「いろんな仕掛けを考えながら演じていました」上野樹里、「今の時代にぴったりな映画だなと思いました」林遣都『隣人X -疑惑の彼女-』【インタビュー】

2023年11月27日 / 10:30

 ある日、日本は故郷を追われた惑星難民Xの受け入れを発表した。週刊誌記者の笹は、スクープを狙ってX疑惑のある良子に近づく。2人は少しずつ距離を縮めていき、やがて笹の中に本当の恋心が芽生えるが…。疑われる女と真実を探る記者を巡る異色のミステリーロマンス『隣人X -疑惑の彼女-』が12月1日から新宿ピカデリー他全国ロードショー公開される。本作でヒロインの良子を演じた上野樹里と週刊誌記者の笹を演じた林遣都に話を聞いた。

林遣都(ヘアメーク:竹井 温 (&’s management)/スタイリスト:菊池陽之介)と上野樹里(ヘアメーク:清家いずみ/スタイリスト:古田千晶) (C)エンタメOVO

-最初に脚本を読んだ時の印象と、実際に演じてみて感じたことを。

上野 私は原作を読まずにニュートラルな状態で、フレキシブルな視点でいられるようにしました。良子はちょっと柔和な感じの女性で、最初はもっとミステリアスな感じだったんですけど、それをもう少し日本人のいいところと不器用なところが感じられるような女性像にしていきました。脚本がちゃんとしていて、イメージがあったので、演じる時も、「やっぱりなんかちょっと違うな」みたいなことはなく、スムーズにできました。

林 本当に、今の時代にぴったりな映画だなと思いました。(熊澤尚人)監督が、日々届けたいと思っていること、世の中に対しての願いや訴えみたいなものをすごく感じました。自分も「こんな人間関係を築けたらいいな」とか、「こういうことを心掛けて生きていきたいな」と思えることばかりでした。この作品を通して、そうしたことをたくさんのお客さんに伝えられるという意味で、すごくやりがいを感じました。あとは「これは監督の実体験では…」というようなせりふややり取りが、良子と笹とのラブの部分で出てくるんですが、それが全部、ささやかな幸せの描写で、今はそういうことにいかに目を向けられるかということが、生きる上で大切になっているのではと思うので、そういうシーンがたくさんあって、すごくすてきだなと思いながら脚本を読んでいました。

-この映画はXを通して、恐怖心や情報について考えさせるところがありますね。

上野 本当は100人の人がいたら、ある人が言ったことに対する感じ方は全員違うはずなんだけど、例えば、影響力のある人とかが言うと、みんな「そうだ」って思っちゃうかもしれませんよね。ニュースなどで人の恐怖心や不安をあおると、フェイクかもしれないことでも心が動かされて、無意識に行動にも変化が出てくるかもしれませんよね。でも、良子と笹の関係は、恐怖心を克服して絶妙なバランスでラブストーリーに発展していく。良子の世の中の見え方が笹を通して変わっていくので、その変化を楽しんでもらいたいなと思います。

林 僕は自分自身をしっかり持っていればいいんじゃないかと思います。僕はどちらかというと時代に置いていかれているタイプなんですが、でも、それが好きで、それが幸せだって自分が思えればいいと考えています。情報に振り回されないようにはしていますけど、SNSやネット社会の中で情報が入って来過ぎて、判断基準がおかしくなってきますよね。でも、そうではなかった時代をギリギリ知っている年齢なので、恋愛でもそうですけど、やっぱり、放課後に呼び出し、呼び出されの告白タイムとか、すてきじゃないですか。そういうのを知っているからこそ、取り残されているというよりは、戻りたいものがたくさんあると感じています。

上野 情報が増えた分、取捨選択をする必要がありますよね。最新情報をたくさん詰め込むと、今自分が何を大切にしたいのか見失いそうになる瞬間もあるんじゃないかな。林くんは、自分のことをちゃんと知っていて、自分が今どういうふうに感じていて、何をしたいかという心の声にしっかりと耳を傾けられる人だから、お芝居でいろんな役をやる上でも、自分というものを持って、そこに魂を入れることができるんだと思います。だから、今自分が何をやりたいのかを考えて、情報を捨てる勇気とか、情報を入れない勇気とかが必要になると思います。自分というものをそれぞれの人が持って、それをお互いが認め合えればいいんじゃないかなって。みんなと一緒である必要はないと思います。

林 多分、この仕事をしているからということもあると思いますが、やっぱり人を知らなきゃいけないし、人と触れ合って、いろんな感情を生活の中で経験しなければいけないというのが自分の中にはあります。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】新旧監督の話題作が並んで公開に『TOKYOタクシー』『金髪』

映画2025年11月22日

『TOKYOタクシー』(11月21日公開)  タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は、85歳の高野すみれ(倍賞千恵子)を東京の柴又から神奈川県の葉山にある高齢者施設まで乗せることになった。  すみれの「東京の見納めに、いくつか寄ってみたい … 続きを読む

中川晃教「憧れることが原動力」 ミュージカル「サムシング・ロッテン!」で7年ぶりにニック役に挑戦【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月22日

 数々のミュージカル作品へのオマージュが登場するコメディーミュージカル「サムシング・ロッテン!」が12月19日から上演される。2015年にブロードウェイで初演された本作は、「コーラスライン」、「アニー」、「レ・ミゼラブル」などの人気ミュージ … 続きを読む

岩田剛典、白鳥玉季「全編を通してくすっと笑えるコメディー映画になっていますので、気楽な気持ちで映画館に来ていただきたいです」『金髪』【インタビュー】

映画2025年11月21日

 日本独特のおかしな校則、ブラックな職場環境、暴走するSNSやネット報道といった社会問題を背景に、大人になりきれない中学校教諭が、生徒たちの金髪デモに振り回されながら成長していく姿を、坂下雄一郎監督がシニカルな視点で描いた『金髪』が全国公開 … 続きを読む

加藤清史郎&渡邉蒼「僕たちも今、夜神月に巻き込まれている」 子役出身の二人が挑む「デスノート THE MUSICAL」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月21日

 映画やドラマ、アニメなど幅広いメディア展開を遂げてきた人気漫画「DEATH NOTE」のミュージカル版「デスノート THE MUSICAL」が11月24日から上演される。2015年に日本で世界初演された本作は、原作のスリリングな物語を世界 … 続きを読む

なにわ男子・大西流星「“timeleszのお兄さん”な原くんは印象通り」 timelesz・原嘉孝「流星は優しくてしっかりしてる子」 1月期ドラマでW主演【インタビュー】

ドラマ2025年11月20日

 なにわ男子・大西流星と、timelesz・原嘉孝がW主演する「東海テレビ×WOWOW 共同製作連続ドラマ 横浜ネイバーズ Season1」が、2026年1月から放送がスタートする。  本作は、令和版『池袋ウエストゲートパーク』として注目を … 続きを読む

Willfriends

page top