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三浦 (本作で藤ヶ谷が演じた)菅原という役は本当に難しい役だと思います。クズで駄目な男ですが、どこか愛らしさがあるという絶妙なさじ加減が必要ですが、それを藤ヶ谷くんはうまく体現してくれていました。それに、役者としても素直な人なので、うそがつけない。それは素晴らしい魅力だと思いますが、それ故に、テイクを繰り返すと、新鮮な気持ちが落ちてきて調節が大変だったのかなと思います。それから、今回は、舞台のときの裕一を取り戻すまでに“助走”があったように感じました。最初は、「裕一ってこんな感じだったのかな」と探っているところがあったように思いますが、どこかでスイッチが入った。舞台のときに、僕のイメージする菅原をかなり細かく伝えていたので、(今回の撮影では)藤ヶ谷くんがものにした菅原にさらに肉付けされたものが見えてきたように思います。藤ヶ谷くんの本質的なものもこぼれ落ちていたので、この藤ヶ谷くんを撮っていれば映画として成立するなと確信しながら撮影していました。
藤ヶ谷 そのお言葉を頂けて、すごくうれしいです。舞台をやっていなかったら、どうなっていたか分からない撮影でしたから(笑)。舞台から共演しているあっちゃん(前田敦子)もアッキー(中尾明慶)もいたからチームが出来上がっている安心感がありましたし、“地獄の現場”もみんなで頑張れたんだと思います(笑)。
三浦 あのシーンも大変でした。
藤ヶ谷 リハーサルも入れると、100回弱ぐらいやったんじゃないかな。三浦さんから「日本語にない表情をしてほしい」と言われたんですよ。「日本語にないってどういうことだろう」とかなり悩みました(笑)。人通りも多かったので、「あっ、藤ヶ谷くんだ!」「キスマイだ!」とたくさんの人だかりができたのですが、延々と撮影しているので、興奮していた野次馬の人たちが「そろそろ帰ろっか」って(笑)。最後には誰もいなくなったんです。僕も一緒に帰りたかった(笑)。
三浦 ロケ地を探していたときに、かなり迷ったんです。コロナ禍での撮影だったので、それまでは華やかな街だったのに、電気が消えていたりして…。テクニカル的な面でも大変なことが多かったので、腹をくくるまではかなり悩みました。ただ、菅原の行く道としては、あの場所が合っていると思ったんです。映画館へと続く“ゴジラロード”と呼ばれるあの道は、わい雑なものと文化的な映画館が混在している面白い場所です。菅原は、そこからどこに向かうのか。映画館に行くのかもしれないし、いかがわしいお店に行くのかもしれない(笑)。いろいろな意味に取れるので、彼の終わり方としてはここを終着点にするのがいいのかなと思ったんです。真っすぐに続いている道なので、彼の行く末を案じているようなイメージもあって。大変ではありましたが、良かったと思っています。
三浦 それほど意味はないんですよ。似たような駄目な男が登場するので、 “菅原裕一”に統一したら面白いかなと思ってやっているというだけなんです(笑)。自分の中ではあまり考えずに、最初から「主役・菅原」と書いているので、習慣になっているようなところがあるのかもしれません。最近は、「何代目菅原」と呼ばれていて、藤ヶ谷くんは、多分、20代目ぐらいかな(笑)。それも面白いかなと思っています。
(取材・文・写真/嶋田真己)
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