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第27回で商人たちの町・気賀に堀川城が完成。その城を井伊が治めることとなり、築城を巡る騒動は一件落着した。この騒動で活躍したのが、町衆の元締め的存在である中村与太夫。その個性的な風貌や振る舞いは一際目を引くが、そこには演じる本田博太郎のアイデアが多分に反映されている。自らイメージスケッチを描いた衣装に対するこだわりから演技に対する思いまで、たっぷり語ってくれた。
この年になると、ト書きの裏側やせりふの裏側といった裏の感情をきめ細かく表現したいという思いが出てきます。孤独感や切なさ、夢とか希望とか、いろいろなものが裏側に秘められていて、隠れたその感情の方が真実のような気がするので。お芝居の中から、そういったものが醸し出せたらありがたいです。
あまり実体は見せないようにして、毒気とかユーモアとかしゃれっ気のあるしたたかな人間、ぐらいの方が商売人としてはいいかなと思っています。とはいえ、周囲から頼られて地域を背負っているわけですから、人間的な深さみたいなものもないといけません。ハッタリもありつつ、町衆たちもこの人ならついて行けるかなと思わせるような。ちょっと尋常ではない世界観もチラチラとのぞかせながら、そういう説得力が出るようにしたいと考えています。
お役に立てることがあれば、陰ながら力を貸したいというところでしょうか。直虎と接すると、与太夫という男のシャイな部分が出てしまうんです。男同士であれば、もっとストレートにやり取りできるんですが。直虎さんの目を見て芝居をするのは、僕も何だか恥ずかしくて(笑)。
龍雲丸はもう、出来の悪いわが息子、みたいなもので(笑)。行動力はあるけど、まだ完璧ではないから、これからですよね。ただ、与太夫は知的なやつらよりも、ああいう体で解決する連中の方を大事にすると思います。裏切らない気がするんですよ。
僕は台本をもらった時、絵に描くことで役柄がつかめるんです。だから、衣装も衣装さんに任せるのは苦手。衣装さんと僕の感性が合えばいいんですけど、そうでなければ近づいて、お互いに納得するような衣装を着たい。1回きりではない長丁場ですから、違和感のないように自分の主張も出しつつ、了解を得て心地良くやっています。
100パーセントです。言葉だと伝わらないこともありますが、絵なら間違いないので、大抵の作品でスケッチを描いています。現場に行ってから話をすると、探す時間がかかりますし。描いてあげれば、衣装さんや小道具さんも事前に用意できるので、事が早く済みますから。
そうです。中にシャツを着て、真ん中の黒いボタンは、衣装さんが上野のアメ横で探してきてくれたものです。その気持ちがうれしいですよね。場面によって、少し黒いものやブルーなど、いろいろあって…。ピアスも提案しましたが、さすがに監督から却下されました(笑)。指輪をしているのも、グラスを持って何かを飲むときにちらっと映るじゃないですか。小さなことですけど、気が付く人は気付くので、小道具さんもいろいろやってくれます。無から有を作るので、こだわって意見を言えば、相手が聞いてくれる場合はどんどん膨らみます。ものを作るというのは、そういうことのような気がします。
衣装は芝居を助けてくれます。気賀を取り仕切る与太夫のような人は、衣装一つで商売の仕方が伝わります。武士と対面した時、百戦錬磨という雰囲気を感じさせないと、やっぱり負けちゃいますから。表面的には下手に出ていても、腹の中では戦うつもりでいないと。だから、演技も含めてインパクトのあることをやっています。やり過ぎだと感じる人もいるかもしれませんが、やらないで後悔するよりはやった方がいいので。
そうです。リハーサルの段階で「こういうのはどうでしょう」とやってみせてからですね。だから、却下されることもあります。その場合は素直に諦めます。あの場面は「そうしよう、オッケー」という感じの声も出してみましたが、「それはちょっと」と言われましたから。
見事です。美術さんがあそこまで作ってくれたのだから、それに応えるような芝居をしないといけません。あれだけのセットを作ったのに、この程度の芝居かと思わせたら失礼ですからね。
若干、何かしらの気配は動きますね。鳥かごがあれば、それを見ているだけではもったいないので、しゃべりながら鳥かごを揺らしてみて、鳥が羽ばたいてくれたら面白いだろうなとか。ワインを飲む場面もありましたが、台本には何も書いてありませんでした。とはいえ、ただしゃべるだけでは面白くない。そこで、飲みながら芝居をしたいと話したら、小道具さんも喜んで「赤にしますか?白にしますか?」と聞いてきたので、「赤でしょう」と(笑)。
特にそういうものはありませんが、これから先も面白い役が頂けるなら、大事にやって行きたいです。出番は短くても、「こんな俳優いたんだ!」というインパクトを残せるように。芝居のうまい下手よりも、演じる俳優の志がきちんと出ていれば、視聴者は分かってくれると思うので。これからも、愚直に芝居と向き合っていきたいです。
(取材・文/井上健一)
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