「初めて鏡を見た時、見たことのない自分が映っていたのでビックリしました(笑)」市原隼人(傑山)【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年3月13日 / 06:35

 次郎法師(後の直虎/柴咲コウ)の兄弟子に当たる龍潭寺の僧侶・傑山。次郎法師を影のように見守り、一朝ことあらば、鍛えた武芸で窮地を救うその男らしいたたずまいに、頼もしさを感じている視聴者も多いに違いない。大河ドラマ初出演となる市原隼人が、傑山という人物に込めた思い、作品に懸ける意気込みを語った。

 

傑山役の市原隼人

傑山役の市原隼人

-大河ドラマ初出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか。

 大河ドラマはどんな人でも知っていて、ドラマというエンターテインメントのジャンルを支えてきた歴史と重みのある作品なので、本当にうれしかったです。それと同時に、しっかり誠意を持って作品と向き合い、自分自身の成長の場として、何かを残せるように現場に入ろうという気持ちになりました。

-撮影が始まって、大河ドラマならではだと感じたことはありますか。

 時代劇だからということもありますが、これだけ多くの人が集まっていろいろな人の思いや熱を感じられる作品はなかなかないので、他の作品とは一番違います。お経を覚える経験でも、その意味や目的、どういう形で使われているのかということを調べていく中で、学ぶことがたくさんありました。

-役作りのためにどんなことをしましたか。

 どんな作品でもそうですが、実在の人物を演じる場合、しっかりと敬意を払い演じたいと思っています。お坊さんを演じるのは初めてですが、どんな思いでお寺に立っていたのか、どんな思いで直虎のそばにいたのか。そういうことを理解するために今回もお墓参りに行き、覚えたばかりのお経を唱えながら、「よろしくお願いします」とお祈りしてきました。

-演じる上で心掛けていることはなんでしょう。

 まずは、何を伝えるにしても、感情的に話すのではなく、しっかりと相手に投げ掛けられる言葉として話すように心掛けています。例えば、笑う時でも、その場の空気に合わせて笑うのではなく、ちゃんと相手の心の奥を見て笑う。それが時間と共に何らかの意味が出てくるような形になればいいと思っています。

-お経を唱える場面もありますね。

 般若心経を唱える場面がありますが、既成概念を取り払って本質を見抜くという教えは演技にも通じることなので、演じる上でも役に立っています。撮影の時には、本番の最中であるにもかかわらず、独特の空気感が出ていて、終わった後もすぐに言葉が出てこないような余韻が漂っていました。僕は余韻があるものがすごく好きなんですが、余韻の中に何が残るか、お客さんにどう感じていただけるかということも、作品の楽しみの一つだと思っています。お茶の間でご覧いただく時も、何かを感じて、誰かと話すきっかけになったら嬉しいです。

-武芸に秀でた傑山には、アクションの見せ場もありますね。

 言葉よりも体で表現できるのは僕だけの特権なので、お経より先に武術の稽古を始めたほどアクションは大事な要素です。手や足の皮がむけるまで、しっかり稽古をしました。戦国時代は今と違って、稽古も相手を殺すような気持ちでやっていたと思うんです。そんな気持ちが画面にも出るように、と考えながら稽古をしていたら、自分の中でスイッチが入って、自然と「まだまだ足りないです」という言葉が出てきました。僕は「いただきます」、「ごちそうさま」という日本人ならではの礼儀の意味や大切さを、さまざまなスポーツから学んできました。技術的な面はもちろんですが、武術を披露する場面では、そういう気持ちを表現できるように心掛けています。

-具体的にはどんな稽古をされたのでしょうか。

 僕は2歳から水泳と器械体操を続けてきました。一時期、空手をやっていたこともあります。今回はそこに長刀の稽古を加えて、体力維持のためにジムにも通っています。これから先も、どんどんその成果が発揮されていくので、楽しみにしていただきたいですね。

-同じ龍潭寺の僧侶である南渓和尚役の小林薫さん、昊天役の小松和重さんの印象はいかがでしょうか。

 一緒にいて気持ちがいいです。撮影でも、ただ映ればいいのではなくて、その場面の意味を考えて、互いにどうしましょうかというようなお話をされています。僕は、自分が身に付けるということを意識しながら、南渓和尚の振る舞いやしぐさを見ています。昊天さんは、いつもそばにいて言葉を交わさなくても以心伝心でつながっているような関係なので、自然と目が合う機会が多いです。すごくいい形になっているので、ご一緒できて本当に良かったです。

-丸刈りの特殊メークについてはどんな感想をお持ちですか。

 初めて鏡を見た時、見たことのない自分が映っていたのでビックリしました(笑)。毎回、2時間ぐらいかけてメークをしているのですが、そのおかげで、座っている間に気持ちが入っていき、その日のお芝居や撮影するシーンなど、いろいろなことと向き合えます。そういう時間を持てる作品はなかなかないので、単に特殊メークを施すだけでなく、その日の全てにつながっていく大切な時間になっています。

-市原さんご自身と傑山の共通する部分はありますか。

 傑山は何が起きても笑っていられる姿が印象的です。いろいろな出来事に遭遇する中で、その場の状況や空気、周りの情報に流されず、自分の考えをしっかり持ち、それをベースに目の前のものを見られる。修行を積んだ傑山には、そんなところがあります。僕も、他人に対しては先入観を持たないようにしています。直接お会いして話をする中から、自分の経験として相手を知っていく形が好きなので、そんなところは少し似ていますね。

-傑山は直虎をどんな思いで支えていくのでしょうか。

 子どもだったおとわが大きくなって、亀之丞と再会するところを物陰から見るシーンの撮影の時、なんだか自分の娘を見守るような気持ちになりました。大きくなってからも、自分の娘を見ているような気持ちは変わらないと思います。昊天が直虎の母だとすれば、傑山は父。愛情がある故に強く言ってしまうこともあれば、逆に言えないこともたくさんある。そんな繊細な思いを秘めながら、見守っていくのではないでしょうか。

(取材・文/井上健一)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

草なぎ剛「やっぱりすごい…。心からリスペクトしています」 風吹ジュン「学ぶことも多く、新しい意識が生まれるドラマ」「終幕のロンド」【対談インタビュー】

ドラマ2025年10月27日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。このドラマは、遺品整理人の鳥飼樹(草なぎ剛)が、遺品整理会社の仲間たちと共に、さまざまな事情を抱えた家族に寄り添い … 続きを読む

沢村一樹「勝負は“確認作業”」 孤高の馬主が見つめる“真の競馬”とは 「ザ・ロイヤルファミリー」【インタビュー】

ドラマ2025年10月27日

 勝っても笑わず、負けても怒らない。日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」で沢村一樹が演じるのは、大手人材派遣会社を率いる敏腕経営者で、日本競馬界有数の馬主の一人、椎名善弘。冷静沈着で、どんな勝負にも動じない男だ。そんな椎名を演じるに当たり、本 … 続きを読む

長尾謙杜&山田杏奈&石原慎也(Saucy Dog)が話題の映画でタッグ!「主題歌が主人公たちの気持ちを表している」『恋に至る病』【インタビュー】

映画2025年10月24日

 10月24日公開の『恋に至る病』は、TikTokで話題になるなどティーンを中心に絶大な支持を集める斜線堂有紀のベストセラー小説を映画化した話題作だ。  内気な男子高校生・宮嶺望と学校中の人気者・寄河景。同じクラスになった2人は距離を縮めて … 続きを読む

市毛良枝「現代の家族のいろんな姿を見ていただけると思うし、その中で少しでもホッとしていただけたらいいなと思います」『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』【インタビュー】

映画2025年10月23日

 祖父の他界後、大学生の拓磨は、夫に先立たれて独り残された祖母・文子と同居することになった。ある日、拓磨は亡き祖父・偉志の書斎で、大学の入学案内を見つける。それは偉志が遺した妻・文子へのサプライズだった。市毛良枝とグローバルボーイズグループ … 続きを読む

林裕太「北村匠海さんや綾野剛さんとのつながりを感じました」期待の若手俳優が先輩2人と作り上げた迫真のサスペンス『愚か者の身分』【インタビュー】

映画2025年10月22日

 10月24日から全国公開となる『愚か者の身分』は、第二回大藪春彦新人賞を受賞した西尾潤の同名小説を映画化した迫真のサスペンスだ。新宿の歌舞伎町で、犯罪組織の手先として戸籍売買を行う松本タクヤ(北村匠海)とその弟分・柿崎マモル、タクヤの兄貴 … 続きを読む

Willfriends

page top