「みんな笑顔で復興運動会ができたことがうれしかったです」橋本愛(小梅)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年6月23日 / 21:00

 関東大震災で被災した人々を勇気づけるために行われた復興運動会で、「いだてん」第1部が完結。悲しい出来事はありつつも、希望にあふれたフィナーレに、心打たれた視聴者も多いのではないだろうか。数々の困難が続く中、たくましく生き延びた被災者の一人が小梅だ。浅草の遊女として数々の男たちと恋に落ちながらも、最終的には人力車夫だった清さん(峯田和伸)と結婚。震災後の外苑バラックでは、早くも屋台を出して共に被災した人々を励ます姿が印象的だった。演じる橋本愛が、ここまでの撮影を振り返ってくれた。

小梅役の橋本愛

-第1部が完結しました。クライマックスとなった復興運動会の場面の感想をお聞かせください。

 台本を読むたびに涙が出てくるぐらい大好きなシーンでした。復興運動会の開催は11月なので、被災して2カ月ぐらいの時期。小梅も周りのみんなも、苦しい中を生き抜いてきたはずなので、ご褒美をもらったような気持ちで、みんなやっと、うそのない笑顔で運動会をやれたことが素直にうれしかったです。幸せでした。

-ここまで演じてきた中で、最も印象に残っているシーンは?

 好きなシーンはたくさんありますが、震災後、バラックで孝蔵(森山未來)と清さんと3人で夜を過ごす場面(第24回)は、とても印象に残っています。私は実際に被災したことはありませんが、あのシーンでは、「心を寄せる」ということが、芝居ではなく、行動として成し得たような気がしています。「やろう」としなくても、本当の時間がそこにあったというか…。「あの時間は本物だった」と信じられる後味があります。セットの作り込みもすごかったので、電気が消え、ろうそくの火一本で話をするときは、気を抜いたら泣いてしまいそうでした。

-その場面のお芝居はどんな気持ちで行ったのでしょうか。

 最初はいつも通り笑い合える幸せな瞬間を大事にしながらも、夜になってすすり泣く声が聞こえてくると、それに共鳴して気持ちが引っぱられてしまう…。だから、しんみりしながらも、ただ悲しむだけでなく、最後まで悲しみ切る、というシーンになったと思います。

-橋本さんの故郷・熊本も震災を経験していますが、今回の関東大震災の場面と重なるものはありましたか。

 私自身が震災を経験したわけではありませんが、地震に遭ったときの気持ちや、小学校に数日間避難したときの苦労など、家族の話を思い出しながら、小梅の経験に重ねていきました。

-ところで、小梅は美川(秀信/勝地涼)とも恋に落ち、紆余(うよ)曲折の末、清さんと夫婦になりましたね。

 最初は、思いを寄せてくれる美川さんに期待していたところもあったと思います。でも、ああいうフラフラした人なので、愛想が尽きたんじゃないでしょうか(笑)。いずれにしても、真のパートナーではない、という思いはずっとあった気がしています。だから、清さんに対して「自分のことを理解し、守ってくれる頼もしい存在がこんな近くにいた」と感じることができた。美川さんへの不満が大きかった分、清さんと一緒にいることで幸せを実感できたんでしょうね。

-清さんを演じる峯田和伸さんの印象は?

 お芝居が歌みたいだな…というのが、最初の印象です。ご本人が音楽をやられていることが関係しているかは分かりませんが、流れるような語りが心地よく、とても魅力的でした。一緒にお芝居をしていても、触れ合っているわけではないのに、近くで守ってくれているような感覚があって…。それが本番のときだけでなく、ずっと続いている感じです。

-孝蔵役の森山未來さんの印象は?

 特にすごいと思ったのは、初高座のシーンです。私自身感動してしまって、小梅としてのリアクションに引き戻すのが大変でした。役柄としては立派に落語をやり遂げたわけじゃないのだけれど、でもほとばしる生命力を強く訴えてくるようなお芝居で、超スペシャルな舞台を見せてもらったような気持ちになりました。ただ、小梅としては何が何だかよく分からない状態だったので、手放しに喜ぶわけにもいかず、拍手したい気持ちを必死に抑え込んでいました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

北村匠海「長谷川博己さんのお芝居は、やっぱり迫力がすごい」 日曜劇場「アンチヒ-ロ-」【インタビュ-】

ドラマ2024年5月8日

 長谷川博己が主演を務める日曜劇場「アンチヒーロー」(TBS系)が放送中だ。本作は殺人犯をも無罪にしてしまう“アンチ”な弁護士・明墨正樹(長谷川)の姿を描き、視聴者に“正義とは果たして何なのか? ”“世の中の悪とされていることは、本当に悪い … 続きを読む

玉置玲央「柄本佑くんのおかげで、幸せな気持ちで道兼の最期を迎えられました」強烈な印象を残した藤原道兼役【「光る君へ」インタビュー】

ドラマ2024年5月5日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。5月5日放送の第十八回で、主人公まひろ/紫式部(吉高由里子)にとっては母の仇に当たる藤原道長(柄本佑)の兄・藤原道兼が壮絶な最期を迎えた。衝撃の第一回から物語の原動力のひとつとなり、視聴者に強烈 … 続きを読む

「光る君へ」第十七回「うつろい」朝廷内の権力闘争の傍らで描かれるまひろの成長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年5月4日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月28日に放送された第十七回「うつろい」では、藤原道長(柄本佑)の兄である関白・藤原道隆(井浦新)の最期が描かれた。病で死期を悟った道隆が、嫡男・伊周(三浦翔平)の将来を案じて一条天皇(塩野瑛 … 続きを読む

妻夫木聡「家族のために生きているんだなと思う」 渡辺謙「日々の瞬間の積み重ねが人生になっていく」 北川悦吏子脚本ドラマ「生きとし生けるもの」【インタビュー】

ドラマ2024年5月3日

 妻夫木聡と渡辺謙が主演するテレビ東京開局60周年特別企画ドラマスペシャル「生きとし生けるもの」が5月6日に放送される。北川悦吏子氏が脚本を担当した本作は、人生に悩む医者と余命宣告された患者の2人が「人は何のために生き、何を残すのか」という … 続きを読む

城田優、日本から世界へ「日本っていいなと誇らしく思えるショーを作り上げたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年5月3日

 城田優がプロデュースするエンターテインメントショー「TOKYO~the city of music and love~」が5月14日から開幕する。本公演は、東京の魅力をショーという形で世界に発信するために立ち上がったプロジェクト。城田が実 … 続きを読む

Willfriends

page top