【インタビュー】リーディング演劇「日本一わきまえない女優『スマコ』~それでも彼女は舞台に立つ~」宮本亞門 コロナ禍での演劇への思い「心を元気にする演劇やエンターテインメントはますます必要になる」

2021年5月2日 / 08:00

 総合演出・宮本亞門、主演・大和田美帆で送るリーディング演劇「日本一わきまえない女優『スマコ』~それでも彼女は舞台に立つ~」がYouTubeで無料公開中だ。今回の企画は、新型コロナウイルスの影響を受け、演劇業界が大きな影響を受ける中、多くの人にリーディング演劇を撮影した映像作品を見てもらいたいという思いから、クラウドファンディングを通じて、YouTubeでの無料公開を行った。

 物語は、明治から大正にかけて活躍した女優・松井須磨子の生涯を描く。彼女は、愛する人を当時大流行したスペイン風邪で失いながらも、舞台に立ち続けた人物として知られる。新型コロナウイルスによって母・岡江久美子を亡くした大和田が、万感の思いを込めて須磨子役に挑む。宮本に本プロジェクトを立ち上げるに至った経緯や、コロナ禍の演劇業界に対しての思いを聞いた。

宮本亞門

-今回のプロジェクトで松井須磨子の物語をやろうと思ったきっかけや、松井須磨子役に大和田美帆さんをキャスティングした理由を教えてください。

 約100年ほど前、パンデミックに襲われた日本で、記憶に残る活動をされていたのが須磨子であり、(演出家・劇作家の島村)抱月であったというのは有名な話だったので、コロナ禍の今こそ、この作品をと、昨年から考えていました。須磨子は、演劇が革命を起こしているときに、数々の新しいチャレンジに成功して話題になった強い女性です。その役を一体誰ができるんだろうと考えていたとき、以前にご一緒したこともあった大和田さんにこの話を持っていったらどうだろうと思ったんです。お母さんのことがあるからこそ、これが新しいスタートになるんじゃないか、と。それで、お話をしたら、「やりたい。私以外の誰がやるんです?」と言ってくださってスタートしました。ただ、もちろん、彼女にとっては非常につらい作品になると思うので、何度も話し合いを重ねてきた経緯があります。

-クラウドファンディングで資金を集めて、YouTubeで無料公開というのも新しい試みですね。

 今回は、内容的にもコロナ禍の今と重なる部分が大きいので、ぜひ演劇ファン以外の方や、舞台を見たことがないという方にも知っていただきたいという思いで、あえて無料公開という形にしました。こういう人がいたということや、自分たちもこのぐらい真剣に演劇をやっているということを、劇場に来たことがない方に見ていただきたかったんです。コロナ禍で「演劇は不要不急」と言われることもありますが、僕たちは真剣にやっています。それはきっと劇場に来てくださった方にしか分からないことかもしれませんが、無料公開することで、普段、演劇を見ない方にもそれを少しでも感じてもらいたいという期待も込めています。

-寄付ではなく、リターンがあるクラウドファンディングにしたのはどういった思いがあるのですか。

 それは、単にお金を集めるということだけではなく、賛同してくださる仲間を作りたかったという思いからです。だから今は、皆さんにすぐお礼を言いたくてしようがないんですよ(笑)。別にスポンサーが欲しいということではなく、演劇が好きで、これからも舞台を見たいという仲間を作りたかった。もちろん、お金を頂くことに対しては、ただ感謝しかないのですが、そこで縁が切れるのではなく、「あのとき、一緒に頑張りましたよね、ありがとう」と言いたいんです。心を共有したいというのが目的でもあります。

-では、コロナ禍で演劇を続けることにどんな意味があると考えていますか。

  演劇は、人を勇気づけたり、凝り固まっていた脳を解放させてくれたり、喜びを与えてくれたり、生きる姿勢を示してくれたりする素晴らしいものだと僕は思っています。僕は、演劇に何度も救われてきました。今、こういった時だからこそ、舞台を見て、何かを感じてもらいたい。そして、それは日常の、社会の中で一歩を踏み出す勇気になると思います。「演劇」はそう思ってもらうための道具だと思っています。

 今作では、過去に演劇でここまでやった人がいたということを伝えられたらと思っています。こうして受け継がれてきた演劇の灯は決して消えないと思います。大変な荒波があって、上演できないという苦境を毎回乗り越えてここまできている。そのエネルギーを感じてもらいたいです。だから、緊急事態宣言に向けて配信して、この未曽有の不安が押し寄せる今、同じように苦難を経験した先輩方がいたことを伝えることによって、そこから何かヒントが得られればいいなと思います。

 
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