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「元康、今川領をことごとく切り取り、今川を滅ぼしまする。そして、わが妻と子を、この手で取り返しまする。ご異存、おありでございましょうや?」
これは、1月29日に放送されたNHKの大河ドラマ「どうする家康」第4回「清須でどうする!」のクライマックスで、主人公の松平元康(後の徳川家康/松本潤)が、織田信長(岡田准一)に向かって告げた言葉だ。
今回、清須城を訪れた元康は、同盟を結んだ信長から、今川を滅ぼすよう迫られる。妻の瀬名(有村架純)と家族を今川の本拠地・駿府に残してきた元康は、その要求に応じることをためらう。
ところが、今川氏真(溝端淳平)から、「今川に戻らなければ、瀬名の一族である関口家は皆殺し」という脅迫を受けると、信長の妹・市(北川景子)からの「欲しいものは、力で奪い取るのです」という言葉に背中を押され、ついに今川との対決を決意する。冒頭の言葉はこのときのものだ。
振り返ってみれば、元康はここまで、常に自身の思いと、それと相反する周囲の思いとの板挟みになりながら、「どうする?」と決断を迫られてきた。
戦場から逃げ出したくなる状況の中、家臣団から敵と向き合うことを迫られた第1回。
戦で傷ついた家臣たちを救うため、自らの命を投げ出そうとしてその過ちを正された後、待ち受ける敵を威圧して立ち去った第2回。
妻子との再会を夢見て、駿府への帰還を願いながらも、家臣や領民たちの思いを受け、それを断念した第3回。
その都度、元康は穏やかに暮らしていた駿府を出て、戦国の世へ船出する覚悟を決め、主君としての自覚が芽生え…と、難題を乗り越えながら一歩ずつ成長の階段を上ってきた。
そして今回は、信長からの「今川を滅ぼせ」という要求に応じると同時に、当初はその姿を前にするだけで震えあがっていた信長に対して、堂々とものをいうほどの成長を見せた。
冒頭の言葉を告げる際、信長の差し出した刀を握りしめ、その手から血を流しながら真っすぐ目を見つめる姿には、元康の覚悟と成長がにじんでいた。