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日本初の駅伝の開催や後進の指導など、マラソンの普及に向けて精力的に活動する金栗四三(中村勘九郎)。その四三の恩師の一人が、東京高等師範学校で教授を務める永井道明だ。海外視察の経験を持ち、肋木(ろくぼく)を日本に導入するなど、体育の普及に尽力した功労者の一人でありながら、頑固で厳し過ぎる性格が災いし、周囲と衝突することもしばしば。そんな永井を、どこか憎めない人間味あふれる人物として演じているのが杉本哲太。撮影の舞台裏、演技に込めた思いなどを聞いた。
トクヨさんは永井イズムを受け継いだ人ですから、「孤立していた戦いに、ようやく味方が…」と思っていたのですが…。悲しい展開が待っていました(苦笑)。ただ、演じている寺島しのぶさんとは、これまで何度も共演している仲。「龍馬伝」(10)でも兄妹役でしたし、今回も息はぴったりです。実は永井はトクヨさんにほれていたのでは…?とにおわせる場面もあるのですが、寺島さんのおかげで、厳しい永井の意外な一面がうまく出せたのではないでしょうか。
トクヨさんの授業の内容も生徒の服装も、自分の想像を超えていたので、永井が目をひんむいて怒っていましたね。しかも、可児(徳/古舘寬治)さんまで、とんでもないコスチュームでダンスを披露したので、さらに大変なことになり…(笑)。でも、そういうところが永井の見せ場なので、皆さんに楽しんでいただければうれしいです。
いつも大声で怒鳴っている厳しい先生と見られていますが、実は着ている服は、生徒と同じ黒い学生服なんです。残っている本人の写真を見ても、満面の笑みで生徒たちと一緒に写っていたりする。そういうものを見ると、やはり生徒たちを愛していて、父親のような思いもあったんだろうなと。大声で怒鳴るのは、そういう気持ちの裏返しで、永井なりの不器用な愛情表現なんでしょうね。演じる上では、そういうことを意識しています。
今の若い人が見たら、「こんな怖い先生、いないだろう」と思われるかもしれませんが、僕が中学生、高校生の頃は、体育の先生は基本的に厳しかったんです。大声で怒鳴られるのは当たり前でしたし…。そもそも、僕の父親がレスリング部のコーチをやっていて、体育会系の厳しい人でしたから。そういう意味では、モデルになる人は山ほどいます(笑)。
実は永井自身が肋木を実演する場面はそれほど多くないんです。とはいえ一応、ストレッチや柔軟体操をやって臨みました。一見、地味で簡単そうに見えますが、実際はかなり大変です。ぶら下がっているだけでも自分の体重が腕にかかってきて、ものすごく痛くなってくる。30秒もやったら限界です。ある日、食堂のシーンを撮影するとき、監督からいきなり「ここは肋木に足を掛けて、体幹を鍛えながら…」と言われたことがあり、かなり焦りました。僕としては「えーっ!」という感じです(笑)。事前に言ってくれれば、それなりに準備もできたんですけど、なんとかやり切りました(笑)。
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