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原作の前に事実があり、実在の人物がいるというものを映画にする場合は、前に役所さんとやった『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(11)もそうですが、そんなにうそはつけません。今回もそのパターンです。今回は、事実があって、宮沢賢治も政次郎さんも、その家族も実在していたということは、シナリオを作っていく上では、とても大きかったと思います。
この2作は全然違う役ではありますが、役所さんのすごいところは、本当に役に成り切るところです。あの年齢で、自分の我や個性よりも役が強いという。あのレベルの俳優でそれができるのは、僕が知っている範囲では役所さんだけです。これは希有なことで、例えば『ファミリア』を勝新太郎さんでやって、この映画もやったら、勝新さんが勝つじゃないですか(笑)。役所さんの師匠でもある仲代達矢さんがやっても仲代さんが勝つでしょ。山崎努さんにしても、緒形拳さんにしてもそうです。ところが、役所さんは『ファミリア』の誠治さんと、この映画の政次郎さんの方が勝つんです。これは本当に希有なことですごいと思います。どうやったら、それができるのか本当に不思議です。
今も虐待や親子で殺し合う事件があったりしますが、やっぱり、家族の人格構成の基本は、褒めてもらいたい、愛してもらいたいということだと思うので、賢治みたいな危険な人、壊れた人は、褒めてもらいたいという本能が人一倍強かったんだと思います。賢治も、本当は認められたかったと思いますが、ただゴッホと同じで、「この人が認められたら、どんな人格になっていたんだろう」と思うと、ちょっと恐ろしくはあります(笑)。賢治が花巻で大金持ちになるような姿は見たくないような…。
(取材・文・写真/田中雄二)
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