村上淳「“人間力のすごみ”を感じる現場でした」太平洋戦争末期、沖縄県民の命を守ろうとした警察部長役を熱演 映画『島守の塔』【インタビュー】

2022年7月21日 / 12:00

 太平洋戦争末期の1945年、日本国内で唯一、激しい地上戦が繰り広げられた沖縄で、県民の命を必死に守ろうとした2人の人物がいた。その人物とは、県知事の島田叡と警察部長の荒井退造。彼らの苦悩や葛藤を描いた映画『島守の塔』が7月22日から公開となる。島田知事役の萩原聖人と共に、荒井役でダブル主演を務めた村上淳が、撮影の舞台裏や作品への思いを語ってくれた。

荒井退造を演じた村上淳

-島田知事については、これまでさまざまな映画やドラマに登場し、近年もドキュメンタリー映画が製作されているので、ある程度知っていましたが、荒井退造さんについてはこの映画で初めて知る驚きと発見がありました。演じるに当たって、どんな準備をしましたか。

 沖縄では有名な方だそうですが、僕も荒井さんのことは今まで知らなかったので、事前にご親族の方にお会いして人物像を伺いました。とはいえ、基本的にはいつもと同じように台本に書いてある人間像を膨らませるというアプローチをしています。こういう実在の人物の場合、図書館に行けばいくらでも資料を集めることはできます。でも僕は、脚本家や監督が足し引きして作り上げたものに、俳優部が自分で見つけたヒントを持ち込む必要はないと考えているので。

-脚本を軸に、役としての荒井退造を作っていったということでしょうか。

 そうですね。ただ、一つだけ明らかなことがあり、議事録が残っていて、荒井退造のせりふのほとんどがその議事録通りなんです。だから、それはなるべく外さないようにして、僕らが今この映画を撮るに当たって、荒井さんが実際に放たれた言葉を現代風に置き換えるようなこともしませんでした。

-そうでしたか。

 その一方で気を付けたのは、それに引っ張られ過ぎて、“再現VTR”寄りになってしまわないか、ということです。現場の熱量で撮っている人間たちには、その場では成立するのかもしれない。でも、「観客はどうだろう?」と。ほんの数ミリですけど、「より幅広い層の観客に見てもらうには、どういうあり方をすればいいだろう?」と常に考えていました。そこだけは、今までとちょっと違うことをしています。

-その理由は?

 語弊を恐れずにいうと、この作品は一見、「難しい映画」と思われそうじゃないですか。でも、ダブル主演の1人が村上淳である以上、「それだけではないよ」という入り口の広さを残しておきたかったんです。

-その点、本作の前半、栃木の実家に帰る場面では、家族とのやり取りを通して荒井の素顔を垣間見ることができます。荒井の人物像に奥行きが感じられる印象的なシーンですが、撮影はいかがでしたか。

 この作品には主要な人物が何人か登場しますが、あのシーンが加わったことで、僕のパートにすごく血が通ったと思います。例えば、きんぴらを食べて「帰ってきた気がする」と言うだけで、ぬくもりを感じることができますよね。日本人なら誰でもきんぴらを食べたことがあるはずですから。そういう意味で、味覚や聴覚まで刺激するようなシーンになったのではないかと思います。

-実在の人物を演じる責任については、どう感じていますか。

 責任はものすごく感じています。ご覧になった親族の方から「全然違うじゃないか」といわれる怖さもありますし。だからといって、映画的に都合のいい姿を見せようとは思っていませんでした。そのあんばいは、本来の荒井退造像からかけ離れ過ぎず、ある種のフィクションとして成立させた五十嵐(匠)監督を信頼してお任せしました。

-この映画を通じて荒井退造という人物が世に知られることについては、どう思いますか。

 もちろん、主人公の1人ですから、注目が集まることは否定しません。ただ、この作品は僕だけでなく、始まってから終わるまで、出てくる方が皆さんいい顔をしているんです。単なる映画撮影のためだけに集まったキャスト、スタッフではない何かを僕は感じていて。それが何なのか、まだ分かりませんが…。その辺は、五十嵐監督の手腕と誠実さのたまものだったのかなと。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】4月後半公開の映画から『人はなぜラブレターを書くのか』『今日からぼくが村の映画館』『ソング・サング・ブルー』

映画2026年4月24日

『人はなぜラブレターを書くのか』(4月17日公開)  2024年、千葉県香取市で定食屋を営む寺田ナズナ(綾瀬はるか)は、ある青年に宛てて手紙を書く。  24年前、当時17歳だったナズナ(當真あみ)は、いつも同じ電車で見かける高校生の富久信介 … 続きを読む

小林虎之介「名前と同じ『虎』の字が入った役名に、ご縁を感じています」連続テレビ小説初出演で、主人公の幼なじみを好演中【連続テレビ小説「風、薫る」インタビュー】

ドラマ2026年4月23日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「風、薫る」。田中ひかるの著書『明治のナイチンゲール 大関和物語』を原案に、明治時代、当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込んだ一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)という2人のナースの冒険物語 … 続きを読む

浦井健治が演じる童磨がついに本格参戦!「童磨を本当に愛し抜いて演じられたら」舞台「鬼滅の刃」其ノ陸 柱稽古・無限城 突入【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年4月23日

 舞台「鬼滅の刃」其ノ陸 柱稽古・無限城 突入が6月13日から上演される。原作漫画「鬼滅の刃」はコミックスの全世界累計発行部数が2億2000万部を突破。その大人気作品の舞台化で、シリーズ6作目となる本作では、柱稽古、そして無限城の戦いを描く … 続きを読む

「豊臣兄弟!」第15回「姉川大合戦」登場人物それぞれの覚悟が示された合戦【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年4月22日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=藤吉郎/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。4月19日に放送された第15回「姉川大合 … 続きを読む

ドラマ「惡の華」鈴木福&あの、互いの印象を語る「熱量が一緒だなと…」「こんなにお調子者でボケるとは」【インタビュー】

ドラマ2026年4月21日

 鈴木福とあのがW主演するドラマ「惡の華」が毎週木曜24時からテレ東系で放送中だ。押見修造氏の同名漫画をドラマ化した本作は、少年・少女の「不安」「葛藤」「痛み」など、思春期の心の変化を描いた壮絶な青春物語。ある日、ひょんなことから憧れのクラ … 続きを読む

page top