「根底に優しさがあるのが、今回の家定の特徴です」又吉直樹(徳川家定)【「西郷どん」インタビュー】

2018年4月16日 / 12:32

 黒船来航への対応を巡り、混乱が続く江戸幕府。その頂点に君臨するのが、篤姫(北川景子)の夫でもある第13代将軍・徳川家定だ。演じるのは、お笑いコンビ“ピース”として活動するほか、作家としても『火花』で芥川賞を受賞するなど、マルチに活躍する又吉直樹。奇行を繰り返し、暗愚とうわさされた家定に対する独自の解釈、初出演となった大河ドラマの舞台裏を語ってくれた。

徳川家定役の又吉直樹

-大河初出演が決まったときの心境は?

 まさか自分が大河ドラマに出られるとは…という気持ちです。役を聞き、脚本を読ませていただいて、この人物だったら挑戦してみようと思いました。

-奇行を繰り返したと言われる家定ですが、演じてみた印象は?

 今までは、病弱でちょっと変わった行動をする奇人という描かれ方が多かった家定ですが、今回はその根底に優しさがあるという脚本になっています。それが一番の特徴なのかなと。決して人を笑わせようとしているのではなく、一生懸命やった結果、それが普通とは違って見える。そう解釈して演じています。

-そんな家定に共感できる部分はありますか。

 史実では、家定は人前に出ることが苦手だったと言われています。僕は子どもの頃からお笑いが好きで、中学校のときには自分でネタを作ってコントをやったりしていました。それで受けるとうれしいんですけど、人前に出るのは苦手だったんです。高校生になると、さらに苦手になって…。でも、自分で表現したいという欲はある。だから、芸人も目立ちたがりばかりではないんです。家定についても「殿様でラッキーじゃないか。何をおびえる必要がある?」と考える人がたくさんいると思いますが、そんな単純な話ではない。僕らとは比べようもありませんが、家定にしか分からない悩みや苦しみが、ちゃんとあったんじゃないかなと。それはすごく感じます。

-演じる上で苦労したことは?

 僕はお芝居の経験がほとんどないので、緊張感を持ってやっているのですが、それでも途中で笑ってしまうときがあります。それは、家定がすごくいいやつだな、かわいらしい人だなと思えるからなんです。実はそこが家定の魅力なのかもしれません。

-過去に2人の妻を亡くしている家定は、孤独や哀しみを抱えているように見えます。

 若いときに大事な人を亡くしている上に、今回の家定は動物好きで、何かが死ぬことをとても恐れています。身近な人を失ったときの悲しみは誰もが感じることですが、家定の場合は、動物が亡くなったときでも同じくらいの感情で悲しむんです。人や生き物が死ぬという絶対的な法則を、僕らは忘れて行動できる瞬間がありますが、死が身近なところにある家定は、どんな生き物が亡くなってもそのたびに傷つく。生きていくのはかなりしんどいでしょうね。だから、3人目の奥さんには健康な人をと望んだのでしょう。

-家定と篤姫の関係も気になるところですが、北川景子さんの印象は?

 脚本でも篤姫はとても強い人でパワーがありますが、北川さん本人からもそういう力強さを感じます。ピッタリですよね。お互いに関西出身なので、いろいろな話もしましたが、北川さんはいわゆる女優さん的な感じとはまた違う不思議な雰囲気のある方。僕と気さくに話をする様子も、篤姫の印象と重なります。

-そういうお2人の距離感がドラマにも出ているのでしょうか。

 そうですね。家定が篤姫のことを好きで、ややたじろいでいるあたりは、僕が北川さんを前にした時の感覚に近いかもしれません。かなり近い距離で目を合わせるシーンもあり、脚本には「家定が戸惑う」と書いてあったのですが、演技をしなくても戸惑うことができました(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【週末映画コラム】『六人の嘘つきな大学生』/『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(11月22日公開)

映画2024年11月22日

『六人の嘘つきな大学生』(11月22日公開)  大手エンターテインメント企業「スピラリンクス」の新卒採用の最終選考に残った6人の就活生への課題は「6人でチームを作り、1カ月後のグループディスカッションに臨むこと」だった。  全員での内定獲得 … 続きを読む

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

 ドラマ・映画・舞台と数多くの作品で活躍する生駒里奈が、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで作り上げるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 19th GIFT「クリス、いってきマス!!!」に出演する。生駒に … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

 毎週月曜夜10時からカンテレ・フジテレビ系で放送している、ドラマ「モンスター」。趣里演じる主人公・神波亮子は、“高校3年生で司法試験に合格した”人物で、膨大な知識と弁護士として類いまれなる資質を持つ“モンスター弁護士”という設定。しかし今 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

 韓国発の大ヒットWEBコミックを日本で映画化したサスペンスホラー『他人は地獄だ』が、11月15日から公開された。  地方から上京した青年ユウが暮らし始めたシェアハウス「方舟」。そこで出会ったのは、言葉遣いは丁寧だが、得体のしれない青年キリ … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

Willfriends

page top