【花燃ゆインタビュー】長塚京三「百合之助さんは優しくて大きい人」 ヒロイン文と吉田松陰らを見守る父親役

2015年1月24日 / 08:47

 NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」で、井上真央演じるヒロイン文の父親・杉百合之助役を演じている長塚京三。大河ドラマへの出演は2008年の「篤姫」以来でこれが7本目。演じる百合之助は下級武士で薄給のため、畑仕事をして家族の暮らしを支えた。次男は松下村塾を主宰した吉田松陰(伊勢谷友介)。百合之助は尊王攘夷を実現するためにまい進していく息子をどんな思いで見詰めていたのか。長塚が百合之助の複雑な親心を語った。

 

杉百合之助役の長塚京三

-「篤姫」に続き、今回も主人公の父親役ですが、百合之助の役作りで何か参考にしたことはありますか。

 ロケで萩に行ったとき、街をあちこち歩き回ったのですが、百合之助さんというのは“名前”しか残っていない。写真も無いからどんな顔をしていたのかも分からないんです。でも、それは僕にとってはものすごくいいこと。プロデューサーと話し合って自由に人物像を作っていけますから。お侍さんだけどいでたちも野良着にしようとか、農作業のときは刀を腰に差さずに荷車の上に積んでおくとか、そういった感じですね。

-資料が少ない中、百合之助をどういう人物として捉えていますか。

 とても生真面目で実直、コツコツと農業をして家計を支えた人。教育者としても、子どもたちに孟子などをしっかりと教えたということは聞きました。でも、肝心なところは実弟の玉木文之進(奥田瑛二)に任せていたみたい。いわゆる教育者としては資質も実績も自分よりも玉木が優れていたので、教育はあっさりと彼に委ね、自分は一歩引いたところにいたようです。さらに本好きといっても、結構『太閤記』などの読み物もお好きだったらしくて(笑)。農作業に出るときにも懐に本を何冊か忍ばせていたようです。

-子どもたちにとって百合之助はどういう存在だったと想像されますか。

  僕は、彼は“大きい人”だったのじゃないかなという気がしています。百合之助さんは息子や娘たち家族を、割とスッと引いたところから慈しんでいたんじゃないかと。そういう大きな愛情に包まれて育った子どもは、悪い子にはならない(笑)。玉木のようなスパルタで勉強を教える人物がいる一方、そうではない牧歌的で晴耕雨読のような百合之助さんの存在もあった。それが松陰にとっても良かったのかなと思います。

 -百合之助は松陰をどのような気持ちで見守っていたと思いますか。

 松陰のような優れた革命家は、結局、早世したり暗殺されたりと、古今東西を見ても個人的にはあまり幸せにはなっていない。それを百合之助さんも知らないわけではないから、いろいろと思うところはあったと思う。この子はこれでいいのか、このまま息子を進ませていのかと。それは優秀な子どもを持った親のうれしさでもあり、つらさでもあった。殿様に懇意にしてもらったりするのは誉れでも、結局革命家として先鋭化していくと、この子は非業の死を遂げるのでは、と悩み苦しんでいた。百合之助さんは、そういう優しくて大きい静かな人。いわゆる腹心のお父さん、革命家たちのお父さんというかね…。そこを今回どう演じていくのか、それが楽しみでもあります。

-井上真央さんをはじめ、杉家の人々を演じる役者さんたちはいかがですか。

  皆さんいいですよ(笑)。なんというか地味さがいい。別に俳優さんが地味だというのではなく、みんな“地味作り”を楽しんでおられるといいますか…。写真が残っているわけでもないので自由に演じられるし、家族の人間関係の機微のようなものは自分たちで作れますから。跳ねっ返りみたいな娘もいるけど、基本的にはとても仲の良い普通の平和な家族です。

-家族全員で松陰を支えていきますが、その辺りはどう思われますか。

  どうなんですかね…。自分たちは決して主義主張をしながら生きてきたわけではないのに、結局そこから吉田松陰という傑物を出してしまった。そこが家族にとっては微妙なところでありますが、結局家族というのはそこに集約していくしかなかったのだと思います。家族全員がいろんな思いを抱えながら、杉家の中で一番優秀な者、つまり松陰をみんなで支えていこうとする。自分たちは食べるものや着る物を切り詰めてでも遊学中の息子に仕送りをしたりする。それが偉いよね。親はやっぱりありがたいですよ。少しでも遠くに行きたい息子に、一歩でも十歩でも行きたいだけ行きなさいと、そういう思いなんでしょうから。

-息子を思う親心は複雑ですね。

  天下国家のためとはいえ、あんなふうに命を投げられてしまうのは親としてどうだったのだろうかと。百合之助さんのお墓参りもしましたが、お父さんの目から見て松陰先生は幸せだったのかなと、そんなことを思いました。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

小瀧望「ファンの皆さまの声に応え続けたい」 舞台「ロックンロール」では「僕たちの芝居とともに、当時のロックミュージックも楽しんで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月30日

 小瀧望が主演する舞台「ロックンロール」が、11月6日から上演される。本作は、世界的な劇作家トム・ストッパードが祖国チェコスロバキアを舞台に、20年以上にわたる歴史のうねりを描きながら、自由の尊さをうたう物語。愛するロックンロールと母親を守 … 続きを読む

佐津川愛美「酒井監督に惚れました(笑)」念願だった酒井麻衣監督との初タッグ『時給三〇〇円の死神』【インタビュー】

映画2026年9月30日

 10月2日から全国公開となる『時給三〇〇円の死神』は、累計発行部数36万部を突破した藤まるの同名小説を原作にしたファンタジーだ。生きる希望を失った大学生・佐倉真司(西畑大吾)が、謎めいた同級生・花森雪希(福本莉子)に誘われ、この世に未練を … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#受験競争だけではない韓国の教育問題、「鉄槌教師」が問う教師の役割

2026年9月29日

 K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む

鈴鹿央士「絶対に映画館で見て損はさせない映画になっています」『藁にもすがる獣たち』【インタビュー】

映画2026年9月29日

 出会うはずのなかった登場人物たちが、1億円をきっかけに複雑に絡み合いながら“金の獣”と化していく数奇な運命を描いた、曽根圭介の同名小説を城定秀夫監督が実写映画化した『藁にもすがる獣たち』が全国公開中。本作で、主人公のチャンネル登録者数“2 … 続きを読む

向井理、演出家・倉持裕と再びタッグ 6人で描き出す会話劇に「戻ってきたな。こういうことがやりたかった」 M&Oplaysプロデュース「ブランク」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月29日

 向井理が主演するM&Oplaysプロデュース「ブランク」が、10月3日から開幕する。本作は、2023年に本多劇場で上演した「リムジン」に続き、向井と倉持裕が再びタッグを組んで贈る新作公演。ある弁護士事務所を舞台に、そこで繰り広げら … 続きを読む

page top