氷川きよし、復帰後初の座長公演に挑む「どの世代の方が見ても『そうだよね』と思っていただけるような舞台を作っていきたい」【インタビュー】

2025年11月29日 / 08:00

 氷川きよしが座長を務める「氷川きよし特別公演」が2026年1月31日に明治座で開幕する。本作は、氷川のヒット曲「白雲の城」をモチーフにした芝居と、劇場ならではの特別構成でお届けするコンサートの豪華2本立てで贈る公演。2022年の座長公演では18世紀のフランスを舞台にした斬新な芝居が好評を博したが、今回は原点に帰り、氷川が正統派の時代劇に挑戦する。氷川に休養期間に感じたことや本作への意気込みなどを聞いた。

氷川きよし【撮影:田中亜希】 (C)エンタメOVO

-2022年以来、3年半ぶりの座長公演となりますが、まずは公演への思いを聞かせてください。

 前回は初の洋物でドレスを着たり、さまざまな扮装(ふんそう)をして自分の持っているものを存分に生かすお芝居をさせていただきましたが、自分自身は20代の頃から時代劇をずっとやらせていただいてきたんです。正直なところ、若い頃は時代劇の良さが分からず、大人の方に言われるまま一生懸命やっていたのですが、年齢を重ねるごとに時代劇の深さと日本の良さを感じるようになりました。日本にいるときはあまり分からないものですが、アメリカに2カ月間、行っていたら日本ってすごく良いところなんだなと改めて思うようになったんです。奥ゆかしさやお着物の華やかさといったものは、年齢重ねて、50歳近くなって分かるようになりました。なので、今回は久しぶりに時代劇に挑戦させていただくことになりました。これまでの経験を生かしながら演じていきたいと思います。

-時代劇を演じるにあたって、今、どのような意気込みがありますか。

 戦国時代を舞台にした物語ですが、時代が変わっても、人の心は変わらないですし、誰しもが平和を願っていて、人とのつながりを求めています。この時代は、平安を求めていても、憎しみ合いばかりになっていましたが、人を憎むことでは解決することはできません。この作品は、お互いが寛容に受け入れることで平和が作られるのだということを表現した舞台になっていますので、老若男女、幅広い皆さんに楽しんでいただけると思います。どの世代の方が見ても「そうだよね」と思っていただけるような、そんな舞台を作っていきたいです。実は、まだ(取材当時は)台本をいただいたばかりで、自分の役名を初めて知ったくらいなのですが、これからしっかりと読み込んで、立ち稽古のときにはせりふが入っている状態にして、周りの役者さんにはっぱをかけるくらいにしていきたいと思います。若いときには、台本を本番の一カ月前にもらって、高熱が出たり、冷や汗が出たりしながら、自分でも意味が分からないまませりふを話していましたが、今回はまだまだ時間もありますので、この主人公は何を伝えたいのかをしっかりと理解して、人より何百倍も努力をして挑戦したいと思っております。

-今回の芝居は、氷川さんのヒット曲「白雲の城」をモチーフにした物語ということですが、この楽曲についてはどのような思い出がありますか。

 1年8カ月のお休みから復帰して、年末にNHK紅白歌合戦に出場が決まったときに、歌いたいと最初に思ったのがこの「白雲の城」でした。「限界突破×サバイバー」でも「きよしのズンドコ節」でも「箱根八里の半次郎」でもなく、ここはビシッとはかまを着て、歌手である氷川きよし、そしてグループ氷川きよしの一員としての責任を持って、「白雲の城」を朗々と真剣に歌いたいと思っておりました。歌っているとすごく寂しい曲なんですが、でも、その時代の人になりきって、りりしく朗々と歌うことでプロとしての魂をかき立てられます。そうした思いから、今回、お芝居のテーマにもさせていただきました。先ほども申しましたが、時代は変わっても人の心は変わらないものだと思います。やっぱり家族を亡くしたら寂しいし、最愛の人を亡くせばものすごく苦しくなる。でも、その中でも生き抜いていかなければいけない。そんな生きることの意味を伝えられる楽曲だと思います。みんなそれぞれの立場で使命感を感じながら毎日生きて、苦しいことがあっても乗り越えていると思いますが、そうしたことが表現されたものになると思います。

-休養期間を経て初めての座長公演になりますが、休養期間をどのように過ごしていましたか。そして、その経験がどのように今回の公演に生かされると思いますか。

 年齢も50歳近いので新しい自分でやっていきたい、自分で選んだものの責任をとっていく年齢だという考えがあり、お休みさせていただいたのですが、お休みの間には2カ月ほどサンタモニカに滞在しながら、フロリダやラスベガスなど行きたいところに行って、見たかったショーを見て過ごしていたんです。ジャズの王者のハービー・ハンコックさんにビバリーヒルズで何度もお会いして対話をさせていただいたりもして、その中で自分が歌っていく意味と、どんな姿形であろうと心は変わらないということ、そうしたことを伝えていける生涯にしたいと感じるようになりました。日本では気付かなかったことにもたくさん気付き、やっぱり日本っていいなと。例えば、お着物の素晴らしさを改めて感じましたし、日本食はやっぱりおいしい(笑)。実は、最初は少しホームシックにもなったんです。漠然と休養に入ってしまったので、自分で選んでここに滞在しているけれど、これからどうしたらいいんだろうってサンタモニカの海を見て泣いてしまったんですよ。そのとき、苦しいから詩を書こうと思って書いたのが、今、発売されている『KIINA.』というアルバムの「暴れ海峡」という歌詞です。その自分の苦しい気持ちも言葉にしたときにすっとしたんです。そのアメリカに行ったときに70曲くらい詩を書いていました。芸術といってしまうのはおこがましいですが、芸術っていうのは苦しみから生まれるので、楽しいときにはあまり出てこないものなんですよ。だからやっぱ苦しまなくてはいけない。そういうことを感じながら過ごしました。最終的にどんなことがあっても謙虚に、人間らしく、ありのまま生きていこうって。そして誠実に生きていけば、人は必ず分かってくれる日が来るかなと思いました。だから、1年8カ月のお休みは無駄じゃなかったと思います。なくしたときに気付くものもあるし、人には休息も大事。人生を振り返ることができましたから。デビューして20年が経って、今、やっと自分が好きなことができるのかなと思います。いよいよこれからという気持ちです。

-公演は1月からスタートしますが、2025年は氷川さんにとってどんな1年でしたか。

 2025年はもうホップの時代でした。来年がステップで、私が50歳になる年がジャンプになるのかなと。なので、スタートラインに立ったような感覚です。まだまだ自分は未完成で行き届かないところもたくさんあるけど、人間としてきちんとしていきたいと思います。やっとホップになったので、来年のステップをこの明治座でスタートしていきたいと考えています。

-最後に公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

 同世代の方たち、50、60代の方たち、子育てが終わってちょっとホッとしたという方たちにも見ていただき、「氷川きよしは私の居場所だ」と思っていただいたり、いろいろなものを共有できる場所づくりをしたいと思っています。1人じゃないんだと、背中を押してあげて、自分も楽しもう、きれいになろうと思っていただけるものを発信できればと。そして、私たちの親世代の皆さんには、コロナ禍が終わって、気分転換にエンターテインメントを存分に楽しもうと、現実から離れられる場所を差し上げたいと思っています。

(取材・文/嶋田真己)

 「氷川きよし特別公演」は、2026年1月31日~2月18日に都内・明治座ほか、愛知、大阪、福岡で上演。

「氷川きよし特別公演」


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