稲垣吾郎、舞台出演で感じる充実感「表現として自分に合っている」【インタビュー】

2023年9月14日 / 08:00

-では、何か印象に残っている撮影や写真はありますか。

 どのカメラマンの方も皆さんそれぞれ唯一ですし、本当にいつもすてきな写真を撮っていただいていると思います。ただ、印象に残っている写真を挙げるとすれば…アラーキーさん(荒木経惟)が撮っている「男の肖像画シリーズ」というモノクロのポートレートがあるのですが、僕が以前出演していたテレビ番組でその企画の写真を撮っていただいたことがあったんですよ。それをアラーキーさんがプリントしてくださったんです。そのモノクロの写真は、今でも大切に持っていて特別な1枚になっています。やっぱりカメラマンさんから実際にプリントしていただくと本当にうれしい。そうしてプリントしていただいたものは、そのアラーキーさんの写真に限らず、全部大切に持っています。今はネットでアーカイブとして昔の自分の写真を見ることもできるので、そうしたアーカイブを見直すこともあります。写真を見ると当時のことも思い出すので、自分の歴史を振り返るのにもいいんですよね。

-ところで、映像作品やラジオなど、多方面で活躍されていますが、稲垣さんにとって舞台に出演することについては、どんな思いがありますか。

  舞台がすごく好きだというシンプルな思いです。同じ時間、同じ場所をお客さんと共有できるというのは、すてきなことですよね。しかも、舞台は、毎回同じものはできない。お客さんによっても作品が変わってくるので、そうしたライブ感が僕は好きです。それに、素の自分では照れてしまうようなことも、役を演じていると自分が大きくなった気がして恥ずかしくないんですよ。僕は、基本、人前に出るのが恥ずかしいんです。向いてないんですよ、芸能人(笑)。でも、舞台では、役を演じて、決まったせりふを言えばいいので安心感もある。表現としてはすごく自分に合っていると思います。

 もちろん、テレビでできること、映画でできることも色々とありますが、舞台でしかできないこともある。例えば、僕がテレビでベートーベンを演じるのはきっと無理ですよね。もし、頑張ってやったとしても違和感があると思う。それに、彼の生涯を2時間に集約して作るのも映像では大変なこと。でも、舞台では、僕がベートーベンを演じても違和感はないし、生涯も描くことができる。どんな役でも演じられるというのは、舞台ならではだと思います。

-そうした舞台の面白さには、いつ頃気付いたのですか。

 22、3歳のころに出演した、作・つかこうへいさん、演出・いのうえひでのりさんの「広島に原爆を落とす日」という作品です。本当に大変だったんですよ(苦笑)。まだ舞台経験も少なくて、自分の中では初めての挑戦ばかりだったので。

-どんなところが大変だったのですか。

 まずは、物理的に大変(笑)。せりふも多いし、エネルギーも使う。テーマも重い。ただ、テレビで自分が求められているものと、舞台で自分が求められているものの違いを感じて、そこに魅力を感じました。テレビでは、僕たちはエンターテイナーで、アイドルとしてやってきたので、なるべく多くの人に平均的に刺さるように親切に表現していくことが必要でしたが、舞台作品では必ずしもそうである必要はなかった。ある一定のターゲットに向けて作っている作品も多いので、それがすごく新鮮でした。エンターテインメントの世界に生きるものとして、特にそうしたテレビでは許されないような、挑戦的な作品に参加できるというのが魅力でもありました。それから、毎回リセットできるというのも舞台の良いところだと思います。僕は、何か一つでも失敗してしまうと、それが心に残って反省を繰り返してしまうんですよ。でも、舞台ならば、次の日にまたやり直せる。そうやって、舞台の魅力を上げ出したらきりがない(笑)。それくらい僕には魅力的なものです。今回も新しい挑戦になるので楽しみです。

(取材・文・写真/嶋田真己)

「多重露光」

 

 モボ・モガプロデュース「多重露光」は、10月6日~22日に、都内・日本青年館ホールで上演。

 

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