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杉田 僕は、マタギについては今回現地で少し触れたぐらいなんですけど、熊の皮をお尻に敷くものにしたり、内臓を薬にしたり、肉はちゃんと食べて…。本当に何も無駄にすることなく全部使っていると知りました。すごく熊に対して敬意があるというか、共存しているという印象を受けました。
寛一郎 その文化を外から見た人の印象と、内にいる人の感覚というのは全く違うと思います。僕は撮影の1年前に実際に二つの猟友会の方々と会って一緒に山に登ったんです。その年の最後の熊狩りに同行して、結局熊は見つからなかったんですけど、その後で一緒に食事をして、熊を撃つ感覚とはどういうものなのかを聞いてみました。要するに、僕らとしては、熊狩りというのは神秘的で、熊と共存し、熊に祈りをささげて…と、すごく高尚なものだと思っていたんです。でも、マタギの人は「熊をぶて(撃て)りゃいい」と。それはただ熊を殺したいとかではなく、それすらも当たり前のことで、彼らは熊を撃つことだけが楽しみなんだと。僕もマタギの意味や意義は調べましたが、受け継いでいる人たちはそこではなく、本能的にそれが習慣となっているというギャップは感じました。結局、マタギを経験して自然と共存する、のようなイメージは、もしかしたら外から見た人の感想で、そういうことも含めて、実際にやっている人たちと、自分も含めて外から見た感じとでは違うのではということに気付きました。
杉田 さっきも言いましたが、現場までみんなで歩いたりとかして、改めてみんなで作り上げている感じがすごく味わえましたし、映画を撮るのって楽しいなというのは再確認できました。雪山の中で撮影をするというのもなかなかないので、それはすごくいい経験だったと思います。
寛一郎 これをやったら、そんじょそこらの現場じゃビビらないんじゃないですか。やっぱり雪山って本当に危ない場所ですし。僕らは、そんなに危ない場所には行っていないですけど、何があるか分からない場所ですから。でも、そういった中でも、東京で撮影している時とは違う自然のパワーをもらえました。ただ、この撮影で感じられたことが血となり肉となって生きてくるのはすぐではない気がします。それが5年後になるかもしれないけれど、あの時はああだったかもしれないな、あの映画がそうだったんだろうなって思うことは、僕にも彼にも多分あると思います。
杉田 がつんと自然を感じてもらって、細かく言えばいろいろと思うこともあるでしょうけど、大きなスクリーンでこの大自然を楽しんでもらえたらいいなと思います。
寛一郎 好き嫌いが分かれる映画かなとは思います。でも、この映画に懐かしさを感じてくれる人もいると思います。技術的にも、カメラはほとんど動かず、フィックスで撮っていて、 せりふも少なくて、ただ歩くシーンが多くて…。そんなところに、いい時代の邦画の雰囲気を少し感じてもらえるんじゃないかなと。そういうことも含めて、映画の内容どうこうというよりも、何かその匂いを感じていただけたらなと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)
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