「やっぱり悪役は面白いです。やっていて面白い」 佐藤二朗『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』【インタビュー】

2023年9月20日 / 08:00

 ニューヨークを舞台に、カメの忍者4人組の活躍を描き、コミック、ゲーム、アニメ、映画など、さまざまなメディアで根強い人気を誇る「ミュータント・タートルズ」。アメコミタッチの新たなビジュアルで映画化した長編アニメーション『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』が9月22日から全国公開される。本作の日本語吹き替え版で、4人組と敵対するスーパーフライを演じた佐藤二朗に、映画や吹き替えに対する思いを聞いた。

佐藤二朗 (C)エンタメOVO

-今回のオファーが来た時の心境を。

 ありがたいことに、声優の仕事は何度目かになります。それでこれは何回も言っているんですけど、俳優の仕事は割と子どもに見せられないような年齢制限が付くものが多い。監督をした『はるヲうるひと』(21)も、主演した『さがす』(22)も年齢制限が付いたので、子どもには見せられなかったんですけど、アニメなどの声優の仕事は子どもと一緒に劇場に見に行けます。今までも一緒に見に行っているので、「また息子と行けるな」って。最初はそう思いました。

-では、演じるに当たって、子どもが見るからという意識はありましたか。

 それはあまりないです。というか、当たり前のことですけど、声優は俳優とは別の難しさがあるので、それを思う余裕がなかった。付いていくのに精いっぱいだったというところです。今までやってきた、アニメの吹き替えもそうだけど、大人も楽しめるような作品ということを考えながらやっていますから、子どもが見るからということは特に意識していないです。ただ、(レオナルド役の)宮世(琉弥)くんもこの間イベントで言っていたけど、やっぱり「うー」とか、リアクションの声が大変なんです。特に息遣いは戦うシーンなどがあるので。声優をやるときは、これを声だけで表現するのはなかなか難しいといつも思います。

-スーパーフライのキャラクターについてどう思いましたか。

 非常に人間に恨みを持っていて、人間を支配しようとたくらんでいるんです。例えば、ドッグショーとか、動物園で動物をおりに入れるとか、人間が動物にしていることの逆のことをしようとしている。それで「人間が動物を扱うように俺たちは人間を扱う」みたいなことを言うシーンがあるんです。やっぱり、こういう作品は、善と悪がいて、その両方の言い分に利がある方が深みがあっていい作品になると思います。そういう意味では、スーパーフライは、もちろん傍若無人で、強引に人間を支配しようとしているから、とんでもないやつなんですけど、確かに、動物側がそう思うようなことを人間がすることもあるんじゃないかなと、ちょっと自省を促されるところもあります。だから、スーパーフライが言っていることも、全部間違いではないという感じがするんです。ミュータントになったのだって、人間の意思なわけですから、自分が好きでなったわけじゃない。人間界になじめるんじゃないかと思って一度外に出たけど、ひどい目に遭うというような悲しい過去もあったりしますしね。

-スーパーフライは、タートルズにとっては悪役ですが、悪役を演じることで何か気を付けたことはありましたか。

 特に気を付けたことはないです。ただ、これは俳優仲間でも割と同じ意見を言う人が多いんですけど、やっぱり悪役は面白いです。やっていて面白い。すごく感じの悪いやつとか、ドロドロの内面を持っているやつとか、ものすごい野心を持っているやつとか、そのためには人なんて簡単に蹴落とすとか。そういう役をやるのは面白いです。やっぱりちょっと普段の生活とはかけ離れたことできるからですかね。まあ、それが、演じる仕事のある種の特権の一つでもあるじゃないですか。普通だったら怒られそうな人とか、後ろから刺されそうな人ができる。それは楽しいです。

-オリジナルのアイス・キューブの声も聞いたんですよね。いかがでしたか。

 スーパーフライは、明らかに彼を想定したキャラクターだから、登場シーンも、ラップみたいな感じで出てくるんです。でも、そこはあまり意識せずに、僕は僕でと思ってやりました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井内悠陽「自分を貫くことは大切。でも、時には柔軟性も必要」 映画『爆上戦隊ブンブンジャー』で映画初主演を飾る20歳の新星【インタビュー】

映画2024年7月27日

 7月26日から公開中の『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』は、テレビ朝日系で大人気放送中のスーパー戦隊シリーズ第48作「爆上戦隊ブンブンジャー」初の劇場版だ。本作でブンブンジャーのリーダー、ブンレッド/範道 … 続きを読む

田中真弓「70歳、新人のつもりで頑張っています」憧れだった朝ドラレギュラー出演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年7月26日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。新潟地家裁三条支部に赴任し、娘・優未(竹澤咲子)と2人だけの暮らしに苦労する主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)を助けるため、かつて花江(森田望智)の家で女中として働き、第7週で故郷の新潟に帰った稲が … 続きを読む

真彩希帆、憧れの「モーツァルト!」でコンスタンツェ役 「この作品を見に来て良かったと感じていただきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年7月26日

 「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という深遠なテーマをベースに、その高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”の35年の生涯に迫る、ミュージカル「モーツァルト!」が、8月19日から帝国劇場にて上演される。2002年の日本初演以来 … 続きを読む

【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』

映画2024年7月26日

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(7月26日公開)  新型コロナウィルスがまん延した2020年。首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は、最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活 … 続きを読む

鈴木梨央「特撮映画の魅力を実感しました」子役時代から活躍してきた若手俳優が、ファンタジー映画に主演『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』【インタビュー】

映画2024年7月25日

 高校生の時宮朱莉は、謎の男・穂積(斎藤工)と出会い、特殊美術造形家だった亡き祖父・時宮健三(佐野史郎)が制作を望んだ映画『神の筆』の世界に入り込んでしまう。怪獣ヤマタノオロチによって、その世界が危機にひんしていることを知った朱莉は、同級生 … 続きを読む

Willfriends

page top