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山田孝之 服部半蔵役は「人としての揺らぎが見えるシーンが多い」【「どうする家康」インタビュー】

 NHKで放送中の大河ドラマ「どうする家康」。2月5日放送の第5回「瀬名奪還作戦」では、主人公・松平元康(後の徳川家康/松本潤)の家臣・服部半蔵が登場。一般に「忍者」のイメージが強い服部半蔵だが、本作では「忍者ではないが、忍者の代表」という一癖あるキャラクターだ。演じる山田孝之が、役に懸ける思いを語ってくれた。

服部半蔵役の山田孝之(左)と本多正信役の松山ケンイチ (C)NHK

-ついに服部半蔵が登場しましたが、本作におけるその人物像をどう解釈していますか。

 第5回では、亡き父から「忍びはやるな」と言われていたことも明かされましたが、半蔵は、そもそもできることなら争いを避けて生きたい人。ただ、時代的にも避けられない争いも多いし、自分は伊賀に生まれた宿命もある。それは理解しつつも、やはり争いたくない…という悩みや葛藤を抱えていたのかなと思います。その一方で、幼い頃見ていた忍びとして活躍する父の姿に、少なからず誇りや憧れも持っていただろうと想像しています。いざ任務につくとなれば、ほんのわずかですが、憧れていた父と同じ働きができる喜びもあったのかなと。

-なるほど。

 でも、結果的に父は自分に忍びを勧めなかった。父はさまざまな出来事に巻き込まれ、もしかしたら甲賀との対立の中で亡くなったのかもしれない。その上での言葉だったことを考えると、やはり引き受けない方がいいのかなと、本多正信(松山ケンイチ)の誘いに対してためらう半蔵の思いを解釈しました。

-そんな半蔵を演じる上で心掛けていることは?

 脚本にあるせりふをベースにしながら、描かれていない半蔵の過去や、父のことを想像で足して、人物像を組み立てていきました。史実が本当なのかは誰にも分かりませんし、今作においては、僕に与えられた服部半蔵をどう生きるかということだけだと思っています。

-半蔵を元康に引き合わせた本多正信との関係性について教えてください。

 正信と半蔵は、貧しい暮らしの中で死に物狂いで生きていますし、近いマインドを持った人だとは思います。でも、これは正信に限らずですが、半蔵は基本的に人を信用しておらず、警戒心も強い。どのシーンでも人とほぼ目を合わせないんです。「目は口ほどに物を言う」という言葉もありますが、目をしっかり見ると相手に情報を与えてしまうこともあると思うので。

-ところで半蔵は、初登場の第5回で元康から命じられた「今川領に潜入して、瀬名(有村架純)を奪還する」という任務にいきなり失敗してしまいました。

 鵜殿長照(野間口徹)らに襲われた瞬間、「なんでバレているんだ」と思考停止して、怖くなり動けなくなってしまいました。しかも、そんな自分を救ったせいで、多くの仲間が命を落としてしまった。冷静に考えれば、相手方にバレた場合も想定しておかなければならなかったし、そうなっても動けるように日頃から準備しておくべきだったんですよね。忍びではありませんが…。忍びとしての身体能力は低いですし、戦いたくないので日頃からトレーニングもしておらず、手裏剣一つ投げられない。とはいえ最低限自分が準備しておけば、仲間が犠牲になることもなかったのかと自分を責めたし、絶望したと思います。

-しかし、最後は「もう一度、瀬名の奪還に挑戦する」と元康に告げます。

 それでも、「もう一度、瀬名奪還の任務に挑戦する」と元康に申し出る覚悟ができたのは、亡くなった大鼠(千葉哲也)との約束があったからだと思います。きちんと任務をやり遂げて、銭をもらって、妻や子に分けてほしいと言い残して死んでいった大鼠の言葉は絶対守らなければならないし、今度こそ成功させなければならない。とはいえ、再度チャレンジすれば、指揮を取るのは頼りない自分なので、また余計に仲間の命を犠牲にしてしまうかもしれない怖さもある。でもやるしかない…。ずっと悩んで、葛藤して、人との間に挟まるというか。そうした人としての揺らぎが見えるシーンが多いので、人物像も自然と掴みやすかったように思います。

-瀬名奪還に再挑戦する半蔵のこれからの活躍に期待ですが、最後に今後への意気込みをお聞かせください。

 これから1年間続く物語の中で、半蔵の感情が大きく揺れ動いたり、崩れるほど感情が高ぶったり、もしくはしっかり相手の目を見られるほど信頼できる関係性を、正信や家康たちと築けたら…。そんなエピソードが出てきたらいいなと、僕自身も楽しみにしています。

(構成/井上健一)

松平元康役の松本潤(左)と服部半蔵役の山田孝之 (C)NHK

 

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