「西郷は追い掛ければ追い掛けるほど、その奥にもっと大きなものがある人物」中園ミホ(脚本)【「西郷どん」インタビュー】

2018年1月2日 / 17:00

 2018年の大河ドラマ「西郷(せご)どん」の脚本を手掛けるのは、連続テレビ小説「花子とアン」(14)、「トットてれび」(16)などを送り出してきた中園ミホ氏。林真理子氏の小説を原作に、日本人なら誰もが知る西郷隆盛という人物を1年間、どのように描いていくのか。大河ドラマ初挑戦となる本作に対する意気込みと、西郷という主人公に込めた思いを語ってくれた。

脚本の中園ミホ氏

-林真理子さんの小説が原作ですが、脚本を書く上で難しさはありましたか。

 林さんの小説は今まで何度も脚色させていただいているのですが、『映像に関してはあなたがプロなのだから』と、いつも任せてくださるのでやりやすいです。“歴史”という大きな原作をどういう切り口で見せるかという部分については、林さんの小説がとても色濃く書いてくれています。私はそれを基に、エンターテインメントとして、人間ドラマとして、人間・西郷を描くつもりです。

-時代劇は初めてだそうですが、引き受ける理由として、原作の存在は大きかったのでしょうか。

 それに尽きます。林さんの原作と聞いたら、他の人には譲れません(笑)。

-林さんから何かお話は?

 いつも口癖のように「常に高みを目指しなさい」とおっしゃる方なので、今回も大河を引き受けるに当たって、「やりなさい」と背中を押していただきました。

-脚本を書く上で、心掛けていることは?

 西郷隆盛は、日本人なら誰でも知っている歴史上の偉人です。しかし、この作品ではそういう偉人の部分ではなく、人間としての西郷を生き生きと描きたいと思っています。

-時代考証を磯田道史さんが担当していますが、何か印象的なエピソードは聞きましたか。

 司馬遼太郎さんも「西郷という虚像に驚いているうちに終わってしまった」と言っているように、西郷は捉えどころのない人です。その“捉えどころのない人”をどうやってつかもうかと思い、磯田先生に「西郷はどんな人ですか?」と聞いたところ、「餅のような人」と教えてくれました。つまり、お餅を2個並べて焼くと、くっついてしまうように、近くにいる人の心に寄り添い過ぎて、同化してしまうような人だったらしいと。だからこそ、男性からも女性からも愛され、誰もが西郷のために尽くそうとしたのでしょう。西郷を描く上では、この話が大きなヒントになりました。

-書き進めている現在の手応えはいかがでしょう。

 西郷の人物像をつかんで書き始めたつもりでしたが、書いていくうちにどんどん「こんな面もあったんじゃないか」という部分が出てきて、自分の中でキャラクターが育っていく面白い体験をしています。林さんも「書き終わった時、やっと自分なりに分かった」と言っていましたが、書き終わるまで、彼の輪郭ははっきり見えないような気がします。西郷はそれくらいスケールの大きな人です。

-主演の鈴木亮平さんの演技から刺激を受けた部分はありますか。

 私はいつも俳優さんを想像しながら書くのですが、鈴木さんは以前、「花子とアン」に出演していたので、今回は最初から鈴木さんをイメージして書いていました。ただ、想像以上に体を作られてたくましくなっていたので、当初よりも野性的になっているところがあるかもしれません(笑)。

-西郷の幼なじみであり、鏡のような存在でもある大久保正助(利通/瑛太)については、どのような印象をお持ちでしょうか。

 林さんから聞いておかしかった話があります。鹿児島で「西郷さんのお墓に連れて行って」と言うと、タクシーの運転手さんはみんな喜んでお墓を案内してくれたそうです。でも、「大久保の銅像に連れて行って」と頼んだら、「どうぞ」と素っ気なく答えて、タクシーから降りてくれなかったと。その話で、鹿児島ではこんなに差があるんだと知って、びっくりしました。とはいえ、大久保がいるからこその西郷の存在であって、太陽と月、光と影のような2人の存在はとても魅力的です。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「自由に映像を撮れることを楽しんでいる作品だと思います」 山本奈衣瑠『走れない人の走り方』【インタビュー】

映画2024年4月18日

 映画監督の小島桐子はロードムービーを撮りたいと思っているが、限られた予算や決まらないキャストなど、数々のトラブルに見舞われる。理想と現実がずれていく中で、彼女はある選択をする。台湾出身で日本に留学し、東京藝術大学大学院映像研究科で学んだ蘇 … 続きを読む

若手注目俳優の佐藤瑠雅&坂井翔、「どこにでもいる男の子たちの何気ない生活を描いた」“じれキュン”ラブストーリー「彼のいる生活」【インタビュー】

ドラマ2024年4月18日

 「仮面ライダーギーツ」の桜井景和/仮面ライダータイクーン役で注目された佐藤瑠雅と、ドラマ「ジャンヌの裁き」に出演し高い演技力が話題となった坂井翔がW主演するドラマ「彼のいる生活」がTOKYO MX、ABEMA、各配信サイトにて現在放送・配 … 続きを読む

「トーマスの世界に、SDGsやリサイクルという概念が出てきた驚きがある」ディーン・フジオカ、やす子『映画 きかんしゃトーマス 大冒険!ルックアウトマウンテンとひみつのトンネル』【インタビュー】

映画2024年4月17日

 アニメーション『映画 きかんしゃトーマス 大冒険!ルックアウトマウンテンとひみつのトンネル』が4月19日から全国公開される。本作で、ゲスト声優として、リサイクル工場で発明をしている機関車のウィフを演じたディーン・フジオカと、トンネルを掘る … 続きを読む

野村麻純「吉高由里子さんの懐の深さに甘えています」 大河ドラマ初出演で主人公まひろの友人さわを好演【「光る君へ」インタビュー】

ドラマ2024年4月14日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。のちに「源氏物語」の作者となる主人公まひろ/紫式部(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)を中心にした波乱万丈な物語は、毎回視聴者をくぎづけにしている。物語を彩る多彩な登場人物の中で、まひろの友人さわ … 続きを読む

杉咲花主演ドラマ「アンメット」原作者×プロデューサー対談インタビュー 原作と視点を変え、ミヤビを主人公にした理由とは

ドラマ2024年4月12日

 杉咲花主演のドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜よる10時)が4月15日に放送スタートする。本作は“記憶障害の脳外科医”の主人公・ミヤビが目の前の患者を全力で救い、自分自身も再生していく医療ヒューマン … 続きを読む

Willfriends

page top