「やっぱり悪役は面白いです。やっていて面白い」 佐藤二朗『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』【インタビュー】

2023年9月20日 / 08:00

-この映画は、とてもアメリカ的な会話が印象的ですが、特に「あーアメリカ的だな」と思った部分はありましたか。

 それは絶対あるんですよね。やっぱり、ベーシックは英語で作られているので。極端な話、キャラクターの口調や表情も、英語のものなんです。でも、それで思い浮かぶのは、『Mr.Boo!ミスター・ブー』などを吹き替えていた広川太一郎さんという声優さんのこと。『キャノンボール』(81)では、「ミスター・ブー」のマイケル・ホイと「007」のロジャー・ムーアの両方をやったすごい人です。広川さんのマイケル・ホイは、オリジナルへのリスペクトは大いに持ちつつも、マイケル・ホイ本人より面白いかも?と思える時があるんです。駄じゃれも含めてむちゃくちゃなことを言っている。僕は子どもの頃、それがすごく好きでした。だから、おこがましいにもほどがあるんだけど、声優をやる時は、いつも広川さんのことがちょっと頭に浮かぶんです。今回も、やっぱり英語を基準に作られているから、そこは超えられないところもあるので、広川さんのことを思い浮かべました。子どもたちに広川さんのように思われたらいいなという気持ちも少しあります。

 僕の世代だと、例えば、アル・パチーノは野沢那智さん、ジェームズ・コバーンは小林清志さん、「刑事コロンボ」のピーター・フォークは小池朝雄さん…。小池さんの声じゃないとコロンボを見た気になりませんという人がいる。僕は、中学生ぐらいの時にピーター・フォーク本人の声を聴いて驚いた記憶があるんです。それまでは、コロンボの声は小池さんだとばかり思っていたから。当時は、テレビでやる洋画は吹き替えだったので、そういう現象が生まれたわけです。

-タートルズの4人についてはどう思いましたか。

 映画を見終わる頃には、老若男女を問わず、4人のタートルズが好きになると思うんです。まず第一に4人の関係性や役割分担みたいなものが面白い。4人が作る空気感も単純に笑える。でも、彼らは普通のティーンエージャーとして高校に通いたいという夢を持っていて、真面目でひたむきに生きている。だから、観客に愛される要素が詰まっていると思います。自分と同じだと思う人もいるだろうし、若かったのは昔の話だけど懐かしいと思う人、かわいいなと思う人、いろんな感想を持つ人がいると思います。

-完成版を見た印象を。

 宮世くんと齊藤(京子)さんは声優初挑戦ということだったんですけど、この2人がものすごくキャラが合っていた。変な欲がなくて素直なんです。宮世くんがやった役は10代のカメ。齊藤さんがやったエイプリルは高校生で記者を夢見ているから、すごく声を張っていました。その素朴さがとてもよかったと思いました。だから僕は自分の声よりもそっちの方がすごいなと思って見ていました。

-最後に観客に向けて一言お願いします。

 本当に、年齢を問わず、子どもも大人も年配の方も、それからもちろん性別も問わず、いろんな人が満足できる時間になると思うので、 お友達同士で行ってもいいし、家族と行ってもいいし、カップルで行ってもいいし、1人で行ってもいい。どの組み合わせも全部オッケーだと思うので、 ぜひ皆さんに楽しんでもらえればなという感じでございます。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.TEENAGE MUTANT NINJA TURTLES IS A TRADEMARK OF VIACOM INTERNATIONAL INC.

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『遠い山なみの光』(9月5日公開)  1980年代のイギリス。日本人の母とイギリス人の父との間に生まれロンドンで暮らすニキ(カミラ・アイコ)は、大学を中退し作家を目指している。ある日、彼女は執筆のため、異父姉の景子が亡くなって以来疎遠になっ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

▼新しい美の概念  志賀直哉や武者小路実篤らと文芸雑誌『白樺』を創刊し、西洋美術を紹介していた柳宗悦(1889-1961)は、浅川兄弟との関わりで初めて朝鮮に興味を持つことになる。  「(彫刻家を目指していた)伯教さんは『白樺』を読み、柳先 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

-劇中に流れるさまざまな曲は、全て監督のチョイスですか。  音楽は全て私のチョイスです。こういうシーン、こういう状況だったらこの音楽は意味があるかなと考えながら一つ一つ選んでいきましたが、いろんな人たちの意見も聞きましたし、私自身もたくさん … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

-お芝居に悩んだり、難しさを感じたりすることはありませんでしたか。 前田 たくさんあります。でもその都度、松井監督と相談しながら進めていきました。迷ったときは、松井監督を信じればいい、という信頼関係が出来上がっていたので。 窪塚 松井監督は … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

-ルンメイさん、夫・賢治役の西島秀俊さんの印象はいかがでしたか。 ルンメイ 今回西島さんと一緒にお仕事ができたことはとても光栄でした。西島さんは経験豊かな方なので、私は現場でとても安心して演技をすることができました。西島さんがいろんなエネル … 続きを読む

Willfriends

page top