「戦国時代を舞台にした“運命の物語”を大画面で堪能してほしい」『レジェンド&バタフライ』大友啓史監督【インタビュー】

2023年1月28日 / 12:00

-“新しい時代劇”ということについて、どう考えていますか。

 新しい時代劇の定義を問われ、即答するのは難しいですね。一言だけ言えるのは、様式を守るということのみに意識を向けると、大事なことを見失ってしまう可能性があるということです。そればかりに気を取られると、時代劇と呼ばれるジャンルがどんどん狭くなってしまう気がします。京都撮影所で作られた過去の作品を、今回クランクイン前にずいぶんたくさん見たのですが、それらの中には、今見ても斬新な面白い表現や発明がたくさんあります。当時の方々が、必死で様式や前例と戦って生まれたものが、そこにはたくさん息づいている。時には制約を守りながら、時には確信犯的に破りながら、自分たちがやりたいことをしっかりやる。軽やかに過去を乗り越えていく、そういう意識が必要であるように思いますね。

 また、これからの映画やドラマは、時代劇に限らず、LEDスタジオで、バーチャル・イン・システムのカメラを使って、グリーンバックを背景にして効率よく撮っていくという、バーチャルな作りに大勢が向かうと思います。そうすれば、どこかに大人数でロケに行って撮影をする必要もないし、天気に左右されたりもしませんからね。でも、今回の僕らのアプローチは、それとは全く逆です。信長という400年前の人物を、令和の時代に生きる僕らがちゃんと捉えるためには、あの時代から存在する建築物や場所の力を借りなければなりません。私たちと過去の先人たちとの間にある溝の橋渡しをしてくれるのは、あの時代から残っている物であるという発想です。歴史を感じる場所にみんなで足を運んで、役者やスタッフが、その時代の空気を感じながら撮影をする。今回は、そうしたオーソドックスな作り方をしました。そういう作り方が、まだ有効だということを確認してみたかったというのもあります。それは、ある意味信仰に近いのかもしれませんが…。

-最後に、映画の見どころと、観客に向けて一言お願いします。

 まずは、信長と濃姫を全身全霊で演じる、木村さんと綾瀬さんによる丁々発止のパフォーマンスが見どころですね。また、今の時代とは全く価値観の違う戦国絵巻を、映画館の大画面で臨場感たっぷりに見ていただくということを意識して作りました。僕がいい映画を見て思うのは、「眼福=目の幸せを満たしてくれる」ということです。役者の芝居、それを彩る美術、国宝級の場所でのロケーションやゴージャスな衣装、それらを余すことなく捉えるカメラワーク、自分を取り囲むように感じられるダイナミックな音響や音などなど。コロナ禍での緊急事態宣言で、前作の「るろうに剣心最終章」が大都市で上映できないという環境に追い込まれた悔しさもあって、今回は、よりそうしたことにこだわって作っています。まるで戦国時代に自分が迷い込んだように、信長と濃姫の体験を大画面で追体験できるような臨場感が、時間を忘れて夢中になっていただけるように精魂込めて作ったつもりです。ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

 

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

山里亮太「長年の“したたかさ”が生きました(笑)」 三宅健太「山里さんには悔しさすら覚えます(笑)」STUDIO4℃の最新アニメ『ChaO』に声の出演【インタビュー】

映画2025年8月15日

-ネプトゥーヌス国王役の三宅さんはいかがでしょうか。人魚という設定の上に、娘と接するときと、それ以外では雰囲気がだいぶ違いますが。 三宅 ネプトゥーヌス国王は、「屈強で、威厳があり、でも娘に甘い」。最初にその3つのファクターを大事に、と伺い … 続きを読む

ウィリアム・ユーバンク監督「基本的には娯楽作品として楽しかったり、スリリングだったり、怖かったりというところを目指しました」『ランド・オブ・バッド』【インタビュー】

映画2025年8月14日

-リアム・ヘムズワースとラッセル・クロウを演出してみていかがでした。  2人とも自分が演じるキャラクターを見いだすための努力を惜しまず、そのキャラクターの中にある真実や誠実さを見つけてくれます。さらにそのキャラクターにエンタメ性や楽しさも持 … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(1)“たまたま”が導いた講談の道

舞台・ミュージカル2025年8月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼みなさん、こんにちは  日本の伝 … 続きを読む

原嘉孝×いとうあさこ、timelesz加入後初の舞台主演に「timeleszを背負っています」 舞台「ドラマプランニング」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年8月11日

-本作はドラマ制作の現場が舞台の物語で、いとうさんはドラマ主演俳優の癖のあるマネジャー役です。 いとう 役者さんのマネジャーさんについて正直知らないこともありますが、ある意味役者をよく見せたい、役者の魅力を伝えたいという芯は想像できます。た … 続きを読む

【映画コラム】新旧のSFアクション映画の魅力が詰まった『ジュラシック・ワールド/復活の大地』

映画2025年8月10日

 また、ジョン・ウィリアムズ作曲のオリジナルテーマ曲の流用は、先に公開された『スーパーマン』同様絶大な効果があり、恐怖とユーモアの同居は、スピルバーグが得意とする演出法だ。  また、「以前から、フィルムで撮影し、自然な映画的な質感を表現した … 続きを読む

Willfriends

page top