吉原光夫「ひたすら演技がうまくなりたいだけ」 演技への真摯な思いを持って新たなミュージカルへ挑む【インタビュー】

2024年2月14日 / 13:24

 連続テレビ小説「エール」では岩城新平役を演じ注目を集め、大河ドラマ「どうする家康」の柴田勝家役、「VIVANT」のピヨ役などでも存在感を発揮している吉原光夫。1999年から2007年まで劇団四季で活躍した後も、舞台、ミュージカルを中心に数多くの作品に出演。ミュージカル「レ・ミゼラブル」では主演のジャン・バルジャンを6度にわたって務めるなど、その実力は折り紙付きだ。そんな吉原が出演するブロードウェイミュージカル「カム フロム アウェイ」が3月7日から日生劇場で上演される。本作は、2001年9月11日の同時多発テロの裏で起きた驚くべき実話を基にした、奇跡の物語だ。吉原に稽古の様子や本作の見どころなどを聞いた。

吉原光夫(C)エンタメOVO

 

-オファーを受けて、最初に脚本を読んだときの感想を教えてください。

 最初に声かけてもらったときには、この作品知らなかったので、なんのこっちゃという感じでした。ただ、すでに何人か決定されているキャストの方がいらっしゃったので、こんな方たちとやれるんだということに驚いた覚えがあります。その後、海外でよく観劇している友人にも話を聞いたら、みんな知っていたんですよ。それで、どんな作品なんだろうと自分でも調べたら、9.11の話というので、日本で、日本人で上演するのは難しいのかもしれないですが、その山を乗り越えてでも表現したらすごい世界が待っているんだろうなと思いました。

-そうした実話を基にした作品を上演するということに対しては、どんな思いがありますか。

 この作品だけでなく、これまでにもそうした作品には出演したことがあるのですが、非常にセンシティブに、慎重にやっていかなくてはいけないといつも思っています。正直にいうと、今回、ニューヨークに住んでいらっしゃる演出家の方々がこの作品のために来日されていて、当時の話を色々としてくださるんですが、それを聞いても僕たちの感覚とはまったく違うなと感じています。その出来事がアメリカ人もしくはその関係者の人たちにどういう影響を与えたのかということを伝えるために、工夫をしていかなくてはいけないなと思っています。

-今回は、兼役で何役も演じられるということですが、メインで演じるオズという役柄について教えてください。

 今回は、全員がメインキャストですが、濱田めぐみさんが演じるビバリーを中心に物語は進んでいきます。その中で、オズは、ガンダーという町の、おそらくはお調子者の警察官という人物です。町の色彩を出す上では重要な役なのかなと感じています。今(取材当時)、稽古が始まって2週間ほどですが、とにかく大変なんですよ。インタビューで稽古が大変だという話をすることは結構あると思いますが、かつての俳優さんたちが大変だと言ってきたレベルとは違う大変さで…。立ち位置や動作の指定が細かくて、それを全員が覚えなくてはいけない。僕は劇団四季にいたので慣れている方だと思いますが、慣れていても苦しくなるほど大変なんです。なので、このキャラクターがどうかというところまでは、まだいけていないというのが正直なところです。ただ、ガンダーという雄大な厳しい大地のもとに育った、ちょっと天然な優しい人たちの表現として、オズという役柄は必要な要素なのかなと思います。

-ミュージカル界を代表するキャストがそろっている本作ですが稽古場の雰囲気はいかがですか。

 めちゃくちゃいいですよ。とにかく、この作品は団結しないとできないので。例えば、自分たちでイスを動かさなければいけないのですが、一つでも置き間違えたら誰かが座れなくなってしまうので、みんな常に周りを気遣っています。今まで自分のことだけ考えてきた俳優を集めて他人のことを考えさせるという、ある意味リハビリみたいなものをしている気がします(笑)。

-共演者の方々の印象は?

 皆さん、色々な座組を経験、腹が座っているなと感じます。劇団四季の先輩で、僕が入団した頃からトップを走っていて、今でもトップを走り続けているハマメグ(濱田)さんと、久しぶりにガッツリと同じ作品に携われるので、それも感慨深いです。培ってきたものや経験してきたものが、彼女をどんどん彩っていろいろな役に導いている。日本のミュージカル女優の形を作ってきた人なんだなと、改めて感じています。浦井(健治)くんとは、稽古場で席が隣です。稽古が始まる前は、浦井くんと仲良くなれるはずはないと思っていましたが、今、すごく仲いいです。

 
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