エンターテインメント・ウェブマガジン
物語が進むにつれ、実は日常の中でも近しい人たちに恵まれていたことに、希はだんだん気付いていくんです。その点、演じる上では突然大きく変わるわけではないんですけど、グラデーションをつけるように、徐々に変わっていく感じを心掛けました。
私にとってもすごく印象的なシーンで、あの時間のことは今もよく覚えています。元々、脚本ではああいうテンション感になる予定ではなく、さらっと終わるはずだったんです。でも、私も芋生さんもお互いに役であると同時に自分たちでもある感じだったので、芋生さんからああいう言葉をもらったとき、私自身も感極まるものがあって…。その結果、あんなふうになりました。希としても、そっと背中を押して、包み込んでもらえた時間だったなと思います。
『朝がくるとむなしくなる』配給︓イーチタイム©Ippo
根本的に人って、すごく弱いと思いますし、誰もが悩みやコンプレックスを抱えながら生きていると思うんです。でも、同じくらい強さも持っているんじゃないかな…と。だから、その後の「そんなに正しくなんて生きられないよ、みんな」という加奈子のセリフもすごく響くんですよね。
石橋監督は、役の心情に寄り添いながら演出してくださった上に、「ああしてください」、「こうしてください」ということはなく、基本的にお芝居については任せてくださいました。しかも今回の石橋組は、スタッフ、キャスト共に皆さんとても柔らかい雰囲気で、温度感の似た方が多かったんです。だから、役作りのために意識してコミュニケーションをとる必要もなく、自然といい関係を築けたことが、作品にも反映されたような気がします。
脚本がより優しく色づいたような気がしました。石橋監督の優しい目線や芋生さんのたたずまいもすてきで、この世界観に入れてよかったな…と。10代の頃から親しかった芋生さんと初めて一緒にお芝居ができましたし、石橋監督ともいいチームになることができました。すごくいい空気感の中でお芝居をさせていただき、自分にとっては宝物のような作品になりました。
すてきな言葉がたくさん詰まっていて、ご覧になった方の背中をそっと押してくれるような作品になったと思います。そういう意味では、悩みを抱えた人や日常に疲れた人に見ていただきたいという思いはもちろんあります。とはいえ、そんなふうに構えることなく、ふらっと映画館に立ち寄った方にもぜひご覧いただき、何かを感じてもらえたら。1人でも多くの方に、非日常を味わえる映画の魅力を体感していただけたらうれしいです。
(取材・文・写真/井上健一)
『朝がくるとむなしくなる』配給︓イーチタイム©Ippo
映画2024年7月6日
★今夏はスクリーンで猫が大活躍! この2大ブランドに続く注目作としてオススメしたいのが、カンヌ国際映画祭の「監督週間」に出品された日本とフランスの合作『化け猫あんずちゃん』(7月19日公開)。イラストレーターや漫画家としても活躍する気鋭の … 続きを読む
ドラマ2024年7月6日
NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。6月30日に放送された第二十六回「いけにえの姫」では、娘・彰子の入内を迫られる藤原道長(柄本佑)と、夫・藤原宣孝(佐々木蔵之介)との関係に悩む主人公まひろ(吉高由里子)の姿が描かれた。 大水や … 続きを読む
ドラマ2024年7月5日
――週の終わりには、はる(石田ゆり子)が突然の死を迎えます。 ここは特に、花江(森田望智)のありがたみを感じましたね。一緒に泣いて、母を弔ってくれる親友が家族としていてくれる。それがこんなにありがたいことだったんだと、寅子は母の死をもって … 続きを読む
映画2024年7月5日
『フェラーリ』(7月5日公開) 1957年。イタリアの自動車メーカー、フェラーリ社の創業者エンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)は、難病を抱えた息子ディーノを前年に亡くし、会社の共同経営者でもある妻のラウラ(ペネロペ・クルス)との関係 … 続きを読む
ドラマ2024年7月4日
-本作のメガホンをとったのは、『MOTHER マザー』(20)、『グッバイ・クルエル・ワールド』(22)など、骨太な作品を多数手掛ける大森立嗣監督です。大森監督の現場はいかがでしたか。 広瀬 役者の皆さんのこれまで見たことのない表情を数多く … 続きを読む