「賢治もさることながら、お父さんの魅力もあって、これは映画になると思いました」 『銀河鉄道の父』成島出監督【インタビュー】

2023年5月3日 / 08:00

-今回のように、とても強いイメージのある原作を映画化する難しさはありますか。

 原作の前に事実があり、実在の人物がいるというものを映画にする場合は、前に役所さんとやった『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(11)もそうですが、そんなにうそはつけません。今回もそのパターンです。今回は、事実があって、宮沢賢治も政次郎さんも、その家族も実在していたということは、シナリオを作っていく上では、とても大きかったと思います。

-役所さんとは、前作の『ファミリア』(23)に続いての仕事になりました。2作続けて役所さんが演じる異なる父親像を撮ってみて感じたことはありますか。

 この2作は全然違う役ではありますが、役所さんのすごいところは、本当に役に成り切るところです。あの年齢で、自分の我や個性よりも役が強いという。あのレベルの俳優でそれができるのは、僕が知っている範囲では役所さんだけです。これは希有なことで、例えば『ファミリア』を勝新太郎さんでやって、この映画もやったら、勝新さんが勝つじゃないですか(笑)。役所さんの師匠でもある仲代達矢さんがやっても仲代さんが勝つでしょ。山崎努さんにしても、緒形拳さんにしてもそうです。ところが、役所さんは『ファミリア』の誠治さんと、この映画の政次郎さんの方が勝つんです。これは本当に希有なことですごいと思います。どうやったら、それができるのか本当に不思議です。

-「おれもとうとう、お父さんに褒められたもな。ありがとがんした」という賢治のせりふもありましたが、賢治は政次郎に認められたい一心で行動したとも思えますね。

 今も虐待や親子で殺し合う事件があったりしますが、やっぱり、家族の人格構成の基本は、褒めてもらいたい、愛してもらいたいということだと思うので、賢治みたいな危険な人、壊れた人は、褒めてもらいたいという本能が人一倍強かったんだと思います。賢治も、本当は認められたかったと思いますが、ただゴッホと同じで、「この人が認められたら、どんな人格になっていたんだろう」と思うと、ちょっと恐ろしくはあります(笑)。賢治が花巻で大金持ちになるような姿は見たくないような…。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2022「銀河鉄道の父」製作委員会

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

市毛良枝「現代の家族のいろんな姿を見ていただけると思うし、その中で少しでもホッとしていただけたらいいなと思います」『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』【インタビュー】

映画2025年10月23日

-文子が生涯学習の講座に行きますが、生涯学習についてはどう思いますか。  実は、以前、静岡県の生涯学習の委員をやっていました。それから最初に出した『山なんて嫌いだった』という本の後書きに「いつか少し時間ができたら大学に行って勉強してみたい」 … 続きを読む

林裕太「北村匠海さんや綾野剛さんとのつながりを感じました」期待の若手俳優が先輩2人と作り上げた迫真のサスペンス『愚か者の身分』【インタビュー】

映画2025年10月22日

-その場でとっさに反応したように見える迫真のお芝居でした。では、マモルにとってもう一つ大事な要素である北村さん演じるタクヤとのバディ感は、どのように作っていったのでしょうか。  北村さんと一緒に現場で作っていった感じです。僕が最初、緊張して … 続きを読む

南琴奈「今までに見たことがないような映画を楽しんでいただけたらと思います」『ミーツ・ザ・ワールド』【インタビュー】

映画2025年10月22日

-ライと似ているところや共感するところはありましたか。  全てを理解することはできないですけど、すごく分かる部分も多かったです。もちろん私は今死にたいわけではありませんが、ライさんの死に対する考え方も理解できるところはあって、言っていること … 続きを読む

timelesz・橋本将生「『大切な人を守りたい』という気持ちは共感できる」 菊池風磨のアドバイスも明かす【インタビュー】

ドラマ2025年10月21日

-恒松さんが演じるピュアで心優しい澪と、どこかあやしげな魅力を持つ冷静でクールな眞希、この2つの人格の女性のうち、橋本さんはどちらに引かれますか?  どっちだろう、ちょっと考えてもいいですか……!? うーん……どちらも魅力的です(笑)。 - … 続きを読む

高橋一生、平山秀幸監督「アクションはもちろん、人間ドラマとしてもちゃんと娯楽性を持っている作品に仕上がっていると思います」「連続ドラマW 1972 渚の螢火」【インタビュー】

ドラマ2025年10月20日

-高橋さん、沖縄の言葉は大変でしたか。 高橋 真栄田に関しては「ないちゃー(本土の人間)」と言われているような男なので、そこまで大変ではなかったのですが、(小林)薫さんや青木(崇高)さんは結構大変だったと思います。真栄田は彼なりによかれと思 … 続きを読む

Willfriends

page top