「九度山篇でも上杉での人質生活篇でもいいので、今すぐスピンオフをやりたいぐらいです」堺雅人(真田幸村)4 【真田丸インタビュー】

2016年12月18日 / 21:05

 NHKの大河ドラマ「真田丸」で、ついに大坂の陣で徳川家康(内野聖陽)と激突した真田幸村を演じた堺雅人。信繁から幸村へと至る波乱の生涯を演じ切った俳優としての感慨と、1年余りに及んだ撮影の裏側を語る。

 

真田幸村を演じた堺雅人

真田幸村を演じた堺雅人

-大坂城に入城してからは幸村が実質的なリーダー。それまでと立ち位置が変わりました。

 確かに「後半は物語を引っ張らなきゃ」と思っていました。でも、自分の中にいる別な人、つまり父(昌幸=草刈正雄)であり、(石田)三成(山本耕史)であり、(豊臣)秀吉(小日向文世)であり、茶々(竹内結子)であり…。いろんな人の声に突き動かされて動いていた気がします。あんまり自分で頑張る必要はなかったようです。

-秀吉に仕え始めたころは「(信繁は)サラリーマンだ」と言っていましたが、今は?

 大坂の陣を演じながら、「近いのは市役所の課長さんかな」と思いました。任された現場で、ダムの決壊でもプラントの爆発でもなんでもいいんですけど、何か不測の非常事態が起きる。上は何も決められず、連絡も途絶えた状態で現場の最高責任者として何か決断をする。そんな状況ですかね。

-内野聖陽さんは、十字槍を使う必然性をスタッフと必死で考えている堺さんを見て、俳優というよりも学者だと言っていました。

 十字槍が重くて、なんか腹が立って。こんな重いやりを持っているんだから何か理由がないと嫌だっていうのが根底にあったかもしれません。でも面白いシーンになりました。

-大坂の陣で徳川方の軍勢と対峙(たいじ)しますが、何を考えていましたか。

 演技や感情よりも、鉄砲の間合いが正しいかとか、一撃で仕留めるにはどうすればよいかとか、なるべく現実的なことだけに意識を集中するようにしました。

-合戦シーンとしての大坂の陣の見どころは?

 徳川方の兵士がいい仕事をしているんですよ。実は“真田愛”にあふれた長野県上田市の有志の方がエキストラで参加しているのですが、プロデューサーや助監督から「一番いい角度で真田丸をご覧になれます」となだめすかされて徳川方のよろいを着けられ、突進のお芝居をしています。暑い中、いいお芝居をされていたので、ぜひ討ち死にしていく徳川の兵士たちをゆっくりご覧になってください。みんな参加できたことがうれしかったらしく、笑いながら死んでいっているんです。撮影中「笑わないでください」っていう指示が飛んでいました(笑)。

-最初の撮影でいったん大坂の陣の衣装を着ましたね。今回改めて大坂の陣のために同じ衣裳を身に着けてみて、何か違いはありましたか。

 違いはお客さんに判断していただきます。ただ、前は同じように馬を走らせていても、遠くにいる家康っぽい漠然とした何かへ真っすぐ攻め込んでいた。それが今回はそこに至るまでのルートが細かくジグザグになり、そのルートがきっちり見えました。より具体的に、より情緒がなくなって現実的になる。詩的な何かが消えて実務者にならざるを得ない。それが僕はすごく好きです。

-信繁と幸村、堺さんの中ではどう違うのですか。

 本名と芸名。「幸村」は戦いのためのコードネーム。肩書に近い何かだと思っています。

-大坂城に入城してからの幸村は、ある種幻想の幸村と言ってもいい?

 自分ではありますが、任務を遂行するためのシンボル、装置であったということは思っていたのではないでしょうか。

-上杉景勝(遠藤憲一)をして「日本一のつわもの」と言わしめたのは、幸村のどんな生きざまだと思いますか。

 幸村は現場に徹することができた人。現場で命懸けで戦っている人たちを見て、景勝にはうらやましい気持ちがあったのではないでしょうか。

-幸村は女性にモテるんでしょうか。茶々も本気のようですし。

 本気です、本気です。ただ、モテる人生が幸せかどうかは「真田丸」を見てよくお考えになった方がいい(笑)。九度山でも(正室と側室の対抗意識で)大変な目に遭いました。ハーレムというのはあんなに修羅場なのだというのをお分かりになった方がいいです(笑)。

-最終回の台本を読んだ時の率直な感想は?

 物語の顛末(てんまつ)はほとんどの方がご存じだろうし、来るところに来たかという感じ。予想通りだったけど、とても一人ではたどり着けないところだったと。

-撮影を終えた今の心境は?

 長い旅行から帰ってきた気分というのが一番近いですね。寂しいけど、無事だった喜びと家族の顔を見た安堵があります。

 
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