策(脚本)【「麒麟がくる」インタビュー】

ドラマ2020年1月17日

 いよいよ1月19日から放送開始となる大河ドラマ「麒麟がくる」。大河ドラマとしては3年ぶりに戦国時代が舞台となる本作では、「本能寺の変」を引き起こした明智光秀(長谷川博己)を中心に、織田信長(染谷将太)や斎藤道三(本木雅弘)といった武将たち … 続きを読む

【映画コラム】事実を基にした物語『リチャード・ジュエル』と『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』

映画2020年1月16日

 今回は、1月17日から公開される、事実を基にした映画を2本紹介しよう。どちらも、ドキュメンタリーとは違う、劇映画ならではの工夫や面白さが感じられる。まずはクリント・イーストウッド通算40作目の監督作品『リチャード・ジュエル』から。  19 … 続きを読む

【インタビュー】映画『花と雨』笠松将 「スターにはなれない」現実に直面して見いだした自分流の役者道

映画2020年1月16日

 近年、目覚ましい活躍でさまざまな映画やドラマに出演している笠松将、27歳。主演作は今年公開予定の作品を含めて8本にも上る。しかし、ミニシアター系やショートムービーには強いが、大作や話題作ではメインキャストから漏れることもしばしば…。「スタ … 続きを読む

【インタビュー】映画『記憶屋 あなたを忘れない』芳根京子「山田さんが『タメ口でいいよ』と言ってくださったおかげで、幼なじみらしい距離感が出せました」

映画2020年1月16日

 NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」(16~17)の主演で注目を集めて以来、『居眠り磐音』(19)や、現在放送中の「コタキ兄弟と四苦八苦」など、多彩な活躍が続く芳根京子。1月17日(金)から全国ロードショーとなる映画『記憶屋 あなたを忘れ … 続きを読む

page top