【インタビュー】『ロマンス』タナダユキ監督 「全ては大島優子さんありきで始まった映画です」

2015年8月26日 / 12:00

 脚本・監督タナダユキ、大島優子主演の映画『ロマンス』が8月29日から全国公開される。箱根の景勝地を舞台に、ロマンスカーのアテンダントの北條鉢子(大島)と映画プロデューサーの桜庭(大倉孝二)とのたった1日の出会いと別れを描く本作は、大島にとってはAKB48卒業後、初の主演映画。本作が7年ぶりのオリジナル作品となったタナダ監督が、母親への複雑な思いを抱く鉢子を演じた大島や、本作に込めた思いについて語る。

 

タナダユキ監督

タナダユキ監督

-本作は、大島優子、箱根、ロマンスカー、というとてもユニークな設定が目を引きますが、映画化の経緯を教えてください。

 大島さんがAKB48からの卒業を発表した直後に、本作のプロデューサーから「大島優子さんで何か撮りませんか」というお話を頂きました。でも、きっといろんなオファーが来るだろうから企画が通るわけがないと思い、話半分で聞いていたんです(笑)。ところが、どうやら本当に動き出しそうだ、となって驚きました。

 私はもともと大島さんのファンでしたが、『ふがいない僕は空を見た』(12)で脚本を書いていただいた向井康介さんも彼女のファンだったので、黙っていたら怒られると思って相談したら、「こんな話はどう?」と骨組みを書いてくださったので、それを基に私が脚本を書きました。全ては大島優子さんありきで始まった映画です。

-映画監督として大島さんのどんな点に注目していたのですか。

  これは私が勝手に抱いていたイメージなのですが、AKB48時代の大島さんをテレビで見ていた時に「小さいころに見たお姉さんみたいだ」と思ったんです。全てを了解した上で引き受けて、やっているような、すごく大人の感じがしていました。もちろん彼女は明るくてかわいいところが前面に出ていますが、どこか影を感じる部分もあって、ドラマを感じさせる人だと思い、ずっと気になっていました。でも、まさか国民的アイドルだった彼女を主演にした映画が撮れるとは思っていませんでしたけど(笑)。

-映画化が決まった後、彼女をどんなふうに撮ろうと考えましたか。

  大島さんが自分の意志でAKB48を卒業した後だったので、作る側としては「大島優子は女優なんだ」ということを前提に、彼女のお芝居をきちんと見せられる作品にしたいと思いました。それに、最初からかわいいだけの彼女を撮るつもりはなかったので、AKB48時代からのファンの方も、今の女優としての彼女に興味がある方も「ああ、大島優子ってこんな表情をするんだ」と感じてもらえるようなお芝居を撮ろう、と。大島さんには「ぎりぎりのブサイクな顔でお願いします」と言ったこともありました(笑)。

-ただの観光映画とは違う、冬枯れの箱根の風景が印象的でした。

  もともとは晴れの設定だったので、こんなに雨に降られるとは思っていませんでした(笑)。でも、結果的には鉢子と桜庭の心情に合っているのではないかと思っています。

-この映画は鉢子と桜庭の1日だけの旅を描いていますが、実は鉢子とお母さんの関係がメーンテーマですね。

  昔に比べると、最近は母親との関係について思い悩んでいる人の声が届くようになってきたと思います。それを映画に入れたいと思いました。そしてこの映画では、母親に対する思いが揺れ動く主人公を描きたいと考えました。最後は鉢子の笑顔で終わりますが、実は彼女が抱える問題は何も解決してはいません。ただ、彼女の心の持ちようが前向きなものに変わっただけなんです。

-最後に監督がこの映画に込めた思いを。そして観客や読者に向けての一言をお願いします。

  誰かと出会うということは、やがて必ず別れが来るということ。長く生きれば後悔ばかりが募る。そんな今の自分の思いがあってこの映画が生まれました。ただ、今までの私の映画とは少し違って、肩の力を抜いて見ていただけるものにしたいと思いました。鉢子と桜庭の珍道中を楽しんでください。そして映画は公開されたら観客のものだと思っていますので、自由に感じていただけるとうれしいです。

(取材/文・田中雄二)

 

(C)2015 東映ビデオ

(C)2015 東映ビデオ

『ロマンス』
8/29(土)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

加藤清史郎&渡邉蒼「僕たちも今、夜神月に巻き込まれている」 子役出身の二人が挑む「デスノート THE MUSICAL」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月21日

 映画やドラマ、アニメなど幅広いメディア展開を遂げてきた人気漫画「DEATH NOTE」のミュージカル版「デスノート THE MUSICAL」が11月24日から上演される。2015年に日本で世界初演された本作は、原作のスリリングな物語を世界 … 続きを読む

なにわ男子・大西流星「“timeleszのお兄さん”な原くんは印象通り」 timelesz・原嘉孝「流星は優しくてしっかりしてる子」 1月期ドラマでW主演【インタビュー】

ドラマ2025年11月20日

 なにわ男子・大西流星と、timelesz・原嘉孝がW主演する「東海テレビ×WOWOW 共同製作連続ドラマ 横浜ネイバーズ Season1」が、2026年1月から放送がスタートする。  本作は、令和版『池袋ウエストゲートパーク』として注目を … 続きを読む

早見沙織「プレデターの新しい魅力をこの映画から感じていただけると思います」『プレデター:バッドランド』【インタビュー】

映画2025年11月19日

 未熟故に一族を追われた若きプレデターのデクは、生存不可能とされる最悪の地「バッドランド」に追放される。デクはその地で謎のアンドロイドの少女ティアと出会う。「プレデター」シリーズ中、初めてプレデター自身を主人公に据えて描いた『プレデター:バ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】「ユミの細胞たち」の原作者、ウェブトゥーン作家イ・ドンゴン

インタビュー2025年11月17日

 韓国文化の“今”を再構築し続けるKカルチャー。今回は、デジタル空間で物語を紡ぐウェブトゥーンの世界に焦点を当てる。平凡な会社員ユミの頭の中で繰り広げられる細胞の物語――。2015年に連載を開始した「ユミの細胞たち」は、全512話で32億ビ … 続きを読む

尾上眞秀「お母さんやおばあちゃんが喜んでくれました」寺島しのぶの長男が舘ひろしとの共演で映画初出演『港のひかり』【インタビュー】

映画2025年11月14日

 日本海沿岸の小さな漁師町を舞台に、元ヤクザの漁師・三浦と目の見えない少年・幸太という、年の離れた孤独な2人の絆を描くヒューマンドラマ『港のひかり』が、11月14日から全国公開中だ。  主演に舘ひろしを迎え、『正体』(24)の俊英・藤井道人 … 続きを読む

Willfriends

page top