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泉は自分で自分を汚していく女性。それを誰に演じてもらうかと考えたとき、「こんなことなら、恋愛なんかしなければよかった」という思いが自分の中に生まれる女優がよかった。そこに有村さんの姿を想像してみたら、これ以上の人はいないだろうと。彼女は女優という仕事に真面目に向き合おうとしている人で、自分の中で感情表現というものをちゃんと考えている。テレビでインタビューに答える姿などを見ていると、出過ぎてはいないけれど、その笑顔の奥にはかたくなな部分があるように思えた。だから、きっとやってくれるだろうと。
撮影では、見たこともないような表情を何度も見せてくれました。それは、台本に言葉で書けるようなものではなく、「そうなってしまった」という顔。それこそ映画の醍醐味(だいごみ)です。あるとき、カットがかかった後、彼女が「今、気持ちが表情に出てしまったんですけど、やり過ぎですか?」と聞いてきたんです。「良かったけど、そう言うなら出ていないのも見てみたい」と答えたら、「分かりました」と言って次のテイクは出さずにやるんです。微妙な違いだけど、見るとやっぱり分かる。で、「出ていた方が面白くない?」と言ったら、彼女も「私もさっきの方がいいと思いました」と。そんな会話を何度も繰り返しました。
「こんな女性の顔を見たことあるな」、「女って怖い」と思わせる攻撃的な表情をするんですよね。台本にはただ会話が書いてあるだけなのに。そこからそんな表情が生まれるのは、やっぱり役者の力量です。彼女は本当に素晴らしかった。改めて、うまい役者だと思いました。
最初に編集したときは3時間半ぐらいあって、完成した映画はそこから1時間近くカットしています。そのカットした部分を改めて編集して、「未公開シーン」として特典映像に収録しました。これがすごく良くて、みんなに「なんで切ったの?」と言われます(笑)。かなり見応えがあるので、これを見ると「3時間半バージョンを見たい」という気持ちになるかもしれません。
もともとはもっと漂うような感じを目指していたので、3時間半バージョンを作ったら、全然違った見応えのある作品になるでしょうね(笑)。
(取材・文・写真/井上健一)
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