【インタビュー】神田沙也加、「できないと思ってた」アイドル初体験 声優を目指したきっかけとは

2017年2月17日 / 12:35

sayaka1 人気小説「ソードアート・オンライン」の劇場版アニメ『劇場版 ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-』で、AR(拡張現実)アイドル・ユナ役の声優と劇中歌を担当したアーティストの神田沙也加。女優業など幅広く活動している中、実は初体験だったという“アイドル”を演じた感想や、声優を志したきっかけとなったゲーム「ときめきメモリアル」のエピソードを聞いた。

──神田さんといえばアニメ好きで知られていますが、アフレコした感想はいかがでした?

 キャラクタービジュアルがすごくかわいかったので、アニメ好きとしてはうれしかったです。劇場版のことはTVアニメ版の第1期の時から知っていたので、「これに出られるんだ!」とわくわくしていました。アフレコの現場はずっと続いているシリーズなので世界観がはっきりと出来上がっていて、「劇場版だから」「新キャラだから」と特別なことをするのではなくて、監督も皆さんもその世界観に溶け込むという共通認識があったのですごく早く終わりました。

──声や歌のイメージを作る上でキャラクタービジュアルは影響しますか?

 アニメ作品は特に大きいですね。プロット(あらすじ)の段階で「小悪魔的な感じ」と書いてあったので、アスナのほっぺにチュッってするところとか、愛情表現や友好的表現としてキスが自然に出てくるかわいらしさや、狙っていない小悪魔さを嫌みなく演じてみたいと思いました。

──ユナの役作りではどんなところを意識しましたか?

 アフレコよりも先に劇中歌のレコーディングを行っていたので、そこで結構キャラクターは出来ていました。実際にアイドルをやったことはなかったですけど、アイドルというと「歌って踊れてちゃんとお客さんから求められていることを返して楽しませられる」イメージがあるので、それを大前提として魅力的に映るように意識しました。

sayaka2──ご自身の活動でアイドルは未経験だそうですが、これまでにアイドルへの憧れはありましたか?

 アイドルってものすごくいろんなことができないとダメなイメージがあって…、逆に(自分は)そんなに器用じゃないのでアイドルはできないという印象がありました。でも、今回のユナ役のようなビジュアルをまとわせてもらっていると怖くないというか、キャラクターの上でアイドルをできるので、振り切って存分に楽しみました(笑)。アイドルとして「みんな~」と呼びかけたり、投げキッスをしたり、思いっきりブリブリするのは、もし自分がアイドルをやっていたら自分でも「えっ」と思ってしまうけど、キャラクターならどんなにやってもかわいいいので、安心してかわい子ぶれるのが楽しかったです。

──ユナの歌う劇中歌など5曲を担当されていますが、中でもキャラクターソングを歌うことの難しさはありましたか?

 キャラクターソングという形は初めてでしたけど、とてもいい曲なので「キャラクターソングとしてどう歌うか」というよりもいい曲をさらに良くしようと意識しました。キャラクタービジュアルを見ていて、どんな声質が合うか合わないかは導き出せていたので、最初に「もう少しかわいらしく」「年齢をちょっと下げて」と少し試行錯誤しただけで、基本的にはその曲に合う声色を使いました。

──中でも「Ubiquitous dB」はアイドルらしいですよね。

 はい。「Ubiquitous dB」は「もっとアイドルっぽくしよう」と意識しながら歌っていたので、語尾をしゃくってみたり、あまり普段やらない手法を使っているので、そこは聴いていただきたいと思います。

sayaka3──声優には以前から憧れていたそうですが、神田さんが思う声優の面白さはどんなところですか?

 舞台だと化けるといっても身長や姿形に限界はありますけど、アニメだと見た目も全然違うものになれますし、実際にできないような変身願望が満たされるところはあります。

──アーティストや女優としても活動されていますが、ほかの経験が声優に生かされることはありますか?

 あります。ミュージカルや舞台、芝居もそうですけど、劇場の大きさによって最後部の席までの距離が違います。客席から実際に目で見ていただいているとはいえ、劇場によっては最後部からだと小さくて表情だけでは伝わらないです。なので、声でお芝居を伝えようと劇場の最後列に必ず録音機を置いてチェックしています。自分に聞こえている音が良くても、お客さんに聞こえている音がダメだとお見せしている意味がないので、そういうところは応用できていると思います。

──芸能活動を始めて一番なりたかったのが声優だったそうですね。

 今もそうですけど、自分が表に出ようということにこだわっていなくて、最初になりたいと思っていたのが声優さんでした。だから諦めなくて良かったです。この仕事を始めて、まだ芸事をやらせていただいているのなら声優をやりたいと(数年前に)事務所にお話しして、スクールに通わせていただいて…。機会がなくてもいつでもいけるようにしようと勉強していました。デビューしてからずっと希望していた夢が叶ったのが『アナと雪の女王』だったので、巡り合わせを感じました。

──そもそも声優になろうと思ったきっかけは?

 小学校3~4年生のころに大好きだったスーパーファミコン版の「ときめきメモリアル」の影響です。(藤崎)詩織ちゃんと虹野沙希ちゃんが好きでセリフをまねたりしていましたが、ある日、音を消してセリフを合わせてみたんです。そしたら、完璧に合わせたつもりだったのに急に生きている感じがなくなって…。その時に音のない1枚の絵に命を吹き込むのは声だと気が付いて、声優さんってすごい、この仕事をやりたいと思いました。そこからCV(キャラクターボイス)欄も見るようになって広がっていきました。

sayaka4──昨年30歳を迎えられましたが、今後の活動について心境の変化などはありますか?

 2年ほど前から、ずっと希望していた声の仕事をやらせていただけるようになりましたが、その中で課題も見つかりました。そこを勉強して、伸ばせる部分は伸ばしていきたいという欲が出てきました。これからはあれもこれもやるのではなくて、選択したものを強化していくようにシフトチェンジしていきたいと思っています。声優もその一つです。

(取材・文・写真/中村好伸)

<プロフィール>
神田沙也加(かんだ・さやか)
舞台を中心に女優としてのキャリアを積み、多数のミュージカルに出演。ディズニー映画「アナと雪の女王」日本語吹き替え版、アナ役に出演し、第9回声優アワード主演女優賞受賞。今後はミュージカル「キューティ・ブロンド」にて主演としてエル役に出演(3月21日~4月30日まで全国各地にて公演)。

 


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(3)無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力

舞台・ミュージカル2025年9月12日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む

北村匠海 連続テレビ小説「あんぱん」は「とても大きな財産になりました」【インタビュー】

ドラマ2025年9月12日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、ついに『アンパンマン』の誕生にたどり着いた。 … 続きを読む

中山優馬「僕にとっての“希望”」 舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~の再始動で見せるきらめき【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月11日

 中山優馬が主演する舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~が10月10日に再始動する。本作は、天藤真の小説「大誘拐」を原作とした舞台で、2024年に舞台化。82歳の小柄な老婆が国家権力とマスコミを手玉に取り、百億円を略取した大事件を描く。今 … 続きを読む

広瀬すず「この女性たちの化学反応は一体何なんだという、すごく不思議な感覚になります」『遠い山なみの光』【インタビュー】

映画2025年9月9日

 ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロが自身の出生地・長崎を舞台に執筆した長編小説デビュー作を、石川慶監督が映画化したヒューマンミステリー『遠い山なみの光』が9月5日から全国公開された。1950年代の長崎に暮らす主人公の悦子をはじめ、悦子 … 続きを読む

Willfriends

page top