【インタビュー】『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』 妻夫木聡「今回は、うっかり感動させちゃいます」 蒼井優「この家族は、最低だけど最高じゃないですか」

2018年5月21日 / 12:00

 第1作は「熟年離婚」、第2作では「無縁社会」をテーマにした、山田洋次監督の喜劇『家族はつらいよ』シリーズ。最新作『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』(5月25日公開)のテーマは「主婦への讃歌」だ。気遣いがなさ過ぎる夫の言葉に日頃の不満が爆発し、家出をした妻と、一家の主婦がいなくなるという緊急事態に直面した平田家の大騒動を描く。本作で平田家の次男・庄太とその妻・憲子を演じた妻夫木聡と蒼井優が、撮影の舞台裏や、山田監督に対する思いなどを語った。

蒼井優:ヘアメイク/草場妙子、スタイリスト/田畑アリサ 妻夫木聡:ヘアメイク/勇見勝彦(THYMON Inc.)、スタイリスト/片貝俊

-『東京家族』(13)も含めると今回が4作目になりますね。山田洋次監督の言葉の中で、特に印象に残ったものはありますか。

妻夫木 多分、今回がこのシリーズの集大成になると思うし、誰にでも起こり得ることを題材にしているので、監督は「ただ皆さんに笑いを届けるだけではなく、喜劇だからこそ真剣に取り組んで、血の通ったものにしたい」とおっしゃっていました。その言葉がとても印象に残っています。また、台本には書かれていない大事なことを、演出の中で気付かせてくださるのが山田監督ならではだと思います。

蒼井 山田監督が「初めて映画を撮る前日に緊張して眠れなくて、先輩の監督の家を訪ねて『明日から自分はどうすればいいのでしょう…』と聞いたら、『現場の人間を信じることも監督の才能の一つだ』と言われた」という話をしてくださいました。それを聞いて、私たち役者はもちろんですが、これは映画の現場に携わっている全ての人が大切にしなければならない言葉だと思いました。他にも監督から、撮影現場で迷いが出そうになったときに、助けになる言葉をたくさん頂きました。

-4作やってきて、お互いの印象は変わりましたか。

妻夫木 ほとんど変わっていません(笑)。いまだにフレッシュな感じがします。また、初めて会ったときから、すぐにお互いに気を使わなくてもいい間柄になれたし、こうした夫婦や恋人役を演じることも多かったので、その点ではとてもありがたいと思っています。逆に、最初の『家族はつらいよ』のときは、まだ初々しい関係という設定だったので、それを演じることの方が難しかったです(笑)。

蒼井 私も初めて会ったときから変わらないです。このシリーズの場合、スタッフさんも含めて本当に壁がないのですが、そう感じるのは、もともと壁のない妻夫木くんと一緒に山田組に入れたからだと思います。それが突破口になって、皆さんとも壁がなくなっているんだろうなあと思います。妻夫木くんは、一緒にいるときは、もう世間話しかしなくなっているし、何の新鮮さも感じないんですけど(笑)、演技に関しては常に新しいことに挑戦しているので、それは見ていて楽しいし、そこには新鮮さを感じています。

-このシリーズに参加して、ご自身の結婚観や家族観について改めて考え直したところはありますか。

妻夫木 完璧な家族なんてあり得ないと思うし、人間は欲深い生き物なので、相手に対していろいろと言い出したらきりがないと思います。ただ、凸凹があるから、波があるから家族っていいんでしょうね。きっと。だから、結婚している人も、これからする人も、相手にうそをつかないということが一番大事になると思います。

蒼井 平田家はそんなに参考にはなりません(笑)。この家族を見て「まあここよりはましか」と。ただ、この家族は最低だけど最高じゃないですか。何かあったらすぐにみんなが集まるなんて。今回は、完璧に観客の目線になって「あー仲良くして」とか、「史枝さん早く帰ってきて」などと思うことがありました。だから、もちろん笑って見ていただけたらうれしいですけど、平田家を見ることで、何か気分が楽になるような、皆さんの理想像や夢でもありたいなと思いました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井内悠陽「自分を貫くことは大切。でも、時には柔軟性も必要」 映画『爆上戦隊ブンブンジャー』で映画初主演を飾る20歳の新星【インタビュー】

映画2024年7月27日

 7月26日から公開中の『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』は、テレビ朝日系で大人気放送中のスーパー戦隊シリーズ第48作「爆上戦隊ブンブンジャー」初の劇場版だ。本作でブンブンジャーのリーダー、ブンレッド/範道 … 続きを読む

田中真弓「70歳、新人のつもりで頑張っています」憧れだった朝ドラレギュラー出演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年7月26日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。新潟地家裁三条支部に赴任し、娘・優未(竹澤咲子)と2人だけの暮らしに苦労する主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)を助けるため、かつて花江(森田望智)の家で女中として働き、第7週で故郷の新潟に帰った稲が … 続きを読む

真彩希帆、憧れの「モーツァルト!」でコンスタンツェ役 「この作品を見に来て良かったと感じていただきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年7月26日

 「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という深遠なテーマをベースに、その高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”の35年の生涯に迫る、ミュージカル「モーツァルト!」が、8月19日から帝国劇場にて上演される。2002年の日本初演以来 … 続きを読む

【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』

映画2024年7月26日

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(7月26日公開)  新型コロナウィルスがまん延した2020年。首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は、最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活 … 続きを読む

鈴木梨央「特撮映画の魅力を実感しました」子役時代から活躍してきた若手俳優が、ファンタジー映画に主演『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』【インタビュー】

映画2024年7月25日

 高校生の時宮朱莉は、謎の男・穂積(斎藤工)と出会い、特殊美術造形家だった亡き祖父・時宮健三(佐野史郎)が制作を望んだ映画『神の筆』の世界に入り込んでしまう。怪獣ヤマタノオロチによって、その世界が危機にひんしていることを知った朱莉は、同級生 … 続きを読む

Willfriends

page top