「甲斐監督の心の中にある世界観を、1人でも多くの人と共有したい」永瀬正敏『徒花 Adabana』【インタビュー】

2024年10月19日 / 12:05

-今回は、ポスターなどの写真を撮るカメラマンとしても参加したんですよね。どんな気持ちでしたか。

 めちゃくちゃうれしかったです。以前、行定勲監督の作品でポスターと写真集を作るというので写真を撮ったことがありました。その後、正式にカメラマンとしてオファーを頂いた作品があったんですけど、その作品の監督がお亡くなりになってしまって実現しなかったんです。なので、今回はもうとてもうれしくて。俳優としてよりもカメラマンとして参加した日数の方が多いぐらいでした。監督が書かれた映画のイメージ画を最初に見せていただいて、じっくりお話を聞かせていただいたのは非常にうれしかったです。そこから受け取るものはとても多かったですし、すごく助けられながら写真を撮らせてもらいました。

-永瀬さんの中で、カメラマンというのは俳優とまた違った意味での表現方法として大きなものなのですか。

 とても大きいです。もともとは祖父が写真館をやっていたんです。写真館のカメラマンなので写真家ではなく、写真師なんですが。ある時、祖父が書いた写真に関する研究ノートや種板って言うんですけど、ガラスに焼き付けたネガがいっぱい出てきて…。もし戦争や戦後の混乱がなかったら、祖父はちゃんと写真をやりたかったんだろうなということに気付きました。祖父が真剣に写真と向き合っていたことを知ってから、より人物が撮りたくなりました。だから、僕が撮るというよりも、祖父と一緒にシャッターを切っているような感覚なんです。写真を撮る時は、常に祖父が守ってくれているような気がします。

-今回の写真に込めた意図というか、どういうコンセプトでしたか。

 少し早めに入ってロケハンをさせてもらった時に、ここで撮影をするという場所のガラスの映り込みがすごく良かったんです。それで、外の景色が顔や体にかかったりする映り込みによって表現できる二面性、“自分とソレ”という関係性が表せるんじゃないかと、この映画のテーマとつながると思って撮らせてもらいました。他にもいろいろ撮りましたが、その中の1つをデザイナーさんに選んでいただいたということです。

-完成作を見た印象は?

 まずは多くの方に見ていただきたいと思いました。そして欲張りですが、監督の次の作品も見たくなりました。音楽も美術も衣装も、ヘアメークも含めて細部にこだわって妥協されてない。それがこの作品の中できちんと結実して主題を表す一部になっている、やっぱりすごいなと思いました。甲斐監督の心の中にある世界観を、1人でも多くの人と共有したいという思いがあるので、どんどん広がっていってほしいですし、すぐにでも次の新作に入ってほしいです。

-そうしたら、声だけでもいいからまた出るんですよね。

 もちろんです。お声を掛けていただければ喜んでうかがいますし、写真だけだと言われても喜んで(笑)。

-最後に読者に向けて、見どころも含めて、永瀬さんなりのアピールを。

 新くんと水原さんがすごいチャレンジをしている作品ですし、監督が言いたいいろんなテーマがこの作品の中に含まれているので、それを受け取っていただけるんじゃないかと思います。監督が最初のアイデアを考えたのは随分前で、その後、少子化問題やパンデミックがあって、そうしたいろんなものを含めての今という意味では、先見の明があった作品でもあると思います。まずは劇場に来ていただいて、体感していただきたいと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2024「徒花-ADABANA-」製作委員会 / DISSIDENZ

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

-お芝居に悩んだり、難しさを感じたりすることはありませんでしたか。 前田 たくさんあります。でもその都度、松井監督と相談しながら進めていきました。迷ったときは、松井監督を信じればいい、という信頼関係が出来上がっていたので。 窪塚 松井監督は … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

-ルンメイさん、夫・賢治役の西島秀俊さんの印象はいかがでしたか。 ルンメイ 今回西島さんと一緒にお仕事ができたことはとても光栄でした。西島さんは経験豊かな方なので、私は現場でとても安心して演技をすることができました。西島さんがいろんなエネル … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(3)無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力

舞台・ミュージカル2025年9月12日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む

北村匠海 連続テレビ小説「あんぱん」は「とても大きな財産になりました」【インタビュー】

ドラマ2025年9月12日

-小学生の頃、絵画教室に通われていたそうですが、演じる上で役立った部分はありますか。  僕は子どもの頃から、絵画教室に通ったり、自宅では粘土で架空のモンスターを作ったりしていました。そういう創作を楽しむ部分は、嵩に通じるものがありました。前 … 続きを読む

中山優馬「僕にとっての“希望”」 舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~の再始動で見せるきらめき【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月11日

-なるほど。そうして前に進んだ先に、どんな未来をイメージしていますか。  先のことはあまり考えていないです。友達たちが家を建てたり、子どもが生まれたりしているのを見ると、そうした未来を自分が持ったらどうなるんだろうなと考えることはありますが … 続きを読む

Willfriends

page top