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映像の方は、まだ経験が少ないので、必死にやっています。ただ、座組みに恵まれているのか、映像界もすごくクリエーティブなものを作ろうとする力が強いことを感じていて、僕はそれがすごく好きです。色々なことを試してみたり、僕から出てくるものに対してきちんと意見を交わしてくれたりする世界が好きですね。
舞台と映像で演じ分ける方も結構いらっしゃいますが、僕はそれはしていないんですよ。フォーカスやベクトルの強弱の違いだと思うので、演技法を変えるということは、今のとこあまりしていません。ただ、映像は舞台と違って最初から最後まで順番に演じるわけではないので、温度を失わないようにとは思っています。僕は集中力がうまく使える方ではないので、舞台よりもしっかりと、そのシーンの前の心情に体を慣らして作るようにしています。
そうですね。小さい頃からコアな映画を父親と一緒に見ていたので、映画は好きでした。それから、人間模様の最終形態は、舞台よりも映像のような気がしています。寄った映像で見せることでしか分からないものがあるじゃないですか。カット割りをバンバン入れることによって軸が飛んで、たくさんの情報量を提供できるのも映像だからできることだと思います。なので、そうした世界で一つの役を演じ切るということには興味がありましたし、やってみたらやっぱり面白いと思っています。
自分は間違ってなかったんだなとは感じています。日本の舞台界は、演技方法がバラバラなんですよ。歌舞伎の人がいたりとか、2.5次元からきている人もいたり、ミュージカルをやってきた人がいたり、色々な人がいる。それが、一斉に集まって、ごった煮のように演技をして、みんな傷つけないようにリスペクトしたふりをしている。けれども、海外では、全員が分かるエチュードがあって、共通した方法を持っている。日本の場合は、そうしたエチュードをみんなが知らないからぐちゃぐちゃな状態で、自分が否定されたり、自分が違うのかなと思うことも多かったんです。そんな中、映像で自分の完成した演技を見たり、監督と話していくうちに、舞台でやっているものがこうして使えるのだから、自分は間違った演技方法ではなかったのかなと思えるようになりました。それに、映像に出ることで1発の集中力は出たのかなとも思います。その集中力は、舞台でも使えるのではないかなと思います。
僕はあまり野望というものがなく、ただ、ひたすら演技がうまくなりたいだけなんです。うまい俳優、いい俳優になりたいという思いが強いので、そこに向かって精進するしかないと思っています。それから、45歳になり、そろそろ未来を担う若手たちの環境を考えていかないといけないなと思います。舞台界も色々な問題があります。例えば働く環境もそうですが、少しでも呼びかけをして環境を改善していくことが大事だなと思います。僕たちが頑張ってきたんだから同じ道を通れというような大人にはなりたくない。少しでもいい環境で渡してあげたいと考えています。
9.11の裏で起きた出来事を描いた物語ですが、われわれにとっての3.11や数々の災害、困難が起こった時も同じことだと思います。自分はどこにいればいいのか分からなくなった時、周りの人たちが無条件でここにいていいと言ってくれ、寄り添ってくれる人がいるかもしれない。今はSNS上や学校などでも小さなテロやいじめ、正義を振りかざした攻撃が日々、行われていますが、攻撃する側になるのか、それとも寄り添う側になるのかを考えさせられるミュージカルになっていると思います。
(取材・文・写真/嶋田真己)
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