「由羅は島津家のキーパーです」小柳ルミ子(由羅)【「西郷どん」インタビュー】

2018年3月18日 / 20:50

-なるほど。

 それと同時に由羅は、久光に対しても溺愛するばかりではなく、ちゃんと駄目なことは駄目だと言えるし、女性らしい優しい心のひだも持っている。演じれば演じるほど、すてきな女性だと感じています。今は親子の悲しい事件がニュースになることも多いですが、だからこそ母の豊かな愛を皆さんに見てもらいたいです。

-演じる上で特に心掛けていることは?

 由羅のせりふには、すごく強い言い回しのものもありますが、根底には相手のことを思う愛情や純粋さがある。もしくは、誤解を招きかねない言動も、決して意地悪な気持ちから出たものではない。常にそういうことを意識して演じています。例えば、ある回で大久保家を訪ねて、「これが家ですか?」と言う場面があります。それだけ聞くと、「なんてきついことを」と思いますよね。でもその後に、「懐かしいわ」と続くんです。つまり、自分が生まれ育った家も、こんなふうに狭い家だったと。意地悪ではなく、素直にふっとそう言える…。だから本当の由羅は、おなかの中にはなにもない真っ白な人だったに違いありません。

-斉興役の鹿賀丈史さん、久光役の青木崇高さんとご一緒の場面が多いですね。

 最初に顔合わせしたときから、殿とはあえて距離感を置きました。ご本人と親しくなり過ぎると、緊張感みたいなものがなくなるような気がして…。逆に久光は、初対面から飛び込んで、距離を近づけました。メールアドレスもすぐに交換しました(笑)。

-ドラマを拝見していると、由羅が斉興を愛している様子がよく伝わってきます。

 私自身、本心からそう思い、その気持ちを全身で表現するようにしています。側室として尊敬し、愛する一方で、いつも憎まれ口ばかりたたく殿が、かわいらしくていとおしい、放っておけない大きな子どものようでもある。そんな気持ちで接しています。

-それでは最後に、サッカーに例えたら、由羅はどのポジションに当たるでしょうか。

 面白い質問ですね(笑)。キーパー…ですかね? キーパーがスーパーセーブをすると、試合が締まるんです。キーパーには時々しかボールは来ませんが、ちゃんと試合の流れを読んでいないと、瞬時に反応できない。飛んでくるときはものすごい勢いで、目を背けるほどですが、それを怖がらずにキャッチする。その度胸と大胆さに加えて、繊細さも必要ですし、自分が守っているからという安心感をチームに与えなければいけない。そう考えると、やっぱり由羅は島津家のキーパーですね(笑)。

(取材・文/井上健一)

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