「あふれる思いで泣く夜も…」“朝ドラヒロイン”の重圧に耐えた日々を告白 有村架純(谷田部みね子)【ひよっこ インタビュー】

2017年9月26日 / 08:30

 憧れだった“朝ドラのヒロイン”となり、戦後の高度成長期の日本で、明るくたくましく生きる谷田部みね子を演じ切った有村架純。座長としての役目も立派に務め上げ、現場では決して弱音を吐かなかったという。しかし、その陰では、重圧に耐えながら一人涙する夜もあったという。クランクアップを迎え一息ついた有村が、楽しくも苦しくもあった撮影の日々を振り返り、素直な思いを語ってくれた。

谷田部みね子役の有村架純

-まずは約10カ月間の撮影お疲れさまでした。クランクアップ会見では号泣されていましたが、涙の意味を教えてください。

 お疲れさまです。あれは(クランクインからアップまでを振り返る)VTRを作ってくれたスタッフさんに対して、どこまで優しいんだ…という思いで流した涙でした。もちろん、撮影の日々が走馬灯のように思い出されると涙するものもあるけれど、あの時はつらい撮影が終わったー!というより、皆さんの思いがうれしくてしょうがなかったです。

-木村佳乃さん、沢村一樹さんなど大勢の共演者も駆け付けてくれましたね。

 まさかあんなに来てくださると思っていませんでした。皆さんから「とにかくゆっくり休んでね」とか「本当によく頑張ったね」とか気遣いの言葉を掛けてもらって、いつも愛情をもらってばかりだなと思いました。

-有村さんが愛されていたように、本作も視聴者から大変愛されていますが、その理由は何だと思いますか。

 それぞれのキャラクターが伸び伸びと生きている岡田(惠和)さんの脚本が素晴らしいという一言に尽きると思います。だから、第1週の台本を頂いた時から「やっぱり岡田さんはすごい!」と現場の士気がとても上がり、終わるまでネガティブな雰囲気が一切なく、スタッフ、キャストの皆が同じ気持ちで作品に向かうことができました。

-岡田さんとは以前からタッグを組んでいますが、岡田作品の魅力とは何でしょうか。

 岡田さんは、どんなに小さな役でも、キャラクターの一人一人をとても大事にしてくださるので、それが役者としてとてもうれしいです。難しいのはせりふの吐き方で、間合いや、句読点が複雑に付いていたり、「というか」とか「えっと」とかいう言葉がせりふの合間にあったりすると、感情がうまくつなぎづらいことがあります。だから、「ここは句読点を外してもいいですか?」と監督と相談しながらやったこともありました。

-忘れられないシーンばかりでしょうが、一番印象に残っているシーンはどれでしょうか

 ぱっと思い浮かぶのは16、17、18週です。島谷さん(竹内涼真)と付き合って、仲良くして、お別れして、という流れを1週間で撮影したので、感情の起伏が激しくて、すごく精神的につらかったです。そのあとは父ちゃん(沢村一樹)が見付かって、余計に感情がグチャグチャになって…。体力的にもしんどかったし、集中力も切らせず、気持ちがピークに達して、いろんな戦いがあった濃い期間でした。

-そんな苦労もしながら作り上げたみね子ですが、撮影を終えた今、有村さんにとって彼女はどのような存在になりましたか。

 こんなに長い期間、同じ人を演じ続けるというのはみね子が初めてというのもあって、今後、みね子を超す役が出てくるのか?というぐらいいとしく、守りたい、大切な存在になりました。

-脚本の岡田惠和さんは続編を希望していましたが、有村さんは今より先のみね子を想像できますか。

 できます。ヒデさん(磯村勇斗)もみね子も向上心があるので、二人で店を出して、自分たちが思い描くように進んでいると思うし、50年後は鈴子さん(宮本信子)みたいな人になれるように、いろんな人たちから学んだことを反映して過ごしていると思います。

-本作は、視聴率において序盤は苦戦を強いられましたが、気にされていましたか。

 最初のころは、視聴率を気にしていないようで気にしていたからか食欲もなかったし、ちょっと体調を崩した時期がありました。そういう気持ちが体に表れることが今までなかったので、よっぽど考えているのかな…と思いました。でも、監督やプロデューサーの「自分たちは絶対にいい作品を撮っている」という自信がみんなに伝わり、現場が落ち込むことはなかったし、私もその空気に励まされていました。

-現場の空気以外に、よりどころとしていたことはありますか。

 精神的に大丈夫な時もあれば、余裕がなく不安定になることもあったけど、それで現場を止めることはしたくなかったので、どんなに時間がなくても絶対にせりふは頭に入れていきましたし、体調が悪くても絶対に倒れないぞ!という気持ちを持っていました。あふれる思いで泣く夜もありましたけど、そんな時は家族や友達に励ましてもらったり、マネジャーに弱音を吐いたりして、「やるしかない」とポジティブな言葉をもらうことで、「そうだな」と自分を奮い立たせていました。あとは、撮影の合間に走ったり筋トレで汗を流したり、たまにご褒美でおすしを食べていました。

-そんな有村さんのヒロインぶりを見て、岡田さんは「なんでもできる女優になった。今、最強レベルにいる」と褒めていましたよ。

 やめてほしい…(笑)。

-有村さんご自身は本作を通じて変化や成長を実感していますか。

 何かに耐えることは任せてください!これ以上に耐えるものがあるかな…。撮影も長期間だったし、これからはどんなことも受け止めたいという気持ちが生まれました。それに、気持ちは作品に表れると感じたので、お芝居のうまい下手というのはあまり気にせず、役や作品、スタッフ、キャストに対して、どういう思いで、どれぐらいの熱量でいられるか…という思いを大事にしていきたいと思いました。

(取材・文/錦怜那)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

JT・モルナー監督「この映画の実現は厳しいと言われた時に、『羅生門』を見れば分かると言いました」『ストレンジ・ダーリン』【インタビュー】

映画2025年7月11日

 シリアルキラーの恐怖に包まれた街を舞台に、とある男女の出会いが予測不能な展開へと突き進んでいく様子を、時系列を巧みに交錯させた全6章の構成で描いたスリラー映画『ストレンジ・ダーリン』が7月11日から全国公開される。米映画批評サイトのロッテ … 続きを読む

鹿賀丈史「演じることよりも感じることの方が先だったかなと思います」『生きがい IKIGAI』【インタビュー】

映画2025年7月10日

 2024年の元旦に発生した地震で甚大な被害を受け、さらに8カ月後の豪雨によって2度目の災害に見舞われた能登で、ボランティア活動に参加した宮本亞門監督が、復興支援を目的に製作したショートフィルム北陸能登復興支援映画『生きがい IKIGAI』 … 続きを読む

千賀健永、頭が良くてゲームが上手な弟に「かわいい復讐心はありました」【インタビュー】

ドラマ2025年7月7日

 トリンドル玲奈が主演するドラマ「レプリカ 元妻の復讐」が、7日23時6分からテレ東系で放送がスタートする。本作は原作・タナカトモ氏、作画・ひらいはっち氏による同名漫画を映像化。整形して別人として生きる主人公・伊藤すみれ(トリンドル)が、人 … 続きを読む

安田顕「水上くんの目に“本物”を感じた」水上恒司「安田さんのお芝居に強い影響を受けた」 世界が注目するサスペンスで初共演&ダブル主演「連続ドラマW 怪物」【インタビュー】

ドラマ2025年7月5日

 韓国の百想芸術大賞で作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞の3冠を達成した極上のサスペンス「怪物」。WOWOWが世界で初めてそのリメイクに挑んだ「連続ドラマW 怪物」(全10話)が、7月6日(日)午後10時から放送・配信スタート(第1話・第2話 … 続きを読む

TBS日曜劇場「19番目のカルテ」が7月13日スタート 新米医師・滝野みずき役の小芝風花が作品への思いを語った

ドラマ2025年7月5日

 7月13日(日)にスタートする、松本潤主演の日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS 毎週日曜夜9時~9時54分)。原作は富士屋カツヒト氏による連載漫画「19番目のカルテ 徳重晃の問診」 (ゼノンコミックス/コアミックス)。脚本は、「コウノド … 続きを読む

Willfriends

page top