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佐々木蔵之介(C)エンタメOVO
序盤、新左が太吉とひと悶着起こす重要なシーンは、本読みとリハーサルを重ねて本番に臨みました。せりふが京都弁ということもあり、藤原さんは当初、かなり苦戦していましたが、最終的にはきちんと仕上げていって。あのシーンがうまくいったおかげで、その後の2人の関係性ができあがったと思います。さらに、手術シーンの撮影はものすごく寒い時期だったので、裸で横になっていた藤原さんはかなりつらかったはずです。それでも彼は、体に入れ墨のメイクを施す時間も含めて頑張ってくれて。一緒にお芝居したのは初めてですが、本人もとても気持ちのいい好青年でした。
真木さんとは今まで何度か共演していたおかげで、自然体で臨むことができました。家族全員で畑仕事をして、泥まみれになって笑い合ったり、はだしに草履だったので、雪が積もった日には、お互い励ましあったり…。そこから自然に連帯感が生まれ、家族の空気感につながっていきました。
ご覧になる皆さんも、この言葉をご自身の立場に置き換えて受け止めると思いますが、僕も撮影中、その意味をかみ締めていました。その一方で、亡くなった大森監督の思いは、緒方監督や内藤さん、柄本さんたちを通じて僕につながっているわけです。つまり、道は長くとも、思いをつないでいけばたどり着けるゴールもあるのではないかと。だから今度は、その思いがこの映画を通じて他の出演者やスタッフ、観客の皆さんに届き、未来につながってくれたら、と願っています。
子どもの頃は、太秦の映画村によく遊びに行っていました。学生時代は、東映や松竹のスタッフの方々の自主映画制作に参加したりもしました。京都で撮影していたテレビドラマの「必殺」シリーズ(72~)も好きでしたし、先日までNHKのBSで放送していた(主演作の)「浮浪雲」は、子どもの頃、近所の歯医者の待合室にあった原作漫画を楽しく読んでいました。祇園や特産品の西陣織のおかげで日常的に着物を着る方が周囲に多く、着物になじみがあったことも、俳優として時代劇を違和感なく受け止められる理由のひとつだと思います。
僕は元々、現代劇を中心にやってきたので、所作の難しさなどもあり、最初の頃は時代劇に対して腰が引けるところがありました。今もその気持ちが完全に払しょくされたわけではありませんが、最近は「ちょんまげさえ乗せれば、あとは自由」という思いの方が勝っています。
つまり、時代設定さえきちんとしておけば、現代劇では難しい大胆なことが時代劇ならできるんです。現代劇で「そんなことをする人間はいない」と言われそうなことも、時代劇だったら「いたかも」で済みますから。以前、舞台で「マクベス」をやったとき、参考に黒澤明監督の『蜘蛛巣城(くものすじょう)』(57/シェイクスピアの「マクベス」を、日本の戦国時代に置き換えて翻案した時代劇)を見て、「時代劇はこんなこともできるのか!」と感動した覚えがあります。そんなふうに、自由闊達(かったつ)にいろいろなことができるのが、時代劇の面白さではないでしょうか。
「命の尊さ」という大切なテーマはもちろんですが、それに加えて一生懸命生きる人たちの熱い思いと、その一生懸命さからあふれ出る人間味の“おかしさ”を楽しんでいただきたいと思います。今までにないユニークな“医療時代劇”なので、ぜひ劇場でご覧いただけたらうれしいです。
(取材・文・写真/井上健一)

©「幕末ヒポクラテスたち」製作委員会
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