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夜の街で盗みを働いた3人の若者が逃げ込んだ空き家。それは、かつて店主が人々の悩み相談に答えていたことで知られる“ナミヤ雑貨店”の跡地だった。ここで一夜を過ごすことになった彼らに、時を越えた手紙が届き始めたことから、ある奇跡が起きる…。累計900万部を越える東野圭吾氏のベストセラー小説を豪華キャストで映画化した群像劇『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が9月23日に公開された。3人の若者の2人、翔太と幸平を演じた村上虹郎と寛 一 郎が、撮影の舞台裏を語った。
寛 一 郎 僕は、プロデューサーと監督に会って出演が決まったんですけど、同い年の若い人たちとできるのは、すごく刺激になるなと。
村上 “刺激”って、だいぶ客観的だね(笑)。
寛 一 郎 そうですね(笑)。すごくうれしかったです。楽しみでした。
村上 僕は今回で廣木監督(隆一/監督)の現場が三度目なのですが、また呼んでもらえて光栄でした。ジャニーズの方と共演するのも初めてだったので、山田(涼介)くんとの撮影が楽しみで、いろいろなことを学べたらいいなと思っていました。後は西田(敏行)さんです。西田さんが出ていた「タイガー&ドラゴン」(05)というドラマが大好きでしたし、僕らにとってすごいレジェンドなので、ご一緒できるのがうれしかったです。
寛 一 郎 原作が本当に面白かったんですが、台本も内容は同じなのにまたがらりと印象が変わっていて、すごく新鮮でした。
村上 僕も原作を読みましたが、いろいろなエピソードが盛り込まれていて、登場人物も多いし、どうして東野さんはこんなものが書けるんだろうと驚きました。だから最初は、「これ、できるのかな?」と不安でした。でも、台本もものすごく時間を掛けて仕上げているから、僕ら3人もただのワルではないことがきちんと描かれている。それがすごく面白かったです。
村上 周りに共通の知り合いが多いので、話には聞いていたんです。「寛 一 郎って、無口だけどいいやつだからよろしく」とか。だから、仲間意識は持ちつつ、無口だというのであえて自分からは話し掛けないでいたんです。そうしたら逆に話し掛けてくれたので、うれしかったです。
寛 一 郎 「虹郎は面白いやつだよ」とは聞いていたんですけど、自分からしゃべるのは難しかったです。「おはようございます」って目を合わせた時、すごく力強い目で見てくるんですよ。この目力うるさいなと思いながら…(笑)。
村上 うるさいな(笑)。
寛 一 郎 でも、僕も仲良くしたかったので、そこは自分から話し掛けました。
寛 一 郎 思ったより静かな方でしたが、接しやすかったです。年上なので、ちょっとお兄さんという感じで。
村上 現場での集中力、持続力がすごかったです。何であんなにずっと集中していられるんだろうって…。仕事だから当たり前なんですけど。僕はやる時はやる、抜くときは抜くという人間ですが、山田くんはずっと“やる”感じでした。控室でも、僕ら2人が寝ている時に、彼は悟りが入っているような感じで。
村上 リハーサルが3日間あったのですが、5時間ぐらいやれば1日で済むことを3日間に分けてやったんです。でもそれは、毎朝、電車に乗って集まるということに意味があったと思っていて。山田くんは忙しかったので行けなかったのですが、僕ら2人はいつもご飯を食べて帰っていました。だから関係性はすぐに作れました。
寛 一 郎 台本からある程度みんなのキャラクターをつかんで、素直で一生懸命なところが幸平の持ち味だと思っていました。それを基本に、役として2人とコミュニケーションを取ることで、僕も幸平でいることができました。
村上 台本を読んでも原作を読んでも、翔太のキャラがよく分からなかったんです。いろいろな受け取り方があるなと思って。その状態で衣装合わせに行ったら、用意していただいていたのが、黒のライダースにブーツで。なじませようと思っていたのですが、やっぱりしっくりこなくて。再度監督に相談して、あの衣装になりました。そのおかげで、翔太はこれだって、だいぶしっくりきました。
村上 僕のおやじや周りの俳優さんからは、厳しいという話を聞いていましたが、僕はまだ怖いと思ったことはないです。廣木監督自身は、シャイな方ですけど、すごくチャーミングで、僕らと話す時はツンとしているのに、女性と話すとすごく楽しそうで(笑)。
寛 一 郎 僕は人と話すのがあまり得意ではないし、廣木さんもシャイな方なので、全然しゃべらなかったんです。
村上 でも、リハーサルで幸平の見せ場をやった時、廣木さんが「寛 一 郎、おまえ、もっと、もっとだよ!」って力を込めて言っていたのをすごく覚えている。
寛 一 郎 あっ、それがありましたね。すっかり忘れていました(笑)。
村上 見ている最中は、いろいろな映画を見ているみたいで、最後に「ああ、一緒の映画だったね」という感じでした。僕は、一つの町の中でいろいろな人の物語が繰り広げられるような話に弱いので、好きでした。映像にすることでさらに良くなるだろうという思いは、台本を読んだ時からありました。
寛 一 郎 知らないシーンがいっぱいあったので、自分が出ている映画じゃないと思いながら見ていました。最後に全部がつながって、「ああ、この一部になれたんだ」という思いがありました。
寛 一 郎 これから先、誰にも相談できないことがでてきたら、ふらっと相談しに行くんじゃないかと思います。
村上 「家にある読んでない本を、どうやったら早く読めますか」と相談したいです(笑)。
(取材・文・写真/井上健一)
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