エンターテインメント・ウェブマガジン
憧れだった“朝ドラのヒロイン”となり、戦後の高度成長期の日本で、明るくたくましく生きる谷田部みね子を演じ切った有村架純。座長としての役目も立派に務め上げ、現場では決して弱音を吐かなかったという。しかし、その陰では、重圧に耐えながら一人涙する夜もあったという。クランクアップを迎え一息ついた有村が、楽しくも苦しくもあった撮影の日々を振り返り、素直な思いを語ってくれた。
お疲れさまです。あれは(クランクインからアップまでを振り返る)VTRを作ってくれたスタッフさんに対して、どこまで優しいんだ…という思いで流した涙でした。もちろん、撮影の日々が走馬灯のように思い出されると涙するものもあるけれど、あの時はつらい撮影が終わったー!というより、皆さんの思いがうれしくてしょうがなかったです。
まさかあんなに来てくださると思っていませんでした。皆さんから「とにかくゆっくり休んでね」とか「本当によく頑張ったね」とか気遣いの言葉を掛けてもらって、いつも愛情をもらってばかりだなと思いました。
それぞれのキャラクターが伸び伸びと生きている岡田(惠和)さんの脚本が素晴らしいという一言に尽きると思います。だから、第1週の台本を頂いた時から「やっぱり岡田さんはすごい!」と現場の士気がとても上がり、終わるまでネガティブな雰囲気が一切なく、スタッフ、キャストの皆が同じ気持ちで作品に向かうことができました。
岡田さんは、どんなに小さな役でも、キャラクターの一人一人をとても大事にしてくださるので、それが役者としてとてもうれしいです。難しいのはせりふの吐き方で、間合いや、句読点が複雑に付いていたり、「というか」とか「えっと」とかいう言葉がせりふの合間にあったりすると、感情がうまくつなぎづらいことがあります。だから、「ここは句読点を外してもいいですか?」と監督と相談しながらやったこともありました。
ぱっと思い浮かぶのは16、17、18週です。島谷さん(竹内涼真)と付き合って、仲良くして、お別れして、という流れを1週間で撮影したので、感情の起伏が激しくて、すごく精神的につらかったです。そのあとは父ちゃん(沢村一樹)が見付かって、余計に感情がグチャグチャになって…。体力的にもしんどかったし、集中力も切らせず、気持ちがピークに達して、いろんな戦いがあった濃い期間でした。
こんなに長い期間、同じ人を演じ続けるというのはみね子が初めてというのもあって、今後、みね子を超す役が出てくるのか?というぐらいいとしく、守りたい、大切な存在になりました。
できます。ヒデさん(磯村勇斗)もみね子も向上心があるので、二人で店を出して、自分たちが思い描くように進んでいると思うし、50年後は鈴子さん(宮本信子)みたいな人になれるように、いろんな人たちから学んだことを反映して過ごしていると思います。
最初のころは、視聴率を気にしていないようで気にしていたからか食欲もなかったし、ちょっと体調を崩した時期がありました。そういう気持ちが体に表れることが今までなかったので、よっぽど考えているのかな…と思いました。でも、監督やプロデューサーの「自分たちは絶対にいい作品を撮っている」という自信がみんなに伝わり、現場が落ち込むことはなかったし、私もその空気に励まされていました。
精神的に大丈夫な時もあれば、余裕がなく不安定になることもあったけど、それで現場を止めることはしたくなかったので、どんなに時間がなくても絶対にせりふは頭に入れていきましたし、体調が悪くても絶対に倒れないぞ!という気持ちを持っていました。あふれる思いで泣く夜もありましたけど、そんな時は家族や友達に励ましてもらったり、マネジャーに弱音を吐いたりして、「やるしかない」とポジティブな言葉をもらうことで、「そうだな」と自分を奮い立たせていました。あとは、撮影の合間に走ったり筋トレで汗を流したり、たまにご褒美でおすしを食べていました。
やめてほしい…(笑)。
何かに耐えることは任せてください!これ以上に耐えるものがあるかな…。撮影も長期間だったし、これからはどんなことも受け止めたいという気持ちが生まれました。それに、気持ちは作品に表れると感じたので、お芝居のうまい下手というのはあまり気にせず、役や作品、スタッフ、キャストに対して、どういう思いで、どれぐらいの熱量でいられるか…という思いを大事にしていきたいと思いました。
(取材・文/錦怜那)
映画2025年12月28日
今回は、筆者の独断と偏見による「2025年公開映画ベストテン」を発表し、今年を締めくくりたいと思う。 【外国映画】 2025年公開の外国映画を振り返った時に、今年の米アカデミー賞での受賞作は最近の映画界の傾向を象徴するようで興味深いもの … 続きを読む
ドラマ2025年12月26日
今年のヒットドラマ、Netflixシリーズ「おつかれさま」。子どもから親へと成長していく女性の人生とその家族を描き、幅広い世代から支持され大きな話題を呼んだ。IU(アイユー)との二人一役で主人公エスンを演じたムン・ソリに、ドラマの振り返り … 続きを読む
映画2025年12月24日
脚本家としても著名な荒井晴彦監督が、『花腐し』(23)に続いて綾野剛を主演に迎え、作家・吉行淳之介の同名小説を映画化した『星と月は天の穴』が12月19日から全国公開された。過去の恋愛経験から女性を愛することを恐れながらも愛されたい願望をこ … 続きを読む
映画2025年12月23日
2014年1月にスタートしたテレビ朝日系列の大ヒットドラマ「緊急取調室」。たたき上げの取調官・真壁有希子が、可視化設備の整った特別取調室で取り調べを行う専門チーム「緊急事案対応取調班(通称:キントリ)」のメンバーとともに、数々の凶悪犯と一 … 続きを読む
映画2025年12月20日
『楓』(12月19日公開) 須永恵と恋人の木下亜子は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・ … 続きを読む