中川晃教&相葉裕樹&木内健人、初演から「どう“進化”させていくのか」 ミュージカル「CROSS ROAD」2年ぶりの再演に挑む【インタビュー】

2024年4月2日 / 08:00

-ところで、皆さんも俳優というクリエーティブな仕事に就いていますが、パガニーニに共感できるところはありましたか。

相葉 悪魔と血の契約をしたことによって、命と引き換えにすばらしい音楽を100万曲弾けるという物語ですが、芸術家としてもっと高みにいきたいのにいけないというもどかしさや、そこで契約をしてしまう弱さは理解できます。そうした人間の脆さや弱さには共感できるところはありました。

中川 パガニーニは人生の岐路に立った時、悪魔との契約を選びますが、人生の岐路は誰にでも訪れるものですよね。そうしたとき、どれだけの覚悟を持って彼はその道を選んだのだろうかと想像すると、とても共感できるところがあります。きっとそれだけ大きな覚悟があったのだと思います。一方で、彼は契約の最後にアムドゥスキアスを激昂させるような終わり方をするんですよ。彼は、暗い森の中でも恐れずにメロディーだけを道しるべに歩んできた。そんな音楽に溢れていた人生を歩んでいましたが、そうした人生の中で、母親が彼の道しるべになっていました。彼は、もしかしたら悪魔との契約を悔やんだこともあったかもしれないけれども、これでよかったんだと自分の中の決着をつけるために、あの結末を選んだ。天才パガニーニという呼び名からは想像もつかない人間味のある姿も見えて、共感できるところも多いと思いました。

木内 彼は演奏家として、自分が作る音楽と向き合い、僕らは俳優として演劇に向き合っていますが、僕自身も才能がないんじゃないかと思うことはこれまでもたくさんありました。そう思うたびに、自分の戦う姿勢が足りないんじゃないか、自分の努力が足りないんじゃないかと、葛藤を抱えてきましたが、それはきっと彼も同じだと思います。僕にはまだ悪魔は来ていないので(笑)、運命の十字路に立っているのかどうか分かりませんが、これまでもさまざまなターニングポイントがあり、たくさんの方と出会って、人生に悪戦苦闘しながらも一生懸命生きています。芸術に向き合いながら生きていこうと決めたという部分はすごくかっこいいと思いますし、共感できるところでもあります。

-では、もし、皆さんの目の前に悪魔が現れて契約を持ちかけられたら契約しますか。

相葉 初演のときは、迷わず契約すると思っていました(笑)。それで自分の名が残るならいいとライトに考えていたのですが、よくよく考えてみると芸術家としてのゴールを、自分の実力ではなく付加的な能力によって達成してしまうと、その時点で人間ではなくなってしまうと思うようになりました。それに、学んだり努力したりしなくなったり、もがいたり戦うことをしなくなることは幸せなのかとも考えてしまって。なので、今だったらしないと思います。

中川 僕は、悪魔が契約を持ちかけてきた時点で選ばれしものだと感じて喜ぶような気がします。もちろん、その内容は重要だと思いますが。この物語のように命だった場合、10代の頃だったら迷わずにいけたかもしれませんね。でも、今は少し違います。なので、無責任には言えませんが、自分が本当に突き詰めていきたいものに出会ってしまった時は突き進むかもしれません。さまざまな許しを得て、自分自身もそれに納得させられるだけの説得力が自分の中に生まれてくるなら、怖いけれども、自分で決断したことを最後までやり通そうと思うかもしれませんね。それを、悪魔との契約ととるのか、自分との契約ととるのかは、自分次第だと思います。

木内 お二人の話を聞いていても悩ましいところですよね(笑)。僕は、その代償に命が関わってくるなら、契約はしないかな。命より大事なものはないと思うので。たとえ、今世紀最大の名誉だと呼ばれるようになったとしても、3年後に死ぬと言われたらやらないです。

中川 でも、役者がみんなを熱狂させるような役に出会ったとして、その役に入り込んで熱演しているときは、ある意味で、命を削っているという表現になりませんか?

木内 なりますね。

中川 それでも命を惜しいと思っているということは、あなたは芝居に対して…。

木内 ちょっと待って(笑)。それはまた話が変わってくるから(笑)。

全員 あはは(笑)。

相葉 僕は身の丈以上のことを求めてはいけないと思う。自分の中の限界を突き詰めていくのが役者だと思っているので、それを超えることはできないものなのかもしれないなと思います。

中川 真面目(笑)!

木内 相葉裕樹、木内健人だからこそできるものがあるからね。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 ミュージカル「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~」は、4月22日~5月12日に都内・日比谷シアタークリエで上演。

ミュージカル「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~」

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井之脇海「ものすごい達成感がありました」蔦重に見守られながら迎えた新之助の最期【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年9月4日

-新之助の親友ともいえる蔦重を演じた横浜流星さんの印象はいかがでしたか。  横浜さんほどストイックな座長は見たことがありません。共演は今回が初めてですが、実は横浜さんとは10年位前からオーディションでよく見かけていて、ワークショップでも一緒 … 続きを読む

坂東龍汰「この映画は絶対に映画館で見てほしいです。特にドラゴンライドのシーンは圧巻です」『ヒックとドラゴン』【インタビュー】

映画2025年9月4日

-吹き替えで難しかったところと楽しかったところはありましたか。  初めてのことだったので、付いていくのに必死な部分もありましたし、基本的には全てが難しかったのですが、それと同じぐらいの楽しさもありました。自分が当てた声を見たり聞いたりする時 … 続きを読む

小池栄子、45歳を目前に控えて見据える未来「小池栄子が出ているから見てみようかなと思ってもらえる存在でいたい」 劇団☆新感線「爆烈忠臣蔵〜桜吹雪 THUNDERSTRUCK」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月3日

-劇団☆新感線は45周年を迎えますが、小池さんも今年、45歳になります。40代になって変わったところはありましたか。  みんな同じだと思いますが、疲れが取れない(笑)。気持ちだけではどうにもいかないことがあるなと思いました。女性の場合、更年 … 続きを読む

間宮祥太朗「周囲に合わせようとせず、自分のペースを保つことを考えていた」“自分らしさ”の大切さを描くアニメ映画に声の出演『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』【インタビュー】

映画2025年9月2日

-確かにその通りですね。  そういう意味では、その両方が真実でもあると思います。その中で自分でどうにかできるのは、「自分の考える自分らしさ」なのかなと。自分が「こうしたい」「こういうことはしたくない」と考えることが、自然と「自分らしさ」につ … 続きを読む

【映画コラム】夏の日の少年たちが頑張る映画『ベスト・キッド:レジェンズ』『蔵のある街』『海辺へ行く道』

映画2025年9月1日

『蔵のある街』(8月22日公開)  岡山県倉敷市に住む高校生の蒼(山時聡真)と祈一(櫻井健人)と紅子(中島瑠菜)は、小学校からの幼なじみ。ある日、蒼と祈一は、紅子の兄で自閉スペクトラム症のきょんくん(堀家一希)が神社の大木に登って叫んでいる … 続きを読む

Willfriends

page top