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ただ、大半は史実通りですが、(小田)新之助(井之脇海)とふく(=うつせみ/小野花梨)ととよ坊の一家、序盤に登場した蔦重の恩人の花魁・朝顔(愛希れいか)など、一部に私が創作したオリジナルキャラもいます。というのも、当時の飢饉(ききん)や天災の被害の大きさを伝えるとき、死体の山で語られることが多いのですが、それを見ても、いまひとつ胸に迫ってこないんですよね。それは多分、相手が知らない人だからだろうなと。そこで、今回はその人の人生を語った上で犠牲になってもらおうと。
新之助も、あの打ち壊しにはリーダーがいたという説があり、あののぼりも実際に残っているんです。そのリーダーを書きたいと思って考えたのが、新之助でした。だから、死ぬことは最初から決まっていたので、新之助やふくに関しては、皆さんから怒られることが大事なんだろうなとは思っていました。
「三浦庄司(原田泰造)黒幕説」「三浦スパイ説」が出てきたときは驚きました。全く頭になかったことだったので、皆さんの鋭い考察に驚くと同時に、「その手があったか! でも、もう後戻りできない!」と(笑)。それくらい真剣に見てくださっていることがうれしく、ありがたかったです。
横浜さんには、むき出しの自分をゴロンと差し出すような「捨て身」の印象があり、それは最初から最後まで変わりませんでした。ご本人は、それほどじょう舌な方ではないと思うので、あそこまでおしゃべりな役を生きるのは、大変だったと思います。せりふの量も多いので、大きな負担をかけたでしょうし。最後にお会いしたときは、本当にやせていましたから。そういう意味では、“求道者”という言葉がぴったりな方です。
求道者のような方に対して、ご本人に寄せるのも失礼かと思い、そういう書き方は一切しませんでした。ただ、ときどき横浜さんから台本について質問が来ることはありました。例えば、「蔦重はなぜ日本橋に行こうと思ったのでしょうか。僕なら行かない気がします」といった感じで。そういうときは、一緒に答えを考えたりして。だから、きちんと筋が通るように書くことは心掛けました。その点、横浜さんは心の動きを大切にして、外側からではなく、内側から役を作っていく方なのでしょうね。
きっと、陽気な江戸っ子の部分に関しても、ものすごく考えて演じてくださったんだと思います。それこそ、「陽気な江戸っ子を求道する」というか。変顔や平賀源内のまねなど、私が期待した以上のこともしてくださいましたし。「そこまでやっていただき、ありがとうございます」という気持ちでテレビを見ていました。
蔦重は、さまざまな功績を残した人です。黄表紙や錦絵の流行を作ったこともちろん、流通網を整え、それを江戸から地方に広めていったのも、彼だと言われていますし。そういう意味では、広く世の中に笑いを届けた人で、それはとても尊いことだったのではないかと。笑いにはある種、不謹慎な部分もあるので、今もそうですが、世の中がしんどくなってくると、心の中では笑っても、おおっぴらには笑えない、という場面が生活の中でたくさん出てくる気がするんです。そんな時代に、財産を召し上げられても、仲間が死んでも、ふざけきった蔦重はあっぱれだなと。それはそれで、一つの立派な生き方だと思っています。
(取材・文/井上健一)

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