【Kカルチャーの視点】家族の情緒が国境を越える、俳優ムン・ソリが語る「おつかれさま」ヒットの理由

2025年12月26日 / 13:00

 ▽家族を世話する母 

  ムン・ソリは、「クイーンメーカー」(23年)や「私たちの人生レース」(同)のように、女性の主体性や自分らしさを打ち出す役を担い、エンパワーメントの姿を体現してきた。だが「おつかれさま」では、“肩書きのない母”を真正面から演じた。 

 -いわゆる普通の母親役でした。 

 この作品に出るまでは、子どもや夫の世話をするだけの母親役って、正直に答えると「つまらない」と思っていたんです。でもこの作品に出ることで、そういうのって偏見だったんだ、そうでない作品もあるんだって。物語全体が面白ければ、どんな役でも面白い。あるいは、そういう役でも別の物語を作ることができる。自分の役柄というより、物語全体の力を信じていました。 

-実際の撮影は? 

 母親役は、単に座って相手と話をすることがないんです。常に手を動かしている。現場に行く時は、セリフを覚えるだけじゃなくて、そこでする家事をうまくこなさなきゃいけませんでした。のり巻きを巻く、チヂミを焼く、布団を敷く、下駄箱を片付ける。さらにはイカやホヤをさばく。子どもたちはソファーやベッドに寝転がって、あるいは食卓で渡された食べ物を食べながら話すだけだけど、母親はずっと家事をしながら。前のテイクとのつなぎってあるじゃないですか。例えば、セリフを言い始めた時にのり巻きを切り始めたなら、次のカットも動作をそろえないといけない。そういったことが大変でした。 

 それから、撮影スタッフって家事の経験が少ない方も多いんです。なので、キッチンにセットされた小道具の配置とか布団の敷き方が気に入らなくて。私は子育ても家事もそれなりに経験があるので、小言を言ってしまいました(笑)。のり巻きを巻く時にごま油はここに置く、布団はこう畳んだほうがきれいだとか。そういったことが、エスンを演じる上ではとても重要でした。 

-エスンはしっかり者の長女で文学少女。ご本人との共通点はありますか? 

 私も長女ですし、子どもの頃から作家になりたくて、文学は私にとって唯一の安息所でした。 

-そうだったんですね。大学生に成長した娘グムミョン(IU扮)とも共通項がありそうです。 

 私はグムミョンより少し下の世代(ムン・ソリは1974年生まれ、グムミョンは1968年生まれの設定)ですが、私も大学生の頃は家庭教師をしていましたし、両親に金銭的に支えられながら大学を卒業したのも同じです。卒業後に「映画界を目指す」と言って両親を困らせたところも。状況そのものは違っても、いろんな部分で、抱く感情はすごく似ていたなと思います。 


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