「由羅は島津家のキーパーです」小柳ルミ子(由羅)【「西郷どん」インタビュー】

2018年3月18日 / 20:50

 黒船来航に危機感を覚え、幕政改革を画策する斉彬(渡辺謙)だが、島津家内部では前藩主である父・斉興(鹿賀丈史)との不仲が続く。その中で独特の存在感を発揮しているのが、斉興の側室・由羅だ。“お由羅騒動”としてその名を残すなど、悪女として知られる由羅を演じるのは、「琉球の風」(93)以来、25年ぶりの大河ドラマ出演となる小柳ルミ子。撮影の舞台裏や大好きなサッカーに例えた話なども交え、演者ならではの視点で由羅について語ってくれた。

由羅役の小柳ルミ子

-25年ぶりとなった大河ドラマ出演の感想をお聞かせください。

 幸せです。大河ドラマはスケールが大きくて全国にファンの方も多いですし、お芝居に対して、役者はもちろん、スタッフの方も皆さんプロで、プライドを持って真摯(しんし)に取り組んでいます。その現場にまた関われることを、とてもうれしく思っています。今回は特に“チーム西郷どん”という感じがします。その一員として「下手なパスは出せない」という気持ちで、私も誇りと責任感を持ちながらやっています。

-小柳さんはサッカーがお好きだそうですが、“チーム西郷どん”をサッカーに例えると?

 サッカーと共通するところはたくさんあります。まず、演出のスタッフがディフェンダーですね。そして、中盤が現場のスタッフで、フォワードが私たち役者。ディフェンダーが的確な判断と正確なパスで中盤に回さないと、ボールを失ってしまいます。さらに、中盤の現場スタッフがストレスをかけずに、最前線の私たちにパスを出してくれないとゴールを決められず、結果が出せない。みんな一流のプロですが、それぞれを信頼してちゃんとコミュニケーションが取れないと点は取れません。“チーム西郷どん”は、まさしくサッカーと共通しています。

-現場で大河ドラマならではと感じることはありますか。

 他の作品ではさまざまな制約から、リハーサルの時間を十分に取れないことが多いのですが、大河はきちんとリハーサル日を取って、演出家としっかり意見交換した上で本番に臨みます。それは大河ならではですね。

-由羅をどのような人物だと考えていますか。

 私も撮影に入る前に調べてみましたが、非常にキツくて怖い女性だと思っていました。恐らく、多くの方が抱いているイメージと同じでしょう。ただその後、スタッフや地元の研究家の方からいろいろとお話を伺うに連れ、実は非常に愛情の深い、母性愛の強い、純粋なかわいらしい女性だったということが分かってきました。ですから、そういう部分を私なりに表現できたらと思っています。

-由羅を演じて、印象的だったシーンは?

 瓦版で悪評を書き立てられたことに対して、「みんな私を憎むがいい。殿様が無傷ならそれでいいわ。みんな私を斬りにいらっしゃい!」と言う場面(第4回)。自分の命を投げ打ってでも、大事なものを守るというあの強さは印象的です。同じ回で殿(=斉興)から当主の座を奪った斉彬に対して拳銃を向けるシーンも、由羅の感情が爆発していたので、台本を読みながら涙がにじんできてしまいました。どのシーンも一つ一つ大事に、心を込めてやらせていただいています。

-そういった場面を含めて、全体的に由羅は強い女性という印象を受けます。

 そうですね。ただ、その強さは息子の久光(青木崇高)や殿様を守ろうという深い愛情から生まれています。でもそれは、特別なことではなく、母親なら誰でも同じではないでしょうか。時代を超えて今も通じる普遍的なものだと思いますが、由羅の場合は、誤解されて伝わってしまった。だから本当は、由羅が一番時代に翻弄された人だったのではないかと思っています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

北香那「ラーメンを7杯くらい食べたことも」天野はな「香那ちゃんのバレエシーンは見どころ」 「ラーメン」と「クラシック・バレエ」が題材のコメディーで共演 NHK夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」完成会見

ドラマ2025年12月19日

 12月19日、東京都内のNHKで、1月5日からスタートする夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」の完成会見が行われ、主人公・千本佳里奈(ちもと かりな) 役の北香那、佳里奈の親友・二木優美(ふたぎ ゆみ) 役の天野はながドラマの見どころを語ってくれ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(9)浅間神社で語る「厄よけの桃」

舞台・ミュージカル2025年12月18日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。  前回は、玉田家再興にあたり「三つ … 続きを読む

石井杏奈「人肌恋しい冬の季節にすごく見たくなる映画になっています」『楓』【インタビュー】

映画2025年12月17日

 須永恵(福士蒼汰)と恋人の木下亜子(福原遥)は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在、亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・涼だ … 続きを読む

染谷将太 天才絵師・歌麿役は「今までにない感情が湧きあがってきた」 1年間を振り返る【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語も、残すは12月14日放送の最終回「蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」の … 続きを読む

「べらぼう」ついに完結! 蔦重、治済の最期はいかに生まれたか?「横浜流星さんは、肉体的にも作り込んで」演出家が明かす最終回の舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月14日

 NHKの大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、12月14日放送の最終回「蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」を持ってついに完結し … 続きを読む

Willfriends

page top