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6月25日放送の第25回で折り返しを迎えた「おんな城主 直虎」。これまで、当主の座に就いた直虎(柴咲コウ)が、今川家の支配下で領地・井伊谷を豊かにすべく奮闘する姿を軸に物語が展開してきたが、第24回では遂に織田信長(市川海老蔵)が登場。松平健が武田信玄を演じることも発表され、後半はいよいよ乱世の炎が小さな井伊谷にも飛び火しそうな気配だ。
今まで以上に見応えあるドラマが期待される後半だが、これから見ようとすると、今までの経過が分からないという人も多いに違いない。幸い今は、NHKオンデマンドなどを利用すれば、放送済みのエピソードを後追いで見ることが可能。そこでここでは、前半25話のうち、筆者が考える必見の5話を紹介したい。
第1回「井伊谷の少女」
本作を見る上で必ず押さえておきたいのが、直虎と井伊直親(三浦春馬)、小野政次(高橋一生)の関係である。亡きいいなずけの直親、今川の目付を務める政次との幼なじみの絆は、今も直虎の中に息づき、その行動を左右している。そういった意味で重要な第4回までの子ども時代だが、特に外せないのは、3人それぞれの個性や井伊谷を取り巻く状況を軽快なテンポで描いた第1回だろう。
第11回「さらば愛しき人よ」
序盤のクライマックス、城主・直虎誕生へとつながるエピソード。松平と通じて今川の支配を脱しようとする直親と政次、そんな2人の望みをいとも簡単に打ち砕く寿桂尼(浅丘ルリ子)の策士ぶりなど、息詰まる展開が続く。中でも、死を覚悟して今川のもとへ向かう直親と次郎法師(直虎)の別れは、涙なしには見られない屈指の名場面だ。
第12回「おんな城主直虎」
駿府へ向かう途中、非業の死を遂げる直親。その亡がらと対面し、悲しみに沈む次郎法師が、直親の身代わりとなって当主の座に就く決意を固めるまでが情感豊かに描かれる。冒頭の悲痛なムードをくつがえし、「われが、井伊直虎である」と名乗りを上げるクライマックスは痛快。今川の目付として帰ってきた政次の豹変ぶりも見ものだ。
第18回「あるいは裏切りという名の鶴」
城主・直虎の誕生以来、直親の遺児・虎松(寺田心)の後見の座を巡って争ってきた政次の真意が明らかになる。直虎と政次の対峙(たいじ)は、柴咲本人が当サイトのインタビューで「(高橋一生と)魂をぶつけ合って、体当たりのお芝居ができた」と語っている通り、熱のこもった名場面。直虎から井伊を守る策を問われた政次の答え「戦に戦わずして勝つ」は、本作の根底に流れる重要なテーマでもある。
第21回「ぬしの名は」
第16回から登場した柳楽優弥演じる“旅の男”が、盗賊団の頭(かしら)龍雲丸であることが判明し、直虎と信頼関係を結ぶ。「武家なんて泥棒」という龍雲丸の言葉を受けて導き出した答え「奪い合わずとも生きられる世を作り出せばよいではないか」は、直虎の領地経営にとって大事な指針。井伊家中の人間とは異なり、対等な立場で直虎と関わる龍雲丸の活躍は、謎めいたその過去も含めて後半のポイントとなるはず。
以上、物語の中心となる直虎、直親、政次、龍雲丸の関係を中心に、前半の五つのエピソードを紹介してみた。この他にも、森下佳子の緻密な脚本と俳優陣の名演が生み出したエピソードの数々は見応え十分。これまで見てきた方は、前半を振り返り、後半への期待を高めるため、各自お気に入りのエピソードを見直してみてはいかがだろうか。(井上健一)