【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#韓国人はなぜ「呼称整理」をするのか、「脱出おひとり島」が映す韓国社会

2026年8月7日 / 13:01

 K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知っているようで知らない韓国を読み解いていく。

▽年齢を隠す恋愛リアリティー番組

 韓国では、個人的に親しくなろうとする相手とは、まず年齢を確かめ合う。年齢が分かった瞬間、敬語を使うかタメ口でいいか、相手を「オッパ(兄さん)」「ヌナ(姉さん)」と呼ぶのかが、自動的に決まるからだ。

 ただし、誤解のないように言っておくと、これはあくまでプライベートの、個人と個人の関係の話である。会社では上司や同僚を「チーム長」「課長」といった肩書きで呼ぶのが普通で、いちいち年齢を確かめたりはしない。外国人も、韓国人とよほど深い関係にならない限り、年齢を聞かれないことが多い。年齢確認が始まるのは、個人として距離を縮めようとするとき——つまり、濃厚なプライベートの関係に入っていくときだ。

 恋愛は、その典型だろう。ただ、ここに恋愛リアリティー番組ならではの悩みが生まれる。出会ってすぐ年齢が分かると、誰がオッパ(兄さん)・ヌナ(姉さん)で誰がトンセン(年下)かという関係性が先に意識され、相手そのものを見る前に、人間関係の型ができてしまいやすいからだ。

 この問題を、ルールで取り除いてしまった番組がある。Netflixの恋愛リアリティー番組「脱出おひとり島」である。男女が「地獄島」と呼ばれる島で共同生活をしながら恋の相手を探すこの番組の最大の特徴は、参加者が互いの年齢と職業を明かしてはいけないというルールだ。年齢による役回りや先入観が生まれる前に、全員を対等な個人のまま恋の土俵に立たせるための装置である。

 年齢を封じられた韓国の男女は、島でどう振る舞うのか。そこには、日本の恋愛リアリティー番組では見られない光景が広がっている。

▽「タメ口にしよう」で始まる特別な関係

 序盤の島では、参加者たちは互いを名前に「シ(〜さん)」や「ニム(〜様)」を付けて呼び、丁寧語で話す。相手が年上か年下か分からない以上、失礼のないように言葉を選ぶしかない。探り合いの時間だ。

 やがて、誰かが切り出す。「タメ口にしよう(マルノッチャ)」。

 韓国語では、敬語からタメ口への切り替えは、なし崩しには起きにくい。誰かが提案し、みなが応じる。そうやって、ようやく互いにタメ口で話せる関係が作られていく。

 日本の視聴者は、ここで少し不思議に思うかもしれない。仲良くなるのに、なぜ「タメ口にしよう」といちいち宣言するのか。日本なら、親しくなれば敬語は自然に抜けていくものだ。だが韓国では、タメ口は宣言と合意を経て使う。この一言があって初めて、島の男女はタメ口で話し始める。

 一方で、島の全員がずっと年齢を伏せたままでいるわけではない。デートの権利を勝ち取ったカップルは「天国島」へ行き、そこで互いの年齢を知ることができる。その瞬間、男性が年上なら女性は「オッパ(兄さん)」、逆に女性が年上なら男性は「ヌナ(姉さん)」と呼び始める。こうして地獄島でも、年齢を前提とした人間関係が少しずつ姿を現すようになる。

 
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