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大久保は、今分かっている現状や、吉之助がやろうとしていることを考慮して動くタイプ。吉之助のように自分発信で動くのではなく、周りが今こういう状況だからこうしようという感じです。そういうところから、海外に行って経験を積み、世の中を変えていこうという独自の発想が出てきます。
そうですね。今は吉之助に対して真っ向から受けて、真っ向から返しています。例えば、吉之助が100パーセントで来たら、僕も100パーセント、120パーセントで返してやろうという気持ちでやっています。でも、中盤からは変えていくつもりです。吉之助が100パーセントできたときに、僕は30パーセントで返す、というように。そういう計算を働かせることで、シーンごとの面白みや、2人の考え方の違いが少しずつ出てきますので、芝居を楽しみたいと思っています。
今回、演じるに当たって体作りをする一方で、すごく繊細にお芝居のことも考えていて、初日から「俺が西郷吉之助だ」という熱い気持ちを感じました。薩摩弁も、精忠組のみんなを含めても一番うまいです。そんな状況で、亮平くんと一緒に芝居をすると、彼の熱気やエネルギーがすごくて、その思いの強さに引っ張ってもらっている感覚があります。芝居もとにかく体当たりでぶつかってくるので、すごくやりやすい。序盤は西郷と大久保の深い友情を築くことができていると感じています。台本に「涙する」と書いていないのに、熱いものが込み上げてくるときもありました。
撮影のスタイルも「篤姫」の時とはだいぶ変わって、一つの場面をいろいろな角度からたくさん撮るようになりました。だから、絶対にミスをしたくないという気持ちで挑んでいます。そうすると、例えば、(島津)久光(青木崇高)に物申しに行くような場面でも、その場で首を斬られるかもしれないという状況の中で、覚悟を決めた正助のエネルギーが、やっていくうちにどんどん上がってしまうんです。呼吸もできないぐらいで。だから、本番の緊張感が半端じゃありません。
でも、それを乗り越えた先に見える景色というのは、ものすごく特別なものがあります。それは「篤姫」をやったときに強く感じたことでした。1年2カ月にわたって撮影を続ける中で、さまざまな思いや悔しさ、次は何かしてやろうという野心が芽生えてきます。それを積み上げていくことで、想像もしなかったようなお芝居が生まれる。「篤姫」の時は終盤、(宮崎)あおいちゃんと、ただ向き合っただけで感極まるものがありました。そういう、俳優をやってきて幸せだなと思える瞬間が絶対にきます。それを僕は、亮平くんと一緒に見たいと思っているんです。
(取材・文/井上健一)
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