「この映画のスケールの大きさを劇場で見てほしい」 高良健吾『罪と悪』【インタビュー】

2024年2月1日 / 11:29

-春のゆがみという点では、彼にはいろいろな点で二面性がありますが、演じる上で、何か気を付けたところはありますか。

 春の二面性というよりも、あれが普通というか、春のようなグレーな人たちって、常にオラついているわけではないし、常に怖いわけでもなくて、家庭ではすごく柔らかかったり、子どもには絶対にそういうところは見せなかったりします。ただ、ここだけはという時に出すんですね。僕はそれがしたかったので、常にピリピリしている春ではありたくないと思いました。事務所に刑事になった晃が来て、尋問のようなことをされたところと、暴力団の清水(村上淳さん)たちが来るところだけは出していいのかなと思っていました。違う出し方としては、仲間に闇の仕事をさせている時に、春はお店で笑いながらレジを打っているところ。逆にそっちの方が怖いし、広がると思いました。

-この映画は、監督との縁もあったと思いますが、高良さん自身にとっては、どういう位置付けのものになりますか。

 まず、助監督の時代から知っている方が、こうして映画を撮れたということが奇跡だと思います。齊藤さんの頭の中にあったアイデアが脚本になり、映画になり、ここまでたどり着いたということに本当に感動します。そして、10代の頃から一緒にオーディションを受けていた大東くんと石田くんと一緒にやれたことも併せて、僕にとってこの映画は奇跡だらけの作品です。僕自身も、久しぶりにとんがった、ソリッドなものを、今の自分でやれたという意味ですごく重要な作品です。僕が好きな映画の条件は、スケールがでかいことが重要なのです。この映画はスケールの大きなものになるという予感がしたので、完成して感動しています。それは、「あのシーンをそう描くのか」というスケールの大きさだったり、セオリー通りではないことであったり、齊藤さんからしか生まれないものだったり、そういうものが積み重なったものが、この映画のスケールの大きさだと思います。

-最後に、これから映画を見る観客に向けて、アピールも含めて一言お願いします。

 この映画のスケールの大きさを劇場でご覧いただきたいです。「罪と悪」というタイトルだからこそ、何が罪で何が悪なのかを考えて見ていただけるとありがたいです。僕は悪人というのはいないと思っていますが、この映画に出てくる人たちは罪人だらけです。それぞれの立場で犯した罪が、悪に近いものになっていると思います。この映画の大人たちは、あったことをなかったことにする人たちばかりですが、なかったことにされた人たちや出来事が、時間をかけてどう変化していくのか。そのさまを、このスケールの大きな映画でぜひご覧ください。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2023「罪と悪」製作委員会

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことが嬉しい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

-それが変わってきたということでしょうか。  物事は、ある程度加速がつき、歯車がスムーズに回り始めれば、少ないエネルギーで進んでいくようになりますが、スタートするときは膨大なエネルギーが必要です。この作品もそういう過程を経て、ようやく彼が笑 … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

-30年間やってきて、栗田さんなりのルパンに対する思いや魅力について。また栗田さんにとってルパンとはどういう存在でしょうか。  やっぱりルパン三世の声は、パート2や『ルパン三世 カリオストロの城』(79)の頃の、山田さんが一番元気だった頃の … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

-三池崇史監督の演出や映画に対する姿勢についてはどう感じましたか。 大倉 あまり無駄なことはおっしゃらないです。すごく明確な演出をなさいます。僕の場合は、校長と薮下先生との間に挟まれているという、スタンスにちょっとよどみがあったのかもしれな … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『アスファルト・シティ』(6月27日公開)  犯罪と暴力が横行するニューヨークのハーレム。クロス(タイ・シェリダン)は医学部への入学を目指し勉学に励む一方で救急救命隊員として働き始める。  ベテラン隊員のラット(ショーン・ペン)とバディを組 … 続きを読む

Willfriends

page top