「不思議な感覚になった最終回を見てほしい!」森下佳子(脚本)前編【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年12月10日 / 20:50

-どの登場人物も生き生きとしていたのが印象的です。書いているうちに思った以上に活躍するようになった人物はいますか。

 終盤にかけて、思いがけず動いたのは(今川)氏真(尾上松也)です。徳川の下に入って、信長の前でまりを蹴ったり、和歌を詠んでいたりというエピソードは残っていますが、詳しいことは分からない。とはいえ、それも一つの生き残り方だという形で、最初から書くつもりではいました。だけど終盤、彼がこのドラマにふさわしいラストを切り開いていってくれたのは、思いがけない展開でした。そういえば、寿桂尼(浅丘ルリ子)さんが(武田)信玄(松平健)を呪い殺すのも、初めは予定していませんでした(笑)。今川家は個性が強かったです。

-“神回”と評判になった第33回、小野政次(高橋一生)の最期はなぜあのような展開になったのでしょうか。

 初めはああなる予定ではなかったんです。政次が身をていして井伊谷を守るというのは、最初から決めていました。ただし、直虎は刑場に見送りに行ってお経をあげるだけのつもりでした。それを聞きながら、政次がふっと笑って死ぬ…そんなイメージで。だけど、処刑まで時間がある中、いつもは諦めが悪く、最後まで何かできることはないかと考える直虎が、この時だけ何一つ答えを出さずに見送るというのは、違うんじゃないかと思い始めたんです。その結果、政次の意志を理解している直虎ができる最大の見送り方ということで、ああいう解釈になりました。

-毎回、サブタイトルがユニークでしたね。

 駄じゃれやパロディーが大好きなので、お願いしたら「いいよ」と言ってくれたので、やらせていただきました。すごく楽しかったです(笑)。

-ご自身で気に入っているのは?

 私ではなく、ディレクターが考えたものですが、「嫌われ政次の一生」は素晴らしかったです。あと、「綿毛の案」はびっくりしました。「信長、浜松来たいってよ」の元ネタは『桐島、部活やめるってよ』ですが、「直虎、領主やめるってよ」とか「虎松、お家再興するってよ」とか、何でもできるんです。だから、大事に取っておいたらずっと持ち越してしまい、「そろそろ使わないと…」となって、あそこで使わせてもらいました(笑)。

-全50回のうち、書いていて最も楽しかったのはどの回でしょうか。

 最終回! だから本当に最終回を見てほしいです!

-最終回を書いている時はどんなお気持ちで?

 変な表現ですが、パーッと終わっていく感じなんです。この瞬間にパーッと光が当たるために、今までがあったんだ、という弾けた回になって…。書いていて「走る」というより「走らされる」という不思議な感覚になりました。

-反対に、筆が進まずに苦労した部分は?

 当初の予定では、直虎と龍雲丸(柳楽優弥)はもう少し早く男女感が漂うはずでした。だけど、好意は描けるものの、色っぽい感じにならなくて。その理由は、2人の間に、自分が守らなければいけない国、自分が守りたい徒党や生き方、みたいなものが横たわっていたためです。そういうものがある間に恋愛してしまう人たちは嫌だな、という気持ちが私の中にあったのかも。試行錯誤を繰り返した結果、ようやく「ここか!」というタイミングに落ち着きました。

-放送開始前、「『信長公記』を書いた太田牛一になったつもりで」とお話をされていましたが、書き終わって、そのあたりの手応えはいかがでしょう。

 牛一先生ごめんなさい(笑)。大きく出過ぎました。まだまだいろいろな人物の描き方がありますね…と今となっては思います。だけど、やっぱり私は自分が作った直虎さんがとても好きです。

(取材・文/井上健一)

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

川口春奈、高杉真宙「自分や家族、周りの人たちを大事にしようと思うきっかけになったらうれしいです」『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』【インタビュー】

映画2026年10月1日

-実在の人物を演じる難しさは感じましたか。 川口 彼女が残した日記や言葉、映像も少なからずありましたが、自分なりの解釈はせず、監督を信じて飛び込んでみるという感じでした。本当に一つずつ模索しながら作っていったという感覚でした。 高杉 こうい … 続きを読む

木戸大聖「悲しいと思っていてもそれを表情に出せないのが難しかったです」『沖晴くんの涙を殺して』【インタビュー】

映画2026年10月1日

-今回は広瀬アリスさんとの共演でしたが、『ゆきてかへらぬ』では、妹のすずさんとも共演しましたね。  シンプルに、男と女として対峙(たいじ)する役ができたことはすごくうれしかったですし、すずちゃんもアリスさんも、自分の実年齢とは関係なく、僕が … 続きを読む

小瀧望「ファンの皆さまの声に応え続けたい」 舞台「ロックンロール」では「僕たちの芝居とともに、当時のロックミュージックも楽しんで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月30日

-そうした難しい役どころゆえ、共感はなかなか難しいのでは?  それはあまり心配していないです。先日、トム・ストッパードの「ハード・プロブレム」という作品を観劇したんですよ。その作品も、日本人とは違う感情の変化が描かれた作品でした。楽しく会話 … 続きを読む

佐津川愛美「酒井監督に惚れました(笑)」念願だった酒井麻衣監督との初タッグ『時給三〇〇円の死神』【インタビュー】

映画2026年9月30日

 10月2日から全国公開となる『時給三〇〇円の死神』は、累計発行部数36万部を突破した藤まるの同名小説を原作にしたファンタジーだ。生きる希望を失った大学生・佐倉真司(西畑大吾)が、謎めいた同級生・花森雪希(福本莉子)に誘われ、この世に未練を … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#受験競争だけではない韓国の教育問題、「鉄槌教師」が問う教師の役割

2026年9月29日

 K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む

page top