<ライブレポート>SIRUP×Leinaがボーダレスな空間で表現した社会への希望【Grooving Night Premium】

2025年12月12日 / 17:30

 『音楽・社会・人』をつなぐ音楽イベント【Grooving Night Premium】が11月30日にビルボードライブ大阪にて開催され、ホストアーティストのSIRUP、そしてゲストにシンガーソングライターのLeinaが登場した。

 今回で6回目を迎える【Grooving Night】は、“寝る前に、グルーヴ溢れる夜を過ごそう”をコンセプトに、夜のくつろいだ部屋をイメージしたステージで、ホストをつとめるSIRUPとゲストアーティストがライブやトーク、そしてその日限りのセッションを繰り広げる音楽イベント。これまでに、iri、OKAMOTO’S、TENDRE、Ayumu Imazu、SKY-HIがゲスト出演してきたが、特徴的なのは、普段ライブでは語られないアーティストが感じる“社会への想い”を共有する貴重なイベントであるということ。そして視聴覚障害者向けの鑑賞サポートやプライドセンター大阪のブース出展をはじめとした、さまざまな社会的な活動や取り組みも話題となっている。

 今回は、ビルボードライブ大阪で初の開催となった。ラグジュアリーな空間のなかに、夜のリラックスムードが漂うステージには、ミニマムにセットされた楽器たちと、中央にはハイチェアが一つ並び、観客はその時を待つ。

 そしてイベントホストのSIRUPが開幕を告げると、黒を基調としたパンツスーツに身を包んだLeinaが登場。横山裕章(Key.)とエリアス・チアゴ(Gt.)が静かに「浴槽」を奏で、Leinaの歌声が重なると空気が一変、その透明感と包容力に会場が惹き込まれていった。今回が本人にとって初のツーマンということもあり緊張していると語っていたが、「今日は“音と声”でみんなとつながれたらいいなと思っています。」と、このイベントに特別な想いが感じられる。続く「恋に落ちるのは簡単で」では、客席から思わず「最高!」と声が漏れるシーンに笑顔で答える場面も。バイラルヒットとなった「どうでもいい話がしたい」「うたたね」では、ボーダレスな空間を活かし、クラップやコール&レスポンスを交えパフォーマンスした。

 そして印象的だったのは、最後の曲「Blue age」。ステージに1人残り、語り出したのは、メジャーデビュー1作目で“自分の生き様”をリアルに生々しく描いた、ということ。幼い頃“色々とあった”と語る家庭環境の中で、経験したこと感じたことを、20歳のLeinaがストレートに表現しているこの曲は、【Grooving Night】が掲げるテーマにもどこか疎通する。「“溺れるように生きる”がテーマになったこの曲を同じ境遇の人も、そうでない人も、溺れるように息をしているあなたに届いてほしい。」そう話し、弾き語りをする彼女。儚くも力強いメッセージをこの瞬間みんなで分かち合った気がした。
 
 「Leinaちゃん、最高でしたね……」と語りながら登場したSIRUPは、井上惇志(Key.)、HISA(Gt.)のラグジュアリーなグルーヴにそのまま乗り込み「GAME OVER」へ。1曲目にして“グルーヴ溢れる空間”を創り上げるのは、さすが【Grooving Night】のホストである。そして粋なギターのカッティングで始まった「LOCATION」では、 アコースティックならではの一体感がなんとも心地いい。

 「今日は来て下ってありがとうございます。近いですね、非常に近い!」とビルボードライブ特有の距離感を改めて実感する。また、HISAがギターを持たずにステージに登壇したというハプニングを、ステージ袖で見ていたSIRUPが、「そんなことあります!? HISAくん(笑)」と突っ込み会場を沸かせた。

 続いて「Need You Bad」「KIRA KIRA」ではリズミカルな曲でクラップを誘い、観客を引き寄せる。「やっぱアコースティックはいいですね。みんなの温度感がダイレクトに届く感じがあるから……。」と、その言葉には既にステージと客席との境界線がないことを意味しており、「LOOP」ではSIRUPが会場に身を委ねる姿も印象的だった。

 その後SIRUP×ハード・ライフのコラボ曲「RENDEZVOUS」をソロVer.でパフォーマンス。そして最後に「SWIM」を披露し、会場を多幸感で埋め尽くすと一旦ステージを後にした。

 トークパートでは、ステージ上の“くつろいだ部屋”にアーティストがパジャマ姿で登場する。SIRUPが「修学旅行の寝室みたいな感じで、ゆったりとしながら“ステージと客席”ではなくて、みんなという括りでお話しできたらと思います。」と話すと、再びLeinaを呼び込む。パジャマ姿に少し照れた様子のLeinaもリラックスした様子で終始トークも弾んだ。

 今回もトークテーマが用意され、まずは会場からの『30年先もいきいきと生きるために必要なことは?』という質問に「(SIRUP)俺は、大事な社会通念と大事ではない社会通念があると思っていて、年齢や性別がどうこうと言うのは、不必要だと思ってる。みんなそれぞれの30年後があると思うけど、沢山の人に出会っているなかで、自分のやりたいことを偏見なく自由に生きている人は、とてもいきいきと生きているイメージがありますね。」、「(Leina)私は、音楽と出会えて真っ直ぐ生きてきたけど、今の若い世代は漠然とした不安を抱えていて、社会的問題とか色々な理由で挑戦出来なくなっている。もっと選択肢が多い世の中になって、若い人たちもボーダレスな考えが出来れば、未来を明るく想像しやすくなるのではと思っています。」と語った。

 続いて、『お互いの曲の中で気になる歌詞は?』と言う質問に「(Leina)『LOOP』の<君の小指のネイルだけにある アートの意味を考えてしまう>と言う歌詞にときめいていて、象徴的な言葉ではなく情景描写で“好き”を表すってすごくないですか!?」と話すと「(SIRUP)俺は『Blue age』の<生まれるのに 選択肢はない>かな。Leinaちゃんのバックボーンとかリアルな歌詞が色々あるからこそ、意味があって……。さっきのトークテーマにもつながるけど、Leinaちゃんが色々考えているからこそ、この歌詞の深さが伝わると思って選びました。」と答えた。

 そして最後に、この日だけのスペシャルセッションが披露された。今回はLeinaが選曲し、SIRUPの歌声からインスピレーションを受けたというアデルの「Hello」を、HISA(Gt.)を呼び込みパフォーマンス。優しくも力強く伸びていく2人の歌声に包まれた瞬間だった。

 ミュージシャンとして社会とどうつながりたいか……、このイベントがまさにそうだと話す2人。音楽の場では来た人が平等に楽しめるべきという思いとともに、これからも【Grooving Night】が音楽の力で、人と社会をつなぐ希望であってほしいと願う。
 
 なお本イベントの模様が、本日12月12日深夜24:35からの読売テレビ『音道楽√(ROOT)』にてオンエア決定。番組では、ライブの裏側やSIRUPとLeinaへのインタビューも公開されるという。

TEXT:森島良子
PHOTO:渡邉一生

◎公演情報
【Grooving Night Premium in Billboard Live OSAKA】
2025年11月30日(日)大阪・ビルボードライブ大阪

◎番組情報
読売テレビ『音道楽√(ROOT)』
2025年12月12日(金)深夜24:35放送
関西ローカル、TVer配信あり
https://www.ytv.co.jp/otodoraku_root/


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